Online塾DOORS③<2022.5~>

  Onlineシニア塾は開設2周年を迎えた2022年5月から名をOnline塾DOORS(略称OnDOORS)と改め、シニアの枠を取っ払い、さらに広範囲の塾に脱皮することになりました。塾の精神、これまでの授業など、ほとんど従来通りで、その趣旨は別稿のOnline塾DOORSへの招待、<ネットのオアシスを求めて>をご覧ください。「国境を越え、世代を超えて」がキャッチフレーズです。より多くの皆さんの参加を希望しています。
 なお従来の履歴はOnlineシニア塾①<2020.5~2021.4>、および②<2021.5~2022.4>でご覧いただけます。

 講義はしばらく
講座<若者に学ぶグローバル人生>
講座<気になることを聞く>
講座<とっておきの話>
講座<アジアのIT企業パイオニアたちに聞く>
講座<よりよいIT社会をめざして>
講座<超高齢社会を生きる>
 の6講座で行う予定です。

講座<よりよいIT社会をめざして>

第50回(2022.11.15)
 唐澤豊さん 【Web3.0、AI、ブロックチェーン、DAO、ディープフェイク‣‣‣、急展開するデジタル技術の夢の向こうにメタバースがある】

 メタバース講義2回目は、それを実現させるためのさまざまな技術についての説明だった。そしてわかったのは、インターネットはさらなる新次元を迎えている(サイバー空間は三次元化し、しかも分散型ネットワークに変わる)という事実だった。メタバースが近い将来に実現するかどうかはともかく、そこに投入される技術の革新性は、いま世界を支配しているGAFA (Google、Amazon、Facebook、Apple。Microsoftを加えてGAFAMとも呼ぶ)の時代を終わらせる可能性も秘めているようである。
 メタバースという言葉自体、2021年にフェイスブックのマーク・ザッカ―バーグが社名を「メタ」と変えて、この分野に進出すると発表して以来、かなりの人の知るところとなったが、前回の講義でも明らかなように、それではメタバースは何なのか、ということになると、さまざまな見方が乱立し、VRを使ったSNSをめざしたり、仮想空間を利用して新たなビジネスを始めようとしたり、三次元CGの延長上に新たなゲームを構築しようとしたり、まさに同床異夢の状態である。唐澤さんが「現段階でメタバースはまだ存在していない」と言ったのはそういう状態を示しているようだ。
 にもかかわらずインターネットの最新技術が向かおうとしている先に「メタバース」があることはたしかであり、それが私たちの生活をも大きく変えることも間違いない。Online塾DOORSが<よりよいIT社会をめざして>という講義でメタバースを取り上げた理由である。
 メタバースを構成する技術およびその問題点として唐澤さんは「最新のネットワーク技術動向」「Web3.0」「DAO(ダオ)」「 AI」「VR(仮想現実感)」「AR(増強現実感)」「ブロックチェーンとNFT(非代替性トークン)」「立体表示装置」「最新のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)」「感覚共有」「ディープフェイク技術」「法的課題」など、きわめて広範囲にわたって丁寧に説明してくれたが、ここにその全体を紹介するのは無理なのでその一部を簡単に列記しておく。

ウエブ3.0】2000年代初頭までのインターネット黎明期のウエブ構造がWeb1.0である。HTMLで書いた静的な情報の一覧が主で、常時インターネット接続はまだ。端末はパソコンが主流だった。2000年代から現在までがWeb2.0である。通信回線速度と安定性が向上し、端末としてスマートフォンも登場、後に主流ともなった。SNSなどで情報交換が盛んになり、人びとの生活は便利になる反面、個人情報がGAFAなど一部の巨大テクノロジー企業に集中するようになる。2014年にイーサリアムの共同創設者であるキャビン・ウッド氏が提唱したのがWeb3.0である。GAFA支配などの問題点を解決するために開発が進められているのがブロックチェーン技術を活用した非中央集権型のウエブ構造である。仮想通貨のビットコインはこの技術を使って作られている。3.0はまだ実用化されていない。
DAO(ダオ)】新しい「分散型自立組織」、中央管理者が存在しない組織のこととで、新しいコミュニティが誕生する可能性もある。希望者はだれでもプロジェクトに参加できる点が大きな特徴で、プロジェクト内の取引はすべてブロックチェーンに記録されるために、不正行為のリスクも少ない。プロジェクトの貢献度に応じて参加者にトークンの配分がある。ビットコインもDAO化している組織の一つ。
AI】 AIに関して常に議論となってきたのは人間を超えるかということ。意識、意思を持つかということに関連しては、現代のところ文章は書けるが感動を与える小説は苦戦中というところらしい。美術では、文章とモード(〇〇ふうというタッチ)の選択で作品が創造できる「Dream」アプリがある(写真)。グーグルのプロジェクトLaMDAのプロモーションも紹介された。
ディープフェイク技術】人工知能にもとづく人物画像合成の技術のことで、有名人のポルノビデオまたはリベンジポルノの偽造のためや虚偽報道や悪意のあるでっち上げにも使われる恐れがある。指紋・虹彩・顔などによる声帯認証システムも簡単にすり抜けることができ、大きな社会問題になる可能性もある。
法的課題】法は新しい技術についていけないので、卑近な例で言えば、 AIが美空ひばりの声でいろんな歌を歌うようになった時の著作権はどうなるか、といったような様々な問題が予想される。

 ほかにもゴーグル、ホログラフィー、コンタクトレンズなど、それこそ日進月歩で小型化、高性能化しているインターフェースなども紹介された。いろんな技術が個別、あるいは相互に連携しながら発展しつつあり、それがいずれはメタバースとして収斂していくようである。いまはまだ混沌とした状態だが、それらの技術がこれからの人類に大きな影響を与えることは間違いないようだ。ゲーム大国としてデータの蓄積や技術的ノウハウのある日本が活躍する余地もありそうである。
 なお、当日はメンバーの藤岡福資郎氏らが福岡を拠点に行っているDX(デジタル・トランスフォーメーション)セミナーの受講生6人もゲストとして参加した。
 第3回は12月15日(木)、「私の考える宇宙」(仮題)として神、宗教、輪廻転生などについての唐澤さんの考え方を披露してもらったあと、ディスカッションをする予定。今年最後の授業なので、簡単な忘年会もかねて。

 いずれはメタバースへの集団移住が始まる? IT社会を生きる知恵(基本素養として)サイバーリテラシーを提唱してすでに20年以上になる。サイバーリテラシーではIT社会を現実世界とサイバー空間の相互交流する社会ととらえて、インターネット黎明期以来の両者の関係をリンクのように図示しているが、新たな図を追加すべき時が来たかもしれない。それは図のように現実世界の楕円の上にほとんど重なるようにサイバー空間がかぶさっている。このサイバー空間は三次元であり、おそらくこの空間そのものがメタバースという新しい宇宙になるだろう。現実世界の我々はメタバースに適宜アクセスしてゲームやコミュニケーションやビジネスを楽しむことができるが、ほとんどの時間をサイバー空間のみで過ごす人も出てきそうである。
 唐澤さんに聞いたビデオ動画を見ていたら、ある人が「メタバースに希望が持たれているのは『現実世界はクソだな』と思っている人が多いからだと思う。メタバースでは自分で理想の世界をつくり、理想の姿に変身し、誰とでも意見交換できる」と言っていた。メタバース的な世界が広がるにつれて、人々は新たな宇宙(『地球2.0』というタイトルの解説書もあった)に飛躍していく。これまでも書物や漫画で、アニメで、そしてゲームでそういう傾向はあったけれど、これからはより多くの人がやすやすとメタバースに集団移住していくことも起こるのではないか。このとき現実世界はどう変容するだろうか。それこそ廃墟のようになるかもしれない。現代世界の政治の混乱、若い人たちの政治への無関心とも深いところでリンクしているようにも思われる(Y)

 メタバース実用化はHMDを使う3Dゲーム市場から? 「私が考えるメタバース」第2回の「メタバースの要素技術」を終えて、参加者の皆さんからの質問は、どういう分野で使われるのか?こういう分野はどうか?といったことが多かったのですが、マルチメディア事業での業界としての失敗や、情報通信関係の起業での私の失敗から言えることは、最初に狙うべき市場は確実に需要が見込まれる市場か、大きな需要が見込まれる市場の見込み客の中で、価格が多少高くても飛びついてくれるアーリー・アダプターという人たちを狙うことかと思います。
 その意味からすると、最初は一般消費者にはちょっと高額で手が出せないと思われるHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を使う3Dゲーム市場ではないかと思います。この分野では既に2500万台以上も売れているHMDがあることは第1回でも紹介しましたし、メタもそうした製品を発表しています。
 フェイスブックがメタと改名してこれからはメタバースだと発表した当初から、色々と揶揄されていましたが、株主からは、もっと早くリターンがある他の分野に投資しろ!と総スカン状態でメタの株価は半分以下に落ちており、ザッカーバーグは窮地に陥っている感じですね。そこでメタは会議アプリのTeamsとかXBOXゲームとかを持つマイクロソフトと手を組むことにしたということですが、市場の反応は両社の期待程ではないようです。
 一方、グーグルとアップルはメタバースの分野では蚊帳の外ではないかという見方をしている情報通信業界関係者もいます。そんな中、グーグルのAIは専門家と短編小説を書くところまで来ているようですし、グーグル・アースの情報を活用すれば、世界地図を3次元CGにすることは割と簡単にできると思われます。
 アップルもHMDやARグラスといったハードウェア分野からメタバースに算入していますが、アプリやコンテンツ分野では目立った動きは余り見えていないことや、メタバースのシステム、アプリ、コンテンツを開発するにはWindows-PCを使わないとアップルのMacでは使い物にならないので、メタバース分野ではどうかな?という意見が強くなって来ている感じです。
 日本の過去の家電業界の例で言えば、ソニーが先駆けてアーリー・アダプター市場を開拓して、市場が見えて来たら、満を持してパナソニックが参入してマス・マーケットを獲得する、というパターンがありました。
 メタバース市場では、メタがソニーの感じですが、グーグルやアップルは機が熟すのを待っていて、満を持して参入するパナソニックのようになるかも知れないと私は思い始めています。まあ、ゲーム業界では、パナソニックも参入して、そそくさと撤退したのに対し、ソニーは今でも生き残っていますから、状況は逆転していますけどね。
 それくらい、新規市場開拓は難しいので、メタバース市場が情報通信業界で主流となるのかどうかは、まだ判りません。
 そんな中、日本の情報通信市場はどうかというと、まだDXに取り組む必要があるという状況ですから、可能性があるのは、かなりいい線を行っているゲーム業界と、iモードで携帯電話を情報端末へと進化させ、スマートフォン市場への露払い役を果たしたドコモがNTTグループ全社を牽引して、メタバース市場を開拓できるかどうかでしょう。
 なお、第2回の追加情報として、以下のYouTubeも参考になると思いますので、時間のある方はご覧下さい。
1.【SNSとメタバース】Zoomによる打ち合わせ革命とMetaLifeのバーチャルオフィス革命; これ は、デジタル化が進む中でのオリラジ中田の実体験とメタバースの将来について語っているので、DX推進の方々には興味深いかなと思います。
2.【西野と学ぶメタバース】エンタメの未来はどうなる?3つに分類される定義と最新知識:現在、どういう人たちが、どういう考えでメタバースに関わっているか?ということが、これを観て頂くと良く分かると思います。夫々の業界によって定義がバラバラということです。また、第2回の中でも少しコメントしましたが、これを観ると、意外と日本の企業が成功する可能性があるかな?と思います。
3.【西野と学ぶメタバース】メタバース業界に今から参入するならまずは何をすべきか?:メタバースのコンテンツやアプリを創る人はMacではなく、高性能グラフィック機能を搭載したWindowsでないといけない、というのがこの中に出て来る話ですが、私にとっても、ちょっと意外でした。音声・画像・動画系のコンテンツを制作する人はMacを使うというのが日本の常識のように思っていましたから、Macファンにはちょっとショックでしょうね。(K)

講座<超高齢社会を生きる>

第49回(2022.10.30)
 難波美慧(張慧)さん 【中国の高齢対策の鍵はデジタル技術の活用と社区という住民組織の活躍です】

 中国西部の青海省で高校時代まで過ごし、大学は北京第二外国語大学で日本語を専攻。その後来日し桜美林大学大学院で老年学(ジェオントロジー)を学んだ。修士論文は「中国都市部高齢者における社会奉仕活動の規程要因」。日本企業で働きながら日本人と結婚し子どもが2人、滞日すでに18年である。
 日本は平成の30年間(1989~2019)で、中国の7~8倍もあったGDPが3分の1に減るという国力低下、経済衰退を経験、一方で中国は大躍進を遂げた。両国の浮沈を肌身で感じながら日本社会を観察してきたわけである。青海省や学生時代の思い出もさることながら、大学院で学んだ老年学を振り返りながらの日本と中国の違い、そこでの高齢者の暮らしぶりなどの話はたいへん興味深かった。
 当日は「アジアの新しい風」のみなさんや同じ桜美林大学で老年学を学んだ介護の専門家も参加、楽しい2時間となった。

 中国の高齢化対策で興味深かったのはスマートホンを中心とするIT技術の活用と末端住民組織の「社区」制度である。
 中国ではデジタル化が進み、宅配や家事代行サービスなどを手軽に利用できる環境が整っているという。生鮮食品や日用品も短期間で宅配されるし、配車サービスでタクシーも簡単に呼べる。家政婦や家の中のさまざまな物品の修理や自分の代わりに行列に並んでもらうような「便利屋」的なサービスも数多く提供されており、高齢者はごく普通にそういう生活を楽しんでいるらしい。
 そればかりか、体温、脈拍などの健康データもネットワークを使って医療機関と共有することも行われている。難波さんは「日本に比べてプライバシーに関するリテラシーが遅れているけれど、それがいい要因にもなっている」と笑いながらコメントしていた。
 もう一つは「社区」と呼ばれる住民組織の役割である。官僚機構の末端で、日本の町内会のような行政末端機構ではあるけれど、もっと公的な要素が強く、決定にはある程度の強制力を伴うらしい。この組織が地域社会をまとめており、難波さんの知り合いの若い女性もそこで働いているとか。社区は建物の構造としても一定のまとまりをもっており、コロナ禍で中国が行った地域のロックダウンはこの社区があればこそ、むしろコロナ禍でその力が立証されたとも言えるようだ。
 日本のような年金制度や老人医療組織はまだ完備していないようだが、安いコストでいかに有効な高齢化対策を進めるかに知恵を絞っている。中国政府の高齢化政策は「9073」と呼ばれ、90%は自宅で過ごす、7%は地域コミュニティ、3%は施設で過ごのを当面の目安にしているという。親や祖父母の面倒を子どもや孫が見るという伝統的な家族観とともに、この社区が地域の高齢者ケアに大きな役割を果たしている。

 日本では中国というと、とかく習近平体制の独裁強化、威圧的外交といった面が強調されがちだけれど、内政的にはけっこう安定した政治が行われているようで、参加者からは「中国の官僚制は何もしない日本のそれにくらべるとずいぶん立派ではないか」、「中国が豊かな国になってくれることが世界平和にとってもいいことだと思う」などの意見が表明された。難波さんのはつらつとした態度には、発展しつつある中国の「輝き」が反映しているようだった。

 ジェロントロジーは「高齢化社会工学」 中国の65歳以上の高齢者率は2021年で14.2%らしいが、日本の場合、2022年で30%に近い。世界の最先端を走る「超高齢社会」である。桜美林大学は早くから「老年学」の講座を用意しており、難波さんはそこで学んだわけである。
 日本総合研究所の寺島実郎は『ジェロントロジー宣言 「知の再武装」で100歳人生を生き抜く』(NHK出版新書、2018)で、ジェロントロジー(Gerontology)を「老年学」ではなく、「高齢化社会工学」と訳すべきだと言っている。日本社会を今後どうするのか、そこでどう生きていくのか、その想像力、社会の構想力がいま必要なのだとして、「人間社会総体に及ぶ全体知としてのジェロントロジーの議論をすべきである」と述べている。もっともな意見だと思う。
 2022年の調査では、総人口は1億2,322万3,561人で、13年連続で減少。年齢階級別に年少人口(0~14歳)、生産年齢人口(15~64歳)、老年人口(65歳以上)の3区分でみると、年少人口と生産年齢人口はほぼ毎年減少、老年人口だけが毎年増加し、2015年から年少人口の2倍以上となった。
 今の日本では「企業に就職した新卒者のうち3割が3年で転職」し、「公的年金に企業年金を組み合わせて人生を設計してみても、経済的に安定した状態で退職後の第二の人生を送ることは到底、期待できない」。高齢者にとっても、働き盛りの中高年にとっても、100歳までの長い人生が待っている若者にとっても、超高齢社会は真剣に考えるべき大問題である。寺島氏は「異次元の高齢化」に対応するためには改めての「知の再武装」が必要だと力説している。
 というわけで、我がOnline塾DOORSでも、難波さんの話をきっかけに<超高齢社会を生きる>シリーズを始めることにした。みなさんの積極的な参加を期待したい(Y)

講座<よりよいIT社会をめざして>

第48回(2022.10.12)
 唐澤豊さん 【メタバースとは複数のワールドが複雑に絡み合った三次元空間で、現段階ではまだ実現していない】

 写真は渋谷の繁華街を再現したメタバース(コンピュータ上の三次元仮想空間)の1つのモデルである。109ビルの1区画を3000万円ぐらいで買い取り、ここで衣料品の商売をする。世界中から1日に何億人ものユーザーがアクセスし、そこで3次元で展示された商品を見たり、試着したりして買ってくれれば、現実の109ビル内のショップより儲かるだろうから、店舗費用に数億円もかかる現実のショップ経営よりも安上がりである。
 これが近ごろはやりのメタバース(Metaverse= Meta Universe)のわかりやすい姿である。参加者は当面、コンピュータアプリを使って自分の分身を作って参加する。フェイスブックのCEO、マーク・ザッカ―バーグが昨年、社名をメタと変えて、メタバース事業に全面参加すると宣言し、そのプロモーションビデオも公開したことで、多くの人の関心を集めた。
 今はまだゲームやビジネス用途中心にいろんな計画が打ち出されている段階だが、潜在的な可能性はたいへん大きい。グーグル・アースやポケモンGOなどもメタバースの原初形態、あるいはその事前段階と言えるようである。
 このメタバースについてメンバーの唐澤豊さんに聞いた。
 唐澤さんは大学で半導体工学を学び、東京エレクトロンからインテルを経て数社の外資系ICTベンチャー企業の子会社立ち上げにも携わってきた情報通信分野の専門家である。授業では、唐澤さん自身がインテル時代に試みた先駆的プロジェクトやフェイスブックのメタバースプロモーションビデオ、さらにはメタバースに関する専門家の見方などを、YouTubeの録画番組などをふんだんに使いながら話していただいたから、メタ―バースの全容を理解するにはたいへん面白く、しかも相当に濃い内容になった。
 第1回は情報通信の歴史から始まり、メタバースの定義など総論的な話を聞いたが、次回以降はメタバースを成り立たせているAIやブロックチェーン、ウェブ3.0などの技術の説明やメタ―バースがめざしている社会について聞いたり、メンバー同士で話し合ったりする予定である。

 唐澤さんによれば、メタバースは「現実世界または架空の環境を電子的に三次元表現したもので、実在の人物やプログラム(ボットまたはデーモン)が配置された」構造になっているものを言い、その専門的な定義としては「私たちの夢と希望によって実現される心の構造であり、協創幻覚(コラボレイティブ・イリュージョンである」(ウイリアム・バーンズ)ということになるらしい。いろんな三次元空間が複雑に組み合わさったもので、単一の巨大な仮想空間ではなく、中央にゲートウェイ・サーバーを備え、広範囲に分散されたシステム、つまりは「複数のワールド」へのアプローチが必要だという。
 これだと、2003年ぐらいに評判になったセカンドライフはまだ単一の世界に過ぎず、厳密にはメタバースとは言えないということだった。
 難しい話を懇切丁寧に説明してくれた話はたいへん有意義だった。メンバーの理解はなお不十分な段階だとは言え、「医療や福祉分野では利用価値があるのではないか」、「変身こそ人間の本来的な欲望であり、メタバースの試みはたいへんおもしろいと思う」、「メタバースの作られ方によっては、新たな混乱が生じるのではないか」など即物的な反応が多かった。これからみんなで勉強していきたい。
 メタバースが現実のものになるためには、AI、感覚共有、ブロックチェーンといった技術上の問題や、課金方法、著作権、肖像権、アバターのなりすまし防止など解決すべき課題も多岐にわたる。唐澤さんは「各種技術が解決され、分散型自立組織と既存組織の間で仕様や課金・利用規約等のコンセンサスが成立しないと、3Dゴーグルを使った一部マニア向けのゲーム・チャット・エンターテインメントのサービスで終わり、ビジネスと日常生活で万人が使うサービスとはならないのではないか」との予測を述べた。また現在のハードウェアとソフトウエアの多くは完全なメタバースシステムの創作が可能な段階にあるが、関連する大多数の企業はプログラムを他社に拡張できないようにしているといった現実的な壁もあるようだ。

 現実空間とサイバー空間の間を交流する技術 インターネット上に成立したデジタルな「サイバー空間」と、私たちが住む「現実世界」が相互交流するのがデジタル情報社会であり、だからこそサイバー空間と現実世界のほどよい共存をはかる必要がある。サイバー空間との交流はインタラクティブなことが特徴で、私たちは、一方ではサイバー空間そのものと、他方ではサイバー空間を通じて結ばれた人間同士で、多様な交流を続けていく。
 サイバー空間と現実空間の接点をどのように見つけるかは、これからの研究やビジネスの大きな関心になるだろう。ゲームはその最たるものだが、それ以外に、両者を結ぼうというさまざまな試みがある。
 バーチャル・リアリティ(人工現実感、VR=Virtual Reality)というのは、コンピュータの中に現実そっくりの仮想世界をつくり、頭にかぶるメガネ(HMD=Head Mounted Display)や電極を埋め込んだ手袋やスーツなど、いろんな道具を身につけて、時空を越えたコンピュータ世界に「没入」する技術である。サイバー空間と現実世界に橋をかける技術は、一般にミックスト・リアリティ(MR=Mixed Reality、複合現実感)と呼ばれている。
 現実世界を電子的に補強、増強する技術をオーグメンテッド・リアリティ(増強現実あるいは拡張現実、AR=Augmented Reality)という。シースルーHMDをかけると、現実世界を見ながら、メガネ上に電子的に生成された仮想物を重ね合わすことができる。たとえば展望台でこのメガネをかけると、山や川、ビルなどの光景に重なったかたちで、それらの名前を見られるわけである。まだ空き地のままのビル建設現場に立つと、その場にまさに完成したビルがだぶって見える。
 ARの逆がオーグメンテッド・バーチャリティ(AV=Augmented Virtuality)で、人工的に作られた仮想世界に現実世界の生のデータを取り込もうとする発想だ。コンピュータ・グラフィックスで作り上げた街並みに現実のビルの写真をはめ込み、よりリアルに見せるといった工夫でもある。ARとAVの境界はあいまいで、その比率はさまざまである。AR+AV=MRである。
 建物や橋、川、道路、公園、街路樹、街灯などを、建築、土木、造園といった分野ごとに別々にデザインするのではなく、その全体を自然のなかで総合的にとらえようとする環境デザインの世界では、バーチャルな都市空間の中を自由に歩きまわりながら景観を考えてゆくリアルタイム・シミュレーション(景観シミュレーション)が実用化されている。(以上、矢野直明『情報文化論ノート』知泉書館、2010)から。    
 この記述からもう10年以上もたっているが、今回、話題にしたメタバースがこの延長上にあることは確かであり、理解の手助けのために紹介した。唐澤さんによると、現在さまざまに試行錯誤されているメタバースはまだ単一の空間にすぎず、現実世界のように重層的に入り乱れた空間を自由に行き来するには至っていない。しかしいずれはそういう世界がやってくるのではないか、というのが唐澤さんの予想だった。
 <よりよいIT社会をめざして>では、現実世界とサイバー空間がいよいよ複雑に絡むようになってくるIT社会の現実を理解するとともに、そこで豊かで快適な生活を営むために必要な課題について考えていきたいと思っている(Y)

 メタバースはこんな世界 メタバースってどんな世界なんだろう?と思われている方も多いかも知れないので、少し例を上げてみたい。
 今、日本の現実社会で、おとぎの国と言えば、ディズニーランドとユニバーサルスタジオだろうか?こどもたちにとってはサンリオピューロランドもそうかも知れない。そして来月から開園となるジブリパークもそうなると思われる。これらを1日で全部回るのは現実的にはかなり難しい。しかし、これらが相互にリンクされた本物のメタバース空間に構築されれば、1日に全部回るとか、3か所回ってから、もう一度行きたいところに入園するとかができるようになる。
 また、シッピングの好きな人は、東京だったら、新宿、渋谷、池袋、銀座などを1日で回ることは現実的ではないが、小田急、三越伊勢丹、東急、西武、高島屋、松屋などもリンクされたメタバース空間に店舗を構築すれば、ショッピングのハシゴをすることは簡単にできるようになる。
 芸術の秋だが、美術館や画廊巡りも結構時間がかかり、足も疲れる。博物館に行きたがるこどもも多いと思うが、かなり広いから歩き疲れて、1日に何か所も行けないし、興味のないところでも歩かないと、次の展示に行けない。こうした場合もリンクされたメタバース空間であれば、興味のあるところだけ見ることができるようになる。パリの中心地には多くの美術館があり、ルーブルだけでも、ゆっくり全部観るとなると数日はかかるが、メタバースの世界では好きな画家の絵だけを見て回ることができる。
 即ち、椅子に座った状態で瞬間移動(ワープ)して色々な体験ができるようになるのがメタバースの世界と言える。そうなると、歩いたり運動したりする機会が減って、健康には良くない、と言う意見も出て来るだろうが、散歩アプリと連携して1日の目標歩数を設定しておけば、移動の間は足踏みをしないと移動できないようになり、問題無いだろう。
 ゲームは既に三次元化されているものも多いので、本格的なメタバースになるのは、一番早いだろう。カラオケのメタバース化は結構大変な作業なので、最初は三次元のカラオケボックスの中に、二次元の画面があり、三次元のアバターの姿で歌う、といったことから始まるのかと思う。
 都市の再開発のプロジェクトの場合、今迄は完成後のジオラマやビデオを制作し、関係者や市民からフィードバックをもらっているが、それこそ仮想空間の話なので、誰でも完成後を想像することは難しい。しかし、三次元空間をメタバースで構築し、市民に体験して貰えば、色々な意見が出て来る可能性は高く、より良い都市計画になると思われる。
 以上、メタバースが実現された社会を想像する一助になればと思う(K)

講座<若者に学ぶグローバル人生>

第47回(2022.9.27)
ネパールのスペディ・ナビンさん。2013年にトリブワン大学経営学部を卒業、同年に日本に留学、日本語学校や福岡工業大学短期大学部ビジネス情報学科などで学び、2019年10月からアジアマーケテインググループに就職、現在は日本ITビジネスカレッジで、外国人労働者および留学生受け入れ関連業務に従事している。
 日本ITビジネスカレッジは第40回授業、<アジアのIT企業パイオニアたちに聞く>で登壇していただいた田中旬一さんが地元の瀬戸内市でローカルとグローバルの接点として立ち上げたベンチャー企業で、いま中国、ベトナム、フィリピン、ネパールなどから50人近い留学生が国際ビジネス学科(IT、外国語)、介護福祉学科などで学んでおり、来春には日本語学科新設も予定している。ナビンさんはそこで働いているわけである。一時は150人もいた留学生がコロナ禍で減っているが、2年後にはまた150人規模に復活したいと言う。
 ネパールは世界最高峰のエベレストを擁する中国とインドに挟まれた山国で、面積は北海道の2倍弱、人口3000万人。産業はほとんどが農業で、435万人が海外に出ており、日本在住者が9万人いるという。ネパールの月収は平均2万円、日本で学ぶためにはざっと140万円を準備する必要があるとかで、ナビンさんは親戚や銀行などから金を駆り集めて日本にやってきた。新聞配達などのアルバイトをしながら苦学してきたらしいが、常に笑顔を絶やさず、前を向いて頑張っている姿はたいへんさわやかで、国自体の若さを感じさせられた。いずれはネパールと日本の架け橋として、故郷で起業することをめざしている。

アジアの若者たちの期待に応えられているか ナビンさんはなぜ日本に惹かれたか、それは①トヨタ、パナソニック、ソニー、ホンダ、ヤマハなどのブランド、② 平和な国、③給与が高い、④ 技術が最高レベル、といったイメージが日本にあったからだという。
 これを聞いて私は、それらのイメージがすでに残像になりつつあることを面はゆく思った。よく言われることだが、日本が平成を迎えた1989年のころ、日本のGDPは世界の16%を占めていたが、平成が終わる2019年には6%に落ちている。日本経済が低迷する中で中国、ベトナムを始めとするアジアの国々の躍進はすばらしかった。
 たまたま27日は安倍元首相の国葬の日だったが、安倍政権の8年余において日本の国力は著しく低下し、アベノミクスにより経済力はもとより、働く人々のモラルの点でも、復活の兆しも見えないほど破壊されつくした。しかもアジアと共存するという視点はほとんどなく、アメリカ追随一辺倒に走り、武器を大量に買い付け、「平和な国」のイメージも大きく損なわれている。
 講座<若者に学ぶグローバル人生>では、もっぱらアジアの留学生や元留学生から話を聞いているが、そのたびにスピーカーたちの明るく前向きな姿勢や故国や世界のために尽くしたいという熱気に感心させられる。日本はこういうアジアの若者たちに報いることができているのかと考えると、大いに忸怩たる思いもする。本講座が日本を再生させることを考えるきっかけぐらいになってほしいと願っている(Y)。

講座<気になることを聞く>

第46回(2022.9.10)
 笹原宏之さん デジタル時代の漢字について考える日々 
 1965年東京都生まれ。早稲田大学文学部・同大学院で中国文学・漢字学を研究。国立国語研究所研究官などを経て、2007年から早稲田大学社会科学学術院教授。漢字の字体問題、日本で生まれた国字研究、漢字と社会の関係など、漢字を広い視野から深く研究、その著作 や発言は文部科学省やJISの漢字規範の制定にも大きな影響を与えている。『日本の漢字』(岩波新書、2006)、『謎の漢字』(中公新書、2017)などの著書がある。この講義は『探見』の会との共催で行われた。
 パソコンやスマートフォンの変換機能のせいで、漢字は読めるし、変換で打ち出すこともできるが、自分では書けない人も増えてきた。すっかりワープロ辞書に頼りっぱなしの現状だが、「ダサ」、「エグ」などの短絡表記、さらには絵文字で会話する若者たちは、明らかに手書きで漢字を習ってきた世代とは違う感性を育んでいる。そういう状況下で漢字の専門家たちは現在の漢字をどう扱い、それをどう後世に残すか、日々格闘しているようだ。
 授業では、ときどき漢字を実際に書いてみる試験が課せられ、改めて漢字離れの現状を痛感した人も多かったと思うが、憂鬱の「鬱」は、読めれば書けなくてもいい、とされているようだ。当用漢字、常用漢字、改定常用漢字、表外漢字と基準も時とともに変遷しており、その言葉をどう書くのか、あるいはどの漢字をワープロで打ち出すか、デジタル時代の漢字研究もなかなかに大変なようだった。
 話の中では、「漢字は書けないと文章の理解力が低下する」、「打ち言葉は、読み手への配慮が弱まる」、「思考に労力のかかる論理性よりも直感が優先される」といった傾向にも言及があった。もっとも、作家の梶井基次郎は「檸檬」という字をきちんと書けなかったらしいが‣‣‣。

新講座<よりよいIT社会をめざして>

第45回(2022.9.5)
 土屋大洋さん 【サイバー戦争のターゲットは、データセンターと私たちの頭の中である】 
 国際政治学者で慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授。同大総合政策学部学部長を経て2021年8月から慶應義塾常任理事(副学長)。インターネット上のサイバー空間が国際安全保障環境に対して及ぼす影響などの研究で知られる。『サイバー・テロ 日米vs.中国』(文藝春秋、2012)、『暴露の世紀――国家を揺るがすサイバーテロリズム』(KADOKAWA、2016)、『サイバーグレートゲーム――政治・経済・技術とデータをめぐる地政学』(千倉書房、2020)などの著書がある。
 私たちはインターネット元年の1995年からでもすでに30年近く、サイバースペース(サイバー空間)とともに生きている。インターネットは社会そのものをドラスティックに変えたが、国防の点でもサイバー空間は宇宙に次ぐ第5の領域となり、米ロ中の大国ばかりでなく、群小国、テロリスト、ハッカーまで参戦する最先端戦場になった。本Online塾DOORSでも、IT社会の最先端事情を学ぶために新たな講座として「よりよきIT社会を生きるために」を始め、その第1回に専門の研究ばかりでなく大学の常務理事としても超多忙な土屋先生にあえてお願いして、話を聞いた(担当/城所岩生)。
 テーマは「サイバースペースで繰り広げられる大国間のグレートゲーム」、120年前、帝政ロシアと大英帝国の間で「グレートゲーム」と呼ばれる諜報戦が繰り広げられたが、今、そのゲームは、現実世界だけでなく、サイバースペースでも展開されており、サイバーセキュリティが各国の安全保障政策で重要性を増している。ホットな話題を私たちの身近な事象と関連させながらやさしく解説していただいた。
 左図は世界を取り巻く陸上、海底の通信ケーブル図である。米軍は陸・海・空・宇宙に続いてサイバー軍を重要な統合軍に編成している。サイバースペースはどこにあるのだろうか。サイバー戦争の戦場は前4者とは性格が違い、世界中に広がっているとも言えるが、土屋さんによれば、それは「通信機器+通信チャンネル+記憶装置」である。たしかに。
 記憶装置というのは、各地に分散されているデータセンターである。ウクライナに侵攻したロシアはまっさきにウクライナのデータセンターを叩いたが、ウクライナはそれ以前に国外にデータを退避していた。
 サイバー戦争のグレートゲームはどこで戦われるか。データセンターへの攻撃、通信回線の破壊は引き続き大きな目標になるだろうが、今後大きな比重を占めるのが、個人の頭の中(「認知スペース」)だという。最先端技術が個人の頭の中をかき回し、その変容を迫るわけである。フェイクニュースはその一例でしかない。イスラエルの歴史家、ユヴァル・ノア・ハラリが『ホモ・デウス』で提起した問題が私たちのすぐ近くまで迫っているということらしい。詳しいことは先生の著書をご覧ください(^o^)。

 個人もセキュリティへの関心を高めることが大事 卑近な例で言えば、私たちはグーグルのGmailを使い、フェイスブックやユーチューブ、あるいは各種のゲームなどに興じているが、そのデータはほとんど米IT企業のサーバーに蓄積されている。これについて土屋さんは「アメリカ企業のデータはアメリカ政府がいつでも見られるように法制度上認められている。日本政府が見せてくれと言えば見せてくれるだろうが、アメリカ政府のようにはいかないでしょうね」、「Gmailを使うこと自体、いつでも見られるというリスクがあると覚悟している必要があります。通信相手のことも含めて」と言っていた。いつも感じることだが、セキュリティ専門家たちは通信機器の利用や自分のデータ管理にきわめて慎重だが、一般の私たちはただ便利だからというので、グーグルなり、フェイスブックなり、アメリカIT企業の軍門に平気で、あるいはやむを得ず下ってしまっている。日本政府も怪しい。こんなことではまずいのではないかと、新講座開設の冒頭で大いに考えさせられた(Y)

講座<アジアのIT企業パイオニアたちに聞く>

第44回(2022.7.29)
 ファンヴァントゥアンさん 日本とベトナムのエンジニアリングの架け橋をめざす

 2005年ホーチミン工科大学電気電子学部を卒業し3年間アメリカに滞在した後、2008年に来日、8年間日立グループ会社にエンジニアとして勤務した。その後帰国し、2015年にハノイ市でITソリューション企業、VHECを創立しCEOに。3人でスタートした会社も現在はVHECだけで118名、グループや協力パートナーを含めると300名を擁する企業に成長した(担当/藤岡)。
 幹部のベトナム人はハノイ工科大学、ダナン工科大学、茨城大学、名古屋工科大学などを卒業し、いずれも4年から9年、日本で実際に働いた経験のある技術者ばかりである。ヴァンさん自体、日本でいろんなことを学んだ経験のもとに、これからはベトナムの発展に貢献するとともに、日本とベトナムのエンジニアリングの架け橋となることをめざしている。


 VHECのほかにも、20年にニャチャン市に人工知能(ADAI)研究所やDX支援会社を創立するなど、いくつものベンチャー企業を立ち上げ、地方創生とグローバル人材開発などの事業にも乗り出している。得意分野の制御システム開発やAIを使ったユニークな研究(下写真はコロナ禍でのマスク着用の有無を検出する実験プログラム)の実情も話してくれた。
 彼によれば、ベトナムのIT企業は国の支援もあって伸び盛りで、毎年大学から5万人の人材が供給される。現人員の90%強が20代、30代の若者で、女性が4割を占める。「私が大学を出たころはまだIT企業も少なかった。日本語の先生に日本で勉強して帰国後に起業するのがいい」と勧められた。私たちの世代はベトナムIT事業の先頭を走っている」、「最初はオフショア(委託業務)を受注する企業が多かったが、自前の開発をするところも増えてきた。今のベトナムは50年ほど前の日本の状態。ここで発展させなければ、いずれベトナムも高齢化の波にのまれてしまう」。ベトナムは若い国であり、ヴァンさんの未来も明るく輝いているようである。
 日本の若者は怠ける組と頑張る組に二分されるそうである。若者はもっと外国に出るべきだというのが助言で、実際、頑張る人は海外にもよく出かけているという。日本滞在中は大企業の年配の人たちに多くを教わった経験からか、「日本とベトナムとは親和性は高い」とも話してくれた。

 高度経済成長の熱気をベトナムで見た 「君たちは日本の高度経済成長というものを知らんだろうが、ベトナムに行くとそれを体験できるよ」と、2年半前に年配の政治家から言われて、ベトナム視察旅行に行くことになり、ホーチミン市とハノイ市のIT企業を巡った。慶応義塾大学および立命館大学の学生とベトナム人留学生が4人で立ち上げたRIKKEI社は、わずか10年で従業員数1500人を擁するIT企業に成長し、オフショア開発だけでなくAIによる国会の同時字幕を付け聴覚障害者をサポートするサービスを開発していた。ベトナム語は、日本語同様に方言などがあり、簡単には音声から文字に起こすことは難しいため、AIによる判断がポイントになるということだった。彼らの自立しようとする熱気と実行力には驚かされた。自動運転ロボットのZMP社は、東京工業大学出身のドン社長が日本とベトナムの懸け橋になるという決意のもと開発に一途に取り組んでいた。
 ベトナムについては、正直に言うと、ベトナム戦争の悲惨な映像しか知らなかったのだが、行ってみて大いに驚いた。ホーチミン市には国内最高層、81階のランドマーク81(写真)を初めとして高層ビルが林立し、交通手段はバイクだが、人々の表情は活気に満ちていた。繁華街に行くと、昔ながらの市場もあり、時代が交錯し変化していく姿を体感できた。なるほどこれが「高度成長の活気なのか」と私は思った。日本でも高度成長期には給与も上がり、変化が目まぐるしく、仕事は忙しかったが活気があって楽しかった、という話をよく聞かされていた。
 実はその旅行でヴァンさんにも会ったのである。彼は颯爽としてオフィスを案内してくれた。そこで私はまた驚いた。ハノイ工科大学など日本でいえば東京大学と同じ国内トップ大学出身の技術者が熱心に開発に取り組んでいた。すでに日本の技術力を追い抜いてしまった中国や、発展目覚ましいインドとともに、ベトナムの将来は大いに期待できそうである。
 この<アジアのIT企業パイオニアたちに聞く>シリーズは、IT起業家たちを中心に躍進するアジア経済最新事情を紹介することをめざしている。まったく、日本もうかうかしてはいられません。本塾で紹介するにふさわしい方をご存じの方はinfo@cyber-literacy.comまでお知らせください。どうぞよろしく(藤岡福資郎)。

講座<気になることを聞く>

第43回(2022.7.16)
 阿部裕行さん 【地方自治体の首長でも、何をしたいのかという明確な意思、住民の命を守ろうとする決意、国と本気で戦う覚悟、そして日々勉強さえすれば、できることはいっぱいあります】

 東京都多摩市長。日本新聞協会事務局次長から、2010 年に、民主・共産・社民・生活者ネットワークの推薦で立候補し当選、次期14 年からは政党の推薦を受けずに無所属で立ち、今春4選を果たした。「健康」と「幸福」を兼ねそなえた「多摩市健幸都市宣言」、「多摩市非核平和都市宣言」、「多摩市気候非常事態宣言」など、独創的な地域づくりや平和・脱原発への取り組みで知られる。森治郎さん主催の<『探見』の会>との共催2回目です。
 どこの自治体も同じだが、コロナ禍ではずいぶん苦労したらしい。とくに多摩市には都直轄の保健所しかなく、PCR検査など患者情報が個人情報保護法のネックで市と共有できないなど、最初はいろんな制約があったが、それを粘り強い国への働きかけ(「多摩一揆」などと言われたらしい)で丁寧にほぐしつつ、都内でワクチン接種率1位という実績に結びつけた。
 「市にも国から派遣されたり、逆に国にこちらから派遣したりと、人的交流がありますが、どんな人に来ていただくかによって大きく変わります。私はその人選にも積極的にかかわり、コロナが起こる前から医師、福祉関係者、市職員がツーカーで話し合える環境を作っていました。これが大いに効果を発揮しました。市職員の採用、昇給などの人事にも必ず立ち会っています。首長は議会や国、職員にまかせておけばつとまるお飾りみたいなものだという人がいますが、それは違います。何をしたいのかという明確な意思、市民の命を守るのだという決意、国と本気に闘う覚悟があり、よく勉強して、日々の仕事をこつこつと積み重ねていけば、いろんな制約があるとはいえ、やれることはいっぱいあります。市長は365日、休むいとまはありません」。
 数々の実績を誇る阿部さんに言わせれば「為せば成る」ということらしいが、住民の立場から言うと、どういう首長を選ぶかという心がけが大いに重要だということでもあるらしい。

第42 回(2022.7.13)
 西尾浩美さん 【軍事クーデターから1年半、ミャンマーの人たちは弾圧にめげず「いずれ私たちは勝つ」と強い決意を固めています】

熊本生まれ、横浜育ち。母親の影響で早くからボランティア活動に親しむ。教師になろうと入学した大学の文学部史学科時代、夏休みを利用して東南アジアをバックパーカーとして旅行したこともあって、途上国での医療活動に従事しようと翻心、看護学科に学士入学して看護師となった。NGO職員としてミャンマーに出かけて、2021年2月1日の軍事クーデターに遭遇した。
 本塾ではクーデター直後の2月10日と5月8日に「ミャンマーの軍事クーデターで苦悩する日本在住の若者たち」の話を聞いたことがあり、今回はミャンマー問題としては3度目の授業となる。西尾さんは自分の直接見聞したクーデターの様子やそれに抵抗する人びとの動きを生々しく報告してくれた。
 昨日(2022.7.12)までの犠牲者は2077人、逮捕者は1万4549人、いまだにスーチーさんをはじめ1万1483人が拘束されている。軍政下の圧政は苛烈と言っていいようだが、その中で市民的不服従運動(CDM)、亡命政府(NUG)などを中心に抵抗も続いている。国境周辺の少数民族の武装勢力と組んで若者たちが武装して戦っているのは報道されている通りである。
 彼らの抵抗が報われる日はいつになるのか。西尾さんは「軍政が定着するのか、市民が民主主義を取り戻すのか、しばらくは対立状態が続くと思うが、人びとは『闘うしかない』という強い意志を固めている。それは悲壮な思いというよりも、『絶対に勝つ』というとても前向きなものです」と話していた。知人たちは彼女に「僕たちはクーデターで一度死にました。だから死ぬのはもう怖くない」、「死ぬのは怖い。でも希望のない未来を生きるのは、もっと怖い」と決意を語ったという。彼女は半年ほど前に日本に戻り、いまは医療支援のためのカンパ活動をしている。
 日本は国会でも軍事クーデターを非難する決議をしているが、ミャンマー支援の実情はきわめておそまつな実情らしい。クーデター後も防衛大学は軍からの留学生を受け入れるなど、むしろ軍事政権を支援しているような傾向も見られるという。

医療支援へのご協力をお願いします「僕たちは、絶対に暴力を使わない」。ミャンマー人の友達からそんな言葉を聞いたのは、軍事クーデターの翌日でした。「もし暴力的に抵抗をすれば、軍は『国の治安を守るため』という口実で、武力で鎮圧にかかる。今まで僕らは、そうやって何度も弾圧されてきたんだ」
 2015年まで半世紀もの間、軍事政権が続いたミャンマー。人々は、ストライキや抗議デモ、不買運動など、あらゆる平和的な方法で抵抗を続けました。しかし丸腰の国民たちを、ミャンマー軍は虐殺。活動家だけでなく、医療者や子どもたちまでもが殺されました。
 市民たちは、武力での反撃に舵を切りました。今も、ふつうの大学生だった若者たちが、慣れない銃を手に、40万兵力と言われるミャンマー軍とゲリラ戦を戦っています。(2022年4月のTBS『報道特集』が、非常にリアルな状況を伝えています。ぜひご覧ください)
 私はミャンマーで保健医療の仕事をしていました。しかしクーデター後、保健医療システムは崩壊。軍による弾圧で重傷を負っても、新型コロナが重症化しても、医療を受けられない人が続出しました。また現在はゲリラ戦で傷ついた若者や、村を焼かれジャングルなどで暮らす国内避難民たちが、緊急医療を必要としています。
 そうした人々の命をひとつでも多く救うため、以下のサイトで寄付を募っています。クーデター後1年半が過ぎて人々の関心も薄れ、支援も先細りになっています。しかしミャンマーでは今も緊急事態が続いています。ぜひリンク先の内容を読んでいただき、ご支援いただければ大変ありがたいです。よろしくお願いいたします。【がんばれミャンマー!医療支援】 (西尾浩美)

新講座<アジアのIT企業パイオニアたちに聞く>

第41回(2022.6.29)
  田中旬一さん 地方創生事業をグローバルに展開、将来はリベラルアーツ大学院大学設立をめざす

 岡山県瀬戸内市出身、両親の放任教育の恩恵を存分に堪能、好きなことに全力で挑戦、16歳からはアルバイトに精出しかなりの額を稼いでいたとか。学校の成績はほぼ最下位だったが、貯めた金でヨーロッパ各地を旅行、世界のおもしろさを知った。九州大学法学部にはセンター試験ではなく英語の論文試験で合格、その論文「民主主義について」では、旅で知り合ったオーストリアの政治学の教授から聞いた「西洋と東洋の民主主義の違い」という話を思い出しながら書いたのだという(担当/藤岡福資郎)。
 受験教育に毒された昨今の学生とはまるで違う破天荒な経歴だが、その異色ぶりそのままに卒業後は、2012年のアジアマーケティング株式会社を皮切りに、2017年には学校法人せとうちを設立、さらに日本ITビジネスカレッジ、アジア人材サービス開発会社、外国人キャリア教育研究所、日本ITシステム株式会社、株式会社BlockChainなどを次々に設立、多くの事業に乗り出している。代表取締役、理事長、CEOなど多くの肩書を持つが、まだ40代前半である。現在の事業内容は下図の通り。そのバイタリティあふれる話を聞いた参加者たちは日本にもすばらしい人材が生まれつつあることを実感、今後の活動への熱いエールも飛んだ。

 事業の基本精神は「地方創生」と「グローバル」。たとえば日本ITビジネスカレッジは、「岡山県で人材育成を通じて次世代の 100 年を創る 」をキーワードに、県内の廃校を借りて校舎とし、アジア各地からすでに130人の生徒を集めている。カリキュラムはIT、観光、介護などだが、ユニークなのが「注文式教育」という方針。「企業から求人需要をヒアリングし、求人票の内容に沿って授業カリキュラムを作成する」、「企業と提携して授業を展開し、インターンシップも実施」するなど、企業との提携を強めている。近く日本語教育部門も開設する。いまは実務教育本位だが、田中さんの構想はそれに止まらず、2030年以降は多様な価値観が求められる時代を生き抜くためのリベラルアーツ(理系、文系の垣根を超えた一般教養科目)を教える大学院大学を設立する計画だという。日本ITシステムやブロックチェーンなどIT関連会社も運営しており、これらの会社は卒業生の受け皿企業ともなりそうである。田中さんは全国各地に広がるいろんな地方創生事業とも連携を深め、地元に根ざししながら、同時にグローバルに展開するという。まさに発展途上である(右写真は瀬戸内海船上でのブロックチェーンの面接風景)。

 新講座<アジアのIT企業パイオニアたちに聞く>は、日本やアジア各国のベンチャー企業関係者を取り上げる予定です。ご期待ください。

講座<気になることを聞く>

第40 回(2022.6.12)
 升永英俊さん【日本は、国民主権国家ではない。日本は、国会議員主権国家である。現在の国会議員は国会の活動の正統性を欠く】②

 同講義2回目は前回(5.19)に引き続き、升永弁護士が取り組んできた「1人1票」運動について話を聞いた。彼が人口比例選挙の重要性に気づいたのは45年ほど前の1978年、コロンビア大学ロースクール(法科大学院)に留学したときだという。日本の衆院選では公示から投票日まで、最短で12日間しかないが、米大統領選の選挙運動はとてつもなく長い。そのことについて米国人の級友は「大統領選は、選挙という形式をとっているが、実は共和党支持者の国民と民主党支持者の国民の間の戦争である。南北戦争では国民が南と北に分かれて戦い50万人を超す死者が出た。これに懲りて米国民は、政治の意見の争いは、選挙で解決することにした。大統領選で過半数の得票を得たグループが大統領を選び、向う4年間、行政権を独占する。だから、予備選を含めると2年半超もの長期間、国民は次の大統領選で過半数を得票すべく草の根で議論をし、選挙運動をやっている」と語った。升永さんはこの時初めて「選挙が民主主義国家の心臓だ」と知り、そして感動した。
 その経験のもとに、彼は1人1票選挙の実現に取り組んできた。その経緯は、前回報告に寄稿していただいた通りである。何度かの最高裁判決を受けて1票の格差は徐々に縮まりつつあるが、与党たる自民党は憲法改正草案において、その差をかえって広げることをねらっている。「これを許したら1人1票制度は、とくに参議院において絶望的になるだろう」と彼は話した。それを防ぐためにはどうすればいいのか。その思いはメンバーに事前に配布された文書の最後のくだりに込められている。

人口比例選挙を支持される方は、今回の参院選だけは、憲法改正が絡む特別な選挙と考えて、自民党に対する1回限りの批判票として、立憲民主党、共産党、社民党、れいわ(但し、人口比例選挙を支持している。)のいずれかに、投票して頂きたいと私は願っています。私は、相対的に当選者数が多いと見込まれる立憲民主党又は野党統一候補に投票します。

 7月参院選を前にした時期でもあり、升永さんの熱弁に呼応するかのようにいろんな意見表明や質疑が繰り広げられ、講義はいつもの時間を大幅にオーバー、10時半過ぎまで続いた。今回の参院選の重要さに鑑み、もっと議論する場を持ちたいとの意見も出た。

民主主義的選挙のリテラシー 「選挙は国会の多数を獲得するための国民の戦争である」というのが升永さんの考えである。そのことがよくわかっているのが自民党で、多数を獲得するためにあらゆる努力をし、そして成功している。それに対して野党はどうか。国民はどうか。投票率が低いのは戦線離脱で論外としても(それは与党を有利にもしている)、選挙でどのような代表を国会に送り込むのか。そのための戦術は何なのか。まず大事なのは具体的候補者よりもその人が所属する政党であり、もっと言えば、野党候補の中でも、政党の違いを超えて、その選挙区で当選可能性の高い野党候補をこそ選ぶべきである、というのが升永さんの考えだと思われる。そもそもこれは、学校でも教えるべき民主主義的選挙に関する一つのリテラシーではないだろうか。そのためにも大事なことが、国民が選挙に平等に参加できるための前提、「国民の過半数が国会議員の過半数を選ぶ」選挙制度「人口比例選挙」の確立ということになるだろう(Y)。

講座<若者に学ぶグローバル人生>

第39回(2022.5.30)
インドネシアのサムスル・マアリフ(Sasul Maarif)さん。2013年、パジャララン大学日本語学科卒、南山大学日本語別科や大阪大学大学院文化研究科博士課程で学び、現在、パジャジャラン大学日本語学科非常勤講師。
 日本のポップカルチャーがきっかけで日本に興味を持ち、小学生では「聖闘士星矢」、「ドラゴンボール」、中学時代は「るろうに剣心」のファンだった。「日本の文化で育ったと言っても過言ではない」、さらには「日本は夢の国」だと言ってくれる、ありがたい日本ファン。現在、母校で日本語を教えている経験から、いまアジアの若者たちが日本語を学ぶ理由、日本語学科の卒業生の進路などについて話していただいた。

日本語を学ぶ人は多いが来日者は少ない その時示された日本語学習者の数でインドネシアが世界第2位 であるとのデータが興味を引いた。その一部をグラフにしたもので見ると、数の多さが際立つ。インドネシアの人口は世界第4位ではあるけれど‣‣‣。
 ところで第21回講義でも紹介した下図によると、日本滞在の外国人数は中国、韓国、ベトナム、フィリピンの順で、留学生でも中国、ベトナム、ネパール、韓国となっている。
 インドネシアで日本語を学んだ人の半数は現地の日系企業に就職しているという。なぜ日本に来ないか。その理由はイスラム教にある。インドネシアは世界最大のイスラム教国であり、人口の9割がイスラム教徒である。食べ物の制限(ハラール)もあるし、1日5回のお祈り、ラマダーンの断食など厳しい戒律があり、生活環境の違いが来日を思いとどまらせているらしい。サムスルさんは「祈りの場所を用意していただけると、インドネシアからの雇用もスムーズにいくのでは」と話していた(Y)。

Slack内に若者グローバルネットワーク開設 本塾は開設2周年を期して<Online塾DOORS(略称OnDOORS)>と改称しましたが、これを機にメンバーやスピーカーの交流用に開設しているslack内に「若者グローバルネットワーク」のチャンネルを設けました。これまで話していただいたアジア、アフリカ各地からの留学生、あるいは元留学生、さらには海外で活躍する日本人の数もすでに20人を超えています。スピーカー同士の相互交流を図るとともに、新たな仲間を求めてのチャンネル開設です。
 世話役を第33回に登場した中国出身の大森静さんにお願いしました。今後は本slackだけの加入も認め、あわせて新たなスピーカー発掘にもなれば、と思っています(参加希望者は事務局info@cyber-literacy.comまで。サムスル先生にもいろいろご協力いただけるようになりました。
大森静です。中国から日本に来て、いまは日本人と結婚、福岡市に住み、4歳の子どもがいます。九州大学研究室で働いています。よろしくお願いします。楽しい場にできるように頑張ります(^o^)。
 英語に興味がある日本の学生と日本語をより学びたい外国人のランゲージエクスチェンジの場になればいいと考えています。
 日本にいる外国人のキャリアデザイン、学習情報、食べる情報、法律の情報、言葉の情報、定住の情報、子育て支援情報、医療情報、婚活情報、資源のリサイクル情報など、いろんなことを話し合える場になればと思っています。
 異なる意見も理解してあげる、理解できないことは寛容してあげるという謙虚の気持ちで付き合いましょう。お互い尊重して気持ち良いお話をしましょう。意見の争いがあればその場で議論してその場で終わり、後に残さないようにしてください。自分が欲しくないことを人に渡さないこと。
 友だちも紹介してください。自分が好きなことを他人といっしょに喜びたい方、人のお役立ちたい方、人とwinとwinの考えをお持ちの方、人に寛容な心をお持ちの方、日本の社会にいいことを与えたい方、留学生の方にいいことを与えたい方、日本にいる外国人にいいことを与えたい方を私たちは歓迎します。

講座<気になることを聞く>

第38 回(2022.5.19)
 升永英俊さん【日本は、国民主権国家ではない。日本は、国会議員主権国家である。現在の国会議員は国会の活動の正統性を欠く】

1942年生まれ。弁護士(第一東京弁護士会)・弁理士。米国のコロンビア特別区及びニューヨーク州弁護士。TMI総合法律事務所シニアパートナー。元東京永和法律事務所代表兼東京永和特許事務所顧問。東京大学法学部卒業、後に東京大学工学部も卒業。
 升永弁護士は選挙における「1人1票」実現運動に精力的に取り組んできた。次期衆院選をめぐって「10増10減」の折衝も始まる予定だが、民主主義の基本である選挙における「1人1票」がなぜ守られていないのかを聞いた(担当/藤岡福資郎)。
 以下、骨子を当日示された図に沿って報告する。

<1>日本は国会議員主権国家であることの3つの論点

<2>国民主権国家と国会議員主権国家の違い(国民主権国家でないために、国民の少数が選んだ国会議員の多数が内閣総理大臣を選出し法を議決しているという矛盾)

<3>米国ペンシルバニア州では最大投票区と最小投票区の差は1人。2012年参院選の差は903,451人であるとの例示

 この授業は新生Online塾DOORS(略称OnDOORS)の旗揚げ講義として行われ、メンバー以外にも広く声をかけ、法律専門家の方にも何人か参加していただた。升永弁護士は長年の運動の意味とその成果について丁寧に、かつ熱っぽく語り、参加者からは「我々の根源的な問題がここにもあったか!と反省しきりで拝聴しておりました。『国会議員主権国家』は正鵠を射た表現ですね。民主主義が、何によって立つものであるのか、にダイレクトに目を向けさせてくれます」、「一票の格差についての裁判は耳にしていましたが、いままで真剣に考えたことがなく、今日は非常に勉強になりました。中国との比較で、かの国はまったく民意を問わない党幹部の選出に関して、日本は公平な選挙で代表を選ぶ民主国家であると信じて疑っていませんでしたが、今日のお話を聞いて国会議員選挙に正当性がないことに気づかされました。この年になって、お恥ずかしい限りです」という〝目から鱗〟的な感謝の言葉が寄せられた。
 新生Online塾DOORS旗揚げ講義にふさわしいばかりか、近づく参院選を前に、選挙民の自覚を促すためにも恰好の話だった。かりそめの「主権者」を〝不正〟に選んでいる、あるいは選ぶことすら放棄している憲法上の(本来の)「主権者」よ目覚めよ!
 次回は6月12日(日)午後8時からです。視聴希望者は当欄コメント欄やinfo@cyber-literacy.comまで。なおOnline塾DOORSでは新しい参加メンバーを募集しています。<Online塾DOORSへの招待>をご覧いただいた上で、希望者は上記へお申し出ください。各自を真綿のように閉じ込めている扉(DOOORS)をこじ開けて広い世界へ!

韓国の大統領選挙との違い 講義を聞いてくれた九州大学工学研究院の小林泰三先生が「『一人一票=完全人口比例』が間接民主主義を成立させる絶対条件であることは、比例を勉強する小学生でも理解できる平明な理屈です」と感想を述べてくれたのは大いに我が意を得た思いがした。
 たとえば2022年3月の韓国大統領選(1人1票選挙)と日本の1票の格差2倍の衆院選選挙の違いを考えてみよう。

 両氏の間の得票差は0.73%(=48.56%-47.83%)であった。即ち0.37%(≒0.73% × 0.5)の僅差で、尹(ユン)氏が大統領に当選し、政権交代した。投票率は、77.1%。日本の非人口比例選挙の2021年衆院選の投票率55.9%と比べて高いのは、韓国大統領選挙が人口比例選挙であることと関係していると推察される。衆院選(小選挙区)では、1票の格差は、1:2.1倍であり、全人口の47.0%が全衆議院議員465人の過半数(50.1% 233人)を選出している。
 議院内閣制であっても、人口比例選挙(=1人1票選挙)であれば、主権を有する全国民の50%超(過半数)が、国会議員を通じて行政の長(内閣総理大臣)を選出することになるので、主権を有する全国民の過半数(50%超)の意見が行政の長を決定する。 
 そして選挙により成立した政権与党(単独与党、連立与党の双方があり得る)の次回選挙までの政治が過半数の国民に不人気であれば、主権を有する国民の過半数は次回選挙で野党に政権を交代させることが出来る。したがって、次回選挙までの与党(連立与党も含む)の国政運営は国民の過半数に不人気であることが許されない。おのずから与党の国政運営は緊張を伴ってなされることになる。これが、人口比例選挙の唯一かつ肝心要の長所である。
 このことは、2021年4月現在で、日本の1人当りGDP(購買力平価換算/IMF)が韓国に劣っていることとも無関係ではないと私は思っているが、これについては私見を記すにとどめる。 1人1票訴訟の経過にふれておくと、

①わたしどもは、2009年に衆議院選挙違憲訴訟を全国で提訴した。2009年から今日まで、国政選挙毎に全国の14高裁で提訴し、累計で120個の高裁判決と8個の最高裁大法廷判決を獲得した。
②8個の最高裁大法廷判決の結果、2022年の本国会で10増10減の衆院選選挙区割り法が成立すると予測されるようになった。
③2009年の衆院選では、全人口の46%が全衆院議員の過半数を選出していた。
④同8個の最高裁大法廷判決の結果、10増10減の選挙区割りにより、全人口の48%が全衆議院議員の50.1%を選出することになる。
⑤これにより、日本も人口比例選挙(即ち、全人口の50.1%が全衆議院議員の50.1%を選出する選挙)まで、全人口の2%(=50.1%-48%)の差まで肉薄する。

 すなわち、人口比例選挙まで(国会議員主権国家を脱して、国民主権国家に変わるまで)もう一息のところまで来たということである。(升永英俊)

Onlineシニア塾報告②<2021.5~2022.4>

 Onlineシニア塾は開講してちょうど1年の節目にあたる2021年5月、特別講座「ミャンマー問題を考える」で21回を迎えました。これを機に、以後の授業はページをあらため、この「Onlineシニア塾報告②<2021.5~>」に掲載します。これまでの講座<若者に学ぶグローバル人生>第19回までと、<気になることを聞く>の第4回まで、さらに特別講座<もっとZoom、初めてのSlack>は、「Onlineシニア塾報告①<2020.5~2021.4>」をご覧ください。なお、今回からは新しい授業が上に来るように、ウエブの通常編集通りに掲載します。

講座<気になることを聞く>

第37 回(2022.4.25)
 玉腰兼人さん アフガニスタン脱出作戦ドキュメントとウクライナ取材

 玉腰兼人さんは<若者に学ぶグローバル人生>にも登場していただいたドイツ在住の映像作家だが、アフガン戦争末期にドイツに協力したアフガニスタン人を避難(脱出)させるために奮闘したドイツ人女性ジャーナリストのドキュメントをこのほど制作、NHKでも放映された(映像記録「 アフガン脱出」)。番組パンフには「タリバンの政権掌握以来、混乱が続くアフガン。国外脱出する人々が続出する中、前代未聞の救出作戦に挑んだ市民たちの命懸けの闘いに迫る勇気と感動の物語」とある。ドイツ人ジャーナリスト、テレサさん(写真)のその後の活動も含めて興味深い話を聞いた。
 また最近はウクライナ問題でもポーランド国境でウクライナから脱出してくる難民や彼らを助けるために世界各地から駆けつけたのボランティアの活動などを取材、これも近くNHKで放映される予定だという。

ウクライナ・ポーランド国境にて 2022年3月後半、ウクライナ・ポーランド国境にあるMedyka(メディカ)を取材した。そこでは、ウクライナ人難民が国境を徒歩で越えポーランドへ入ってきている。乾燥したその地域は日差しも強く、朝はマイナス1度、日中は15度ほどまで上昇する寒暖の差が非常に大きい時期で、そのため体力が奪われるのも早い。
 そんな環境の中、ウクライナ難民は、昼夜問わずこの国境を渡ってくる。20分間に500人以上が国境を越えてくる夜もあった。成人男性は兵役義務があるため国内に残り、基本は女性、子供である。彼らは、ウクライナ側の国境検問所で4、5時間並び、それを通過するとようやくポーランド側のメディカへ到着する。皆、本当に疲れ切った表情をしていた。足が腫れ上がり、履いてきた靴に足が入らなくなっていた女性、小さい子供を5人、6人と大勢連れて行動する大家族。車椅子の祖母を連れて、ドンバス地方からやってきた家族。そんな家族の到着を今か今かと国境で待つ引き裂かれた家族や友人たち。戦争の過酷さを目の当たりにした。
 そんなウクライナ難民を無我夢中で助けたいと集まった善良な市民にも出会った。食べ物の炊き出し、衣服の提供、携帯や子供たちへのおもちゃの支給など、ありとあらゆるボランティア団体が世界中から集い、難民をサポートしていた。何も知らずに立ち寄った人は、きっとここは野外フェスティバルだと勘違いするだろう。
 ドイツやオーストリから自身の大型車で国境まで来て、自国で待つ家族や友人の元へと運ぶ人々、難民の疲れ切った心を癒すため、毎日決まった時間に野外でピアノを演奏するイタリア人ピアニスト、子供たちに無垢の笑いを提供するドクターピエロと呼ばれるイスラエル人グループ。また、毎日押し寄せる難民たちを肌で感じ、そこからインスピレーションを得てゲルニカに似た平和を願う絵を描き続けるメキシコ人画家(現在はキエフへと渡り、現地で3作目を描いており、描き終わり次第、ゼレンスキー大統領に寄付するとのこと)。
 ロベルトさんが「どんな状況にあろうと、人は最後、決して一人ではない」と涙ながらに語っていたのが印象的だった。戦争の悲惨さと同様に、人のために行動する「市民の無償の愛」、その強さを感じた取材だった(写真はロベルトさんの絵の前のロベルトさんと私。(玉腰兼人)

講座<若者に学ぶグローバル人生>

第36回(2022/3/22)
タイのタブチムトン・プレアウさん。バンコクの南にあるペッチャブリー県で生まれ、現在、マヒドン大学の教養学部4年生。英語専攻、副専攻が日本語。父親がタイの国技でもある格闘技、ムエタイの指導者で、幼いころからムエタイを学び、海外に行った経験もあるという。
 2019年、福岡女子大学に1年間留学、今年4月から半年、長崎大学の日本語・日本文化プログラム(JLCP)の交換留学生として再来日することになっている。日本のポップ音楽やカラオケが大好きで、「日本に来たらおもいっきりカラオケをしたい」と、屈託のない明るい笑顔で話してくれた。卒業した後は日本の大学院でさらに学びたいという。
 日本アニメの「ワンピース」がきっかけで日本語に興味をもったというが、ごく普通の若者がテレビで放映されたアニメで日本語に興味をもち、それを学び、奨学金を利用して留学、これからも日本で学びたいというのは、日本人としては嬉しいことだが、同時にそういうグローバルな時代になったんだとの感慨もひとしおだった。

講座<とっておきの話>

第35回(2022.1.14)
 松田重昭さん レオナルド・ダ・ヴィンチ 手稿に見る天才の証明②

 第2回はレオナルド・ダ・ヴィンチと日本を結ぶ不思議な糸について話があった。  
 二重らせんと言うと、いまでは遺伝子DNAの構造として知られているが、ダ・ヴィンチの手稿に建築としての「二重らせん」構想があることは前回にも紹介された。二重らせん階段だと、上る人と下る人が対面しなくてもすむ。ヨーロッパ中世の城にも二重らせん階段が使われているが、日本の江戸時代、会津藩に「さざえ堂」という二重らせん構造の寺が立てられていた。
 この二重らせんはダ・ヴィンチと関係あるのかどうか。松田さんによると、出羽国久保田藩(現・秋田市)8代藩主で秋田蘭画の担い手でもあった佐竹曙山の写生帖にある二重らせん階段図→17世紀オランダ彫刻家の「遠近法教程」にある図→16世紀のイタリア建築家の「実用透視図法」にある図、などをたどっていくと、ダ・ヴィンチに結びつくのではないかという。故小林文次日本大学教授(建築史)の研究資料をもとに新説も交えた興味深い「謎解き」だった(写真は、左からダ・ヴィンチ手稿、遠近法教程の図、フランス・シャンボール城のらせん階段、会津のさざえ堂)。 ダ・ヴィンチは都市国家が林立、抗争していた時代にあってパトロン向けの戦車、兵器などの開発も構想しているが、基本的には水車、自動推進のこぎり機、自動回転焼肉機、湿度計など人間の暮らしに役立つ平和的な技術、仕組みに関心をもつ平和主義者の面が強かったという。
 ダ・ヴィンチをめぐる研究会は世界中に広がり、それらをつなぐ「ユニバーサル・レオナルド」というサイトもある。松田さんは日本におけるダ・ヴィンチ研究家でもある斎藤泰弘・京都大学名誉教授(イタリア文学)とともに、ダ・ビンチの平和主義的生き方を世界に広める運動を「ユニバーサル・レオナルド」に働きかける準備をしている。このようなグローバルで壮大な運動にOnlineシニア塾も協力できればたいへんすばらしく、この点については、事態の進展にあわせて、斎藤先生にも参加していただき、再度の授業を行うことになった。

講座<気になることを聞く>

第34 回(2022.2.12)
 烏里烏沙さん 中国の少数民族―その生活と自然、文化

 烏里烏沙(ウリウサ)さんは山岳写真家。中国の少数民族の1つ、彝(イ)族出身で、1996 年に来日、和光大学で学び、現在はヒマラヤ山脈および中国西部の山岳自然、少数民族、風土をテーマに多角的な視点でとらえた調査活動を続けている。この日はご本人が撮ったもの以外も含め、多彩な写真を見せていただきながら、中国の少数民族の生活、文化などについて聞いた。
 中国の人口の9割を漢民族が占めるが、漢民族が住んでいる地域は国土の東南部3分の1程度、他の3分の2に中国政府に認定されただけでも約55の少数民族が住んでおり、なお未認定の少数民族が60以上に及ぶ。
 2010年の国勢調査で見ると、漢族が12億人と圧倒的だが、そのほかはチワン族1690万、回族1060万、満族1039万、ウイグル族1007万、イ族871万、チベット族628万、蒙古族600万人など。今でも日常的に民族衣装を着る機会も多く、それぞれの言語を中心に生活しているという。
 ウイグル、チベットなどは自治区もあり、日本人にもおなじみだが、広大な国土に住む少数民族の実態をつぶさに知るいい機会になった。中国全体の人口が増えていることもあり、少数民族の数も増えている。進学などで少数民族を優遇する政策や、少数民族同士の婚姻などの相互交流も行われているとか。各民族の衣装、住居、祭りなどの行事、食事風景などの写真はたいへん興味深かった(写真上はキルギス族、下はトン族)。 
 なお今回は、メンバーの森治郎さんが主宰する<探見』の会>との共催で行われた。以後もテーマによっては共催を続けたいと考えている。

中国少数民族文化教育基金会 烏里さんは、特定非営利活動法人「中国少数民族文化教育基金会」理事長や一般社団法人 日本中国友好写真家協会の会長もつとめている。日本写真家協会のウエブには、写真を通して日中文化交流に尽くす烏里さんが紹介され、そこにもいくつかの写真が掲載されている。少数民族の子どもたちのための小学校の建設事業も進めているとか(Ý)。  
 3月18日から24日まで富士写真フイルムフォトサロンで個展開催予定。4月以降、大阪、名古屋、札幌でも開催される。詳しくは以下を参照。https://fujifilmsquare.jp/exhibition/22031

講座<若者に学ぶグローバル人生>

第33回(2022/2/4)
中国出身の常静(チャンジン)さん。東北師範大学でソフトウエア・プログラムの勉強をし、大学卒業後、日本IT企業の就職試験を受け合格して来日。会社の同僚の紹介で日本人と結婚し、大森静となる。福岡県在住、4歳の娘さんと3人暮らし。いまは九州大学大学院システム情報科学研究院で情報知能工学研究の手伝いをしている。
 1人の中国人女性が日本に定住することになった経緯を中心に話を聞いた。3人兄弟。好きな言葉は「朝は希望とともに起き、昼は努力して生き、夜は感謝とともに眠る」。「人に悪いことをされたら、泣いてもいいと思って、人と真心で付き合うことを大事にしている」とかで、中国もつい最近まではずいぶん穏やかな人間関係があったのだと、ちょっと懐かしく、また不思議な気もした。

講座<とっておきの話>

第32回(2022.1.14)
 松田重昭さん レオナルド・ダ・ヴィンチ 手稿に見る天才の証明

 2022年の年頭を飾るにふさわしい授業になった。松田さんはイデア教育文化研究所代表(学芸員)で、大学卒業後、百貨店の宣伝企画部に勤務、美術展示の担当になったのを機にさまざまな美術展を開催、その後フリーになってからもイタリア、フランス、ドイツ、スペイン、イギリス、ルーマニア、アメリカなどの各美術館を訪問、交渉のうえ多くの企画展を実施してきた。その中で松田さん(下の写真右上)がほれ込んだのがレオナルド・ダ・ヴィンチだったという。

  ダ・ヴィンチと言えば、モナ・リザ、あるいは最後の晩餐といった名画が思い浮かぶが、松田さんによると、ダ・ヴィンチの作品だと確定できるものは20点に満たないらしい。それらの絵を見ながら、名画にまつわるエピソードなども聞いたが、ダ・ヴィンチの「天才」を証明するのは、ノートなどに残された手稿(4700ページに及ぶ)だという。
 人体解剖図、上写真にも表示されているウィトルウィウス的人体図、車の模型、永久運動機関モデル、フィボナッチ数列や黄金比、天体観測、建築設計、さらにはロボット模型などなど、発想はあらゆる分野に及び、しかもそれがすべて先駆的である。ダ・ヴィンチは「すべてを自然から学んだ」というが、絢爛たる発想の集積である手稿は、まさに天才の証明にふさわしい。参加者は興奮がちに話を聞いた。
 ダ・ヴィンチの業績や日本との関係など、2月下旬以降に第2回を開催してもらうことになった。
 松田さんは1月28日から3回にわけて以下のオンライン講演を行う。NHK文化センター名古屋教室:『モナ・リザ』に会うまで~天才レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯~ | 好奇心の、その先へ NHKカルチャー (nhk-cul.co.jp)

講座<若者に学ぶグローバル人生>

第31回(2021/12/18)
 インドネシアのレイニ・ドウィ・アングライニ(Reyni Dwi Anggraini)さん。ジャカルタ出身。パジャジャラン大学日本語学科卒。国費留学生として名古屋大学短期留学プログラム修業。日本語能力試験1級取得。2017年よりフリーランス翻訳者・DTPデザイナーとして活躍。卒業後日本企業に1年勤務。その後、好きな日本語に磨きをかけるため(?)、別の日本企業に内定したが、コロナ禍のため訪日が延期され現在、待機中。言語学習と日本の社会問題に関心があるという。好きな言葉は”Believe you can and you’re halfway there”(Theodore Roosevelt)とか。

  好きというだけあって、すばらしい日本語で生い立ちや日本語に興味をもった経緯、今後の抱負などについて話してくれた。パジャジャラン大学日本語科のサムスル先生もインドネシアから参加してくださり、今年最後のOnlineシニア塾はなごやかで楽しく、すばらしい会になった。サムスル先生の話だと、日本語学科には1年100人の学生がいるという。
 最後に形ばかりの忘年会も行い、新年に向けての抱負などを語り合った。Onlineシニア塾は本年中に20回の授業を行ったが、忙しい中をご登壇いただいたスピーカーの皆さんや討論に参加してくれたメンバー諸兄にお礼申し上げます。またレイニさんを含め何人かの留学生をご紹介いただき、授業にも多数で参加いただいたアジアの風のみなさんのご協力にあらためて感謝申し上げます(<おもいっきりZoomサロン>に「アジアの新しい風」の活動報告>)。 

講座<とっておきの話>

第30回(2021.12.4)
 高橋慈子さん/星野真波さん 新しい学びの場を使った実践活動②

「新しい学びのカタチ」第2弾は、Udemyの教材『説明、連絡、相談文の書き方』を使って、相手に伝わる自己紹介文の書き方の演習などが行われた。最初に日本で働く外国人の方が書いた文章を、日本語講師の星野さんが添削して解説、次に、外国人にもきちんと伝わるプレインジャパニーズのポイントを高橋さんが解説した。そのあと参加者が即席で書いた自己紹介文をチャット機能を使って共有し、以前onlinesシニア塾に登場してくれたベトナムのチャンさんからも「わかりやすい日本語」の観点からコメントをもらった。
 日本企業にも外国人従業員が増えつつある時代を受けて、外国人、日本人とも、わかりやすい日本語で話す訓練をする必要があるというのが教材作成の動機といい、参加者が即席で書いた自己紹介文は、2人の講師や外国のゲスト参加者などから、企業内の話題に偏らない、趣味などは具体的に書いた方が対話のきっかけになる、なるべく難しい表現は使わない、四字熟語はわからない、などという厳しいチェックを受けた。
 文字通りの双方向コミュニケーションが繰り広げられる楽しい講義で、各自の体験や異なる意見などが語られ、参加者同士の親睦にも大いに役立った。今後のOnlineシニア塾のあり方に「一石を投じた」(あえて使用(^o^))と言えよう。冒頭写真は「プレイン・ジャパニーズ10原則」で、「能動態を使う」、「否定や二重否定を使わない」などが上げられている。

講座<気になることを聞く>

・第29 回(2021.11.23)
 シンシア・サヤス(Cynthia N. Zayas) 日本の50年間の思い出

 国立フィリピン大学国際研究センターの元教授兼所長で、フェリス女子大学の交換教授として横浜に滞在中のシンシア・サヤス先生に、日本とフィリピンを往復して感じた50年の思い出を聞いた。彼女はフィリピン大学で学士号(人類学)と修士号(アジア研究)、筑波大学で修士号(文化人類学)と博士号(文化人類学)を取得、「鼻で食べることと目で食べること」、「黒潮ルートのイモ栽培文化」、「海女」など、日本に関する興味深い研究も発表している(今回の担当はフィリピン在住で先生と交流の深い鮎澤優さん)。
 日本に初めて来たのは1970年代、16歳のときで、自然とともに暮らす日本人に感心した。研究テーマとして漁業関係を選び、伊勢志摩で海女、仙台で津波被害を調査するほか、長崎、淡路島、直島など全国各地を訪問、その多くを民家に泊まりながら庶民生活を観察してきたという。
 そういう経験のなかで感じるのは、日本人の食生活の変化、たとえばスパイシーあるいは「濃厚」な味が好まれるようになった、スーパーなどでは魚より肉が目立つようになり、かつて大衆魚だったサンマはいまは高級魚になった、旬のものはレストランを別に一般のスーパーなどでは見えなくなった、などを強く感じたという。一方で、真子さんが家族と別れの挨拶をするとき、妹の佳子さんと抱擁している写真に驚いたらしい(たしかに)。今度のコロナ禍は日本人の生き方を変える(元に戻す)チャンスだと強く感じているようでもあった。その後は多岐にわたる質疑応答で盛り上がった。

講座<とっておきの話>

第28回(2021.11.13)
 高橋慈子さん/星野真波さん 新しい学びの場を使った実践活動

 Udemy(ユーデミィ)を使った教材制作の実践活動について、高橋慈子さんと星野真波さんに話していただいた(2人はOnlineシニア塾が縁で知り合った。写真右、上から4番目が高橋さん、3番目が星野さん)。

 UdemyはE-Learning用のサイトで、だれもが教材を出品、それをだれもが購読できる「教育のマーケティングプレイス」だという。すでに18万3000以上の教材が提供されており、4000万人以上の人が学んでいる。マーケットプレイスだから、自分の教材をいくらで提供するかは製作者の自由。2000円くらいから数万円と値決めはさまざまだが、動画コンテンツの質に関してはUdemy側のかなり厳しい審査がある。
 高橋さんは星野さんの協力も得て、すでに「伝え方と書き方 仕事の基礎力講座―就活に、転職に、日々の仕事に役立つ!」など4つの教材を提供、すでに200人に購読されている。高橋さんによると、「ビジネス的にはいまは初期投資の段階だが、紙の教材づくりよりは手ごたえがある」とのこと。
 なおこの授業は12月4日(土)に第2回があり、演習の実演もしていただく予定。

  今後は教材開発のお手伝いも「eラーニング」と呼ばれるITを活用した学びの方法は、従来から存在していますが、Udemy が新しい点は、動画を使った教材を制作すれば誰もが講師として有料でリリースできることです。アクセス数に応じた広告収入がバックされるYouTube との違いは、受講料が収入となることです。ちなみにYouTube ではまず注目してもらうことが重要で、継続した収入を得ることは有名人でも難しくなっています。
 教材を制作するにあたって工夫したのは、ボリュームを多くしないで、学びたいときに1テーマでサクッと学べるように完結させたこと。また、説明に変化を付けるために、最近の2 つのコンテンツでは、ゲスト講師からの説明パートを加えています。
『説明、連絡、相談文の書き方』では、日本語講師の星野真波さんが、受講生からよく受ける質問に対する回答をわかりやすく伝えてくれました。『伝え方と書き方 仕事の基礎力講座』(写真)では、フリーアナウンサーの中村麻里子さんに登場いただきました。プロの話し方はさすがですね。 
 収録はオフィスの一角で行っています。コロナ持続化給付金を使い、オンライン研修や動画収録ができるようにリノベーションしました。IT関連の書籍で共著が多いテクニカルライターの八木重和さんが収録と動画編集を担当してくださっています。私はシナリオや教材作成と解説担当です。
 それぞれの得意な点を持ち寄って、スピーディーに質のよいコンテンツをリーズナブルに制作して提供していくことを目指しています。これまでのように書籍を出版社から出してもらうといった受け身の姿勢から、主体的にコンテンツ制作に踏み出せたことが新たなチャレンジです。
 今後は、教える知識とスキルを持っていても、動画収録や編集の技術がない方の教材開発のお手伝いもしていきたいと考えています。
 まずは、Udemy の学びはどのようなものか、以下のリンクから是非、体験してみてください(T)。
『説明、連絡、相談文の書き方』https://www.udemy.com/course/bzwriting/?referralCode=4F5AE3BD8BFD4661D9BB
『伝え方と書き方 仕事の基礎力講座』https://www.udemy.com/course/comucationbasic/?referralCode=C93910A83C0F7A307B78

講座<若者に学ぶグローバル人生>

第27回(2021/10/12)
 ケオケンチャン・トンカンさん。テレビのアナウンサーになるのが夢で大学ではラオス語を専攻したが、アニメ映画「もののけ姫」を見て日本語に興味を持って勉強を始めた。卒業後、一時は日本企業に就職したが、もっと日本語を勉強したいとラオス国立大学内の日本語センターに勤務。現在は明海大学大学院博士後期課程応用言語学研究科に在籍、日本滞在は6年になり来春、帰国の予定。いま日本文化をどん欲に吸収しつつある。ラオス人留学生協会長。
 9人兄弟の7番目。弟も日本の大学医学部に在籍していたが、つい最近帰国した。陽気で社交的、和服を着たり、カラオケに興じたり、日本の生活を楽しんでいるようだ。日本に来て驚いたのは、バスに乗るのにみんなが整然と長い列を作っていること、財布を忘れても戻ってきたこと。「こんなことはラオスではないですよ」。
 日本語はいまはずいぶん達者だが、学ぶ際の困難はラオス語、日本語の対訳辞書がないことだったといい、タイ語を介しながら勉強したらしい。帰国したら、まず「辞書作りに取り組みたい」と熱い抱負を語ってくれた。「いまは語学学習にITも活用できるから、帰国したら辞書作成の大プロジェクトを起こしてください」とのエールも。

新講座<とっておきの話>

第26回(2021.9.17)
西岡恭史さん・ハッピーエンディングプランナー

 新講座<とっておきの話>はOnlineシニア塾のIT顧問でもある西岡恭史さんが取り組んでいる地域における高齢者向けのデジタル終活指南の現状、苦労話を聞いた(写真右最下段が西岡さん)。

 西岡さんは日本大学生産工学部を卒業してIT企業に就職したが、デジタル技術、とくにインターネットの激しい技術革新を前に再勉強しようとサイバー大学IT総合学部に入学、卒業後さらにSBI大学院大学も修了するという〝勉強大好き〟な人である。
 2008年の母親の死に際して、葬儀の段取り、お墓の購入、役所や保険会社の手続きなどで苦労した経験をもとに、デジタルを終活に生かす仕組みを作れば便利ではないかと、会社をやめてお年寄り向けのサービス、「ハッピーエンディングプランナー」としての活動を始めた。
 自宅がある練馬区の区関連施設や団地集会所などでいろんな相談や指導に応じている。身近に相談できる子や孫がいないお年寄りにとって、たいへんありがたい支援活動で、テレビ朝日の「東京サイト」などでも活動が紹介されているが、多忙とは裏腹に、ボランティア的な支援に終わりがちで、起業したとはいうもののビジネス的にはなかなか大変なようだった。西岡さんの連絡先などは以下の通り。 

新設デジタル庁に期待 たとえば、突然交通事故で死ぬ羽目になった場合、自分の身元を証明できるようなカードを身に着けているか、死後の連絡先などをパソコンやスマホに入れておいても、家人にパスワードがわかるようにしておかないと結局は見られない、「デジタル遺産」ともいうべきウエブ上の自分の書き込みは死後、どういうふうに処理するのが適当なのか――、西岡さんの話を聞いていると、私たちはずいぶん迂闊に生活しているのに気づかされる。
 アップルが「デジタル遺産プログラム」を始めるなど、IT企業もこれらの取り組みを始めているが、これは本来、自治体や政府が率先して行うべきことで、西岡さんなどの先駆者にはそれなりの補助などもあってしかるべきだという気がする。新しくデジタル庁が発足したことでもあり、こういうボランティア的な事業に手厚い保護がを与えられるような政治が求められるのではないだろうか(Y)。

 新講座<とっておきの話>はOnlineシニア塾に参加しているメンバーが自分がやってきたこと、その間に経験した興味深い話、今取り組んでいることなどをお互いに報告しあい、コミュニケーションの輪をより広げようという授業です。

講座<若者に学ぶグローバル人生>

第25回(2021/8/29)
 中国のジャンミャオさん(Jiang Miao)。清華大学卒。2015年に清華大学-東京工業大学合同プログラムで初来日。2017年に清華大学「材料科学と工学」と東工大「電子物理専攻」から修士ダブル学位を取得して卒業。東京大学で博士後期課程に入って研究を続ける。研究内容は半導体に関する新型メモリ技術。2020年に東大「電気系工学」から博士学位を取得して、日本学術振興会特任研究員として東大で働いている。
 一時は半導体部門で元気だった日本もいまは停滞気味、世界のシェアは圧倒的に台湾に握られているのだとか。ジャンさんはその最先端で研究を続けており、その現状を丁寧にやさしく説明してくれた。参加者からは「超優秀大学・精華大学から日本の大学への留学で、指導教授も良く、研究設備も良い環境で充実した研究を続けておられ嬉しいです!どうか日本の研究仲間と親しくなって国を超えて世界に貢献できる研究を展開してください。世界平和に貢献できる成果を期待しています!」との感想も寄せられた。

講座<気になることを聞く>

・第24回(2021.6.13)トランプ大統領によってあぶりだされたアメリカ社会の亀裂③

 バイデン大統領誕生からすでに半年近くたつが、トランプ前大統領の共和党内の人気はいぜん衰えていない。反トランプの急先鋒だった共和党議員団のナンバー3だったリズ・チェイニー議員は更迭され、共和党は前大統領との関係を今後も維持する構えである。トランプ氏は3月の全米規模の保守系イベントの集会であいさつ、次期大統領選への出馬もほのめかしている
 ここに一つのデータがある。5月下旬の段階で、共和党員に「議会占拠の責任はだれにあるか」と聞いたら、「トランプ」や「共和党」よりも、「民主党」と答えた人が一番多かった(The Economist)。「トランプ大統領によってあぶりだされたアメリカ社会の亀裂」は、いよいよ混迷の度を加えているようにも見える。そういう状況を受け、本授業も4年後を視野に入れつつ、少し長期的に話していただくよう宮前さんにお願いしている。

講座<若者に学ぶグローバル人生>

第23回(2021.5.29)
タイのドゥアンケーオ・スットプラータナー(Sutpratana Duangkaew )、通称リボンさん。タイ北部のチェンマイ出身。2007年に1年間琉球大学に短期留学し、2013年~2016年、文部科学省の奨励金を受けて琉球大学大学院(博士後期課程)を卒業。その後、タイのスズキモータースで通訳、東京の日本企業の海外部正社員として勤務。タイと日本を架け橋する活動として、2011年からのタマサート大学大学院時代にアジアの新しい風(Iメイト)に参加し、現在もOBとして活動を続けている。現職はタイ・マヒドン大学で日本語・日本学の講師。
 日本の留学先が沖縄で、日本人以上に沖縄通になり、空手など沖縄の文化に親しむなど、多彩な活動に取り組んできた。明るく真摯な人柄で、始終笑顔を絶やさず、日本とタイの風俗の違い、生き方の違いなどについて話してくれた。最後に「いろいろ不満があっても、文句を言うことはやめて、コツコツと自分の得意分野を生かしながらタイの発達に尽くしたい」と決意を話してくれ、多くのメンバーの共感を呼んだ。

第22回(2021.5.9)
中国のジーイーさん。北京大学を卒業後に来日して東京大学修士課程を修了、2年前から日本の求職検索サイトでシステムエンジニアとして働いている。2020年からは東大社会人博士コースでIT関係を学んでおり、その課題は「顔画像の対抗学習サンプルの検知と復元」とか。
 語学が趣味で早くから英語のほかに日本語を学習、多文化を経験したい、空気がきれいで安心できる場所、母国からあまり遠くない国といった周到な〝検索〟の結果、日本が選ばれたようだが、すっかり日本が気に入ってくれた様子だった。細かい検索システムについての「講義」もあり、我が聴講生たちも技術的質問を繰り出し、充実した授業となった。

アジアの新しい風 ジーイーさんは「アジアの新しい風」の上高子さんに紹介していただいた。通称「アジ風」はアジアの日本語学習者への支援や文化交流などを行い、相互理解を深めながら、アジアの平和、ひいては世界の平和に貢献することを目指しているNPO法人である。もう十数年の歴史があり、アジ風のお世話になった留学生も多い。いまは中国(清華大学)、タイ(タマサート大学)、ベトナム(貿易大学)、インドネシア(パジャジャラン大学)と交流している。
 趣旨に賛同してくれた会員の日本人が「Iメイト(愛メイト)」になって、留学生と一対一の関係をきずきながら支援の輪を広げており、逆に世話になった学生たちが今度はアジ風の運営にも協力するという、まことにすばらしい民間外交が繰り広げられている。奨学金支給や交流大学への日本語教師派遣なども行っているという。Onlineシニア塾で登壇していただいたベトナムのチャントゥチャンさんやジーイーさんは、そのサポーターでもある。
 本授業の前日にやはりZoomを使って行われた「春のIメイト交流会」は100名を超える盛況だった。Onlineシニア塾当日には、上さん、奥山寿子さんなど5人のアジ風関係者が参加してくださった(Y)。

特別講座<ミャンマーへの支援を考える>

第21回(2021.5.8)
  特別講座<ミャンマー問題を考える>は<気になることを聞く>第13 回(2021.2.10)「ミャンマーの軍事クーデターで苦悩する日本在住の若者たち」に続くものだが、特別講座として、より広く参加者を募って行った(担当/星野真波ほか)。ミャンマー人の若者(社会人)からは軍事政権とアウンサンスーチー国家顧問が率いるNLDとの長い抗争の歴史が説明され、ヤンゴンに滞在中の日本人企業家、後藤信介さんから現地の状況も報告していただいた。当日の参加は30人余、これまでの授業で最大だった(写真は当日発表の資料から)。


 ミャンマー情勢はいまも激しく動いているが、ミャンマーの人びと、とくに若者たちが命をかけてまで軍事政権に抵抗している背景には、「いまここでひるんではミャンマーの民主化の機運はしぼんでしまう」という強い危機感があるからだと言う。日本人としてどのような支援が可能なのかも、ミャンマーの子供たちの教育的支援などでいくつか提案がなされ、今後ともミャンマーと日本との交流の懸け橋をめざす努力をすることになった。以後は通常講座<気になることを聞く>に戻って適宜開催する予定。

日本に住むミャンマー人は4万人近い 日本にはミャンマー出身者が4万人近く暮らしています(表は在留外国人の数。中国、韓国、ベトナムの順)。その中の5000人強が留学生で、流暢な日本語を習得する人が多く、その話し方から、優しい人柄が伝わってきます。この数年、日本語の指導を通じて接点を持つ機会が増え、今後は日本社会における存在感が高まっていくと思っていた矢先のクーデターでした。
 2月1日の前夜まで、 仕事、勉強、アルバイトに忙しい日々を送り、暇な時間はゲームや動画を楽しむのが日常だったのに、その日から国家の将来像を真剣に考える当事者になっちゃった・・と、発表者の一人が冗談交じりに話してくれました。
 興味のなかった複雑な歴史を学び直し、知り合ったばかりの仲間たちと連携しながら日々活動をしています。 民主化を取り戻すための連帯を呼び掛ける思いが、日本社会へ広がるまでは頑張り続ける覚悟が発表からも伝わってきました。ミャンマーの教育事情は、義務教育を終えられない子供たちの実情を説明するためにも、発表で取り上げたい話題の一つでした。
 ミャンマーの子供たちは、教室で大きな声で発言し、雰囲気を盛り上げ、それを喜ぶ先生を見るのが、嬉しいのだそうです。(日本の学校で、それをされると、少々困るのですが・・)。 学ぶことが好きで、指導者との関係を大切にする彼らの習慣に敬意を払いながら、充実した教育環境の提供の一助となる支援を模索していきたいと思います(H)。

Zoomサロン仕掛人

<Zoomサロン>お手伝いします

 コロナ禍の外出自粛生活を機に、これまでバーチャルな会合には興味がなかった人びとも、インターネットで仲間と旧交を温めたり、新しい会話の機会を広げたいと思い始めたりしているようです。従来のカルチャーセンターのような集いをサイバー空間に築こうという動きとも言えます。

 当Onlineシニア塾はそういう背景のもとにパイロット・プロジェクトとして2020年5月に遠隔会議アプリ・Zoomを使って開設しました。これまですでに12回のミーティングを実施してきましたが、その経過のなかで、Zoomミーティングに参加したい、あるいは自分も趣味などのささやかなミーティングを主宰したいと思いながら、いま一歩を踏み出せずにいる人が多いことを知りました。周囲にZoomの懇切丁寧な指導をしてくれる人を見つけるのもなかなか難しい状況です。

 そこでOnlineシニア塾では、このほど<Zoomサロン仕掛け人>稼業を始めました。「元締め」のもとに、Zoom指導の実績が長いOnlineシニア塾IT顧問の西岡恭史が仕事を請負います。

 Zoomは実は扱いやすいソフトで、送られてきた招待状のURLをクリックするだけでミーティングに参加できます。だから参加出来たらほぼ8割がたのハードルを越えたことになりますが、そのハードルが超えられない方も多いようです。だからスマートフォンを使った指導なども行います。またZoomにはいろいろ機能があります。会議を主催するときの便利な機能についても伝授します。

 コンピュータへの習熟度、考えているミーティングの規模などによって悩みは様々でしょう。オンライン上にはすでにZoomマニュアルは氾濫していると言ってもいいですが、それはある程度インターネットになれた若者向けだったりして、ずぶの素人には結局、よくわからないということもあります。当「Zoomサロン仕掛人」はそういう初心者にこそ門を開いています。

 昔、マイカーブームがやってきたころ、「エンジンブレーキはどこで売っていますか」と聞いた人がいたそうです。インターネットに関するそういう初心者もアクセスしてみてください。

 矢野はパソコン黎明期に『ASAHIパソコン』というパソコン使いこなしガイドブックを創刊し、その後は「IT社会を生きる杖」としてのサイバーリテラシーを提唱してきました。広がるサイバー空間を積極的に、かつ賢く利用すると同時に、IT社会をより快適でより豊かなものにするのがサイバーリテラシーの願いでもあります(サイバーリテラシーについては、本<サイバー燈台>の「サイバーリテラシーとは」などを参照してください)。

2021.2.2 <Zoomサロン仕掛け人>矢野直明
問い合わせ info@cyber-literacy.com

 

おもいっきりZoomサロン

 全国津々浦々で呱々の声を上げつつあるZoomサロンの一覧をここに掲載します。こういうユニークなことを始めたといったお便りをお待ちします。また<Zoomサロン仕掛け人>が関与したZoomサロンに関しては、すべてここに掲載させていただこうと思います。

Zoomが「アジアのしい」に新風―理事・奥山寿子

 NPO法人アジアの新しい風(略称:アジ風)は、アジア各国で日本語を学習している大学生との交流を通して、相互理解を深めようとする団体です。
 具体的な活動は、日本語を学ぶ学生たちとの1対1のメール交流(「Iメイト交流」と呼んでいる)を通して日本語学習支援、留学生たちの生活支援などをする一方で、日本人会員も相手国の文化や歴史を学び、若者たちからさまざまな刺激を受けています。アジ風では、個人的なメール交流と並行して、来日している留学生を囲んで意見交換など様々な形の交流会も開催してきました。
 しかし新型コロナウイルスの脅威が全世界に及び、今まで開かれていた海外との門戸が閉ざされるに至って、留学生がゼロになり、アジ風の活動もまったく止まってしまいました。2020年2月1日に120数名の参加者を集めて新春交流会を開催したのを最後に、2021年の現在まで約2年間、リアルで大勢を集めての会合は開かれていません。
 新型コロナウイルスが命を脅かすウイルスであることが報道され始めた頃は、アジ風の活動をどのように継続するか、考える余裕もありませんでした。そのうち企業や学校では在宅で仕事や授業を始めているというニュースが流れてきて、2020年5月初旬に、そのツールの一つであるZoomと有料契約をし、少人数での打ち合わせのためにまず使い始めました。
 Zoomは使い勝手もよく、自宅で参加できる利点もあって、その後はアジ風の事務局の打ち合わせや会議にも利用するようになりました。インターネットが使える環境があれば、どこでも参加できるこのシステムは、コロナ禍の中で、その大きな力を発揮することが確認できたのです。
 2020年9月には、会員と留学生予定者の交流会も大学別にオンラインで開始し、タイのタマサート大学を皮切りに、ベトナムのハノイの貿易大学、北京の清華大学と大学院、インドネシアのパジャジャラン大学と続きました。留学予定者のみならず、本国にいるIメイト学生たちとつながることができた時の喜びは大きいものでした。

・「線から面」へ、かえってコミュニケーションを促進

 勇気を得て、翌年2021年2月の新春交流会は、日本を含めて5カ国がそれぞれユニークなパフォーマンスやプレゼンテーションをし、その後にグループディスカッションを行うという盛りだくさんなプログラムで行いました。参加者は約160名。人数が増えても、Zoomのブレイクアウトセッション(いくつかのグループに分けて議論できる)機能を使うことによって、参加者意識も高められたと思います。Zoomは当NPOにとってコロナ禍の中での僥倖でした。
 このような交流会の実施によって、アジアの新しい風の交流は大きく変化しました。このツールに慣れた会員たちは個別の学生とのビデオ会話を始めましたし、グループで自由に会話する自主的な活動も見られるようになりました。それまではごく少数の例外を除いては会員と学生の1対1のメール交流だけであったのが、多くの人が参加するオンライン会話によって、一気に「線から面」の交流に発展していったのです。
 もちろん、多少の制約やリアルでの会合とは違う物足りなさもありますが、新型コロナの変異株がどのように拡大していくかが予測できない今、オンラインでの交流はまだ続くと思いますし、たとえこのウイルス感染が収束しても、オンラインでの交流とリアルでの開催と併用することで、アジアの新しい風の活動がより多彩になっていくと思われます。
 現在の懸念材料は、このツールを使っていない会員へのアプローチをどのように進めていくかです。当NPOでも会員の高齢化が顕著となり、ITの恩恵を受けていない会員、ITから距離を置いている会員、デジタルデバイドといわれる人たちも少数ですが存在しますので、彼らを取り残さないことが当面の課題だと思っています。その意味でもオンラインとリアルを併用していくことが必要であると強く感じています。

 注記・Onlineシニア塾の講座「若者に学ぶグローバル人生」のスピーカーのかなりはアジアの新しい風からの紹介です。日々の地道な活動の上前をはねるようで恐縮しつつ、しかも図々しく、さらに多くの方の紹介をお願いしている次第です。未曽有のコロナ禍にZoomを武器に果敢に応戦、ツールとしての限界も克服して、よりコミュニケーションを深めている様子を担当理事、奥山寿子さんに報告していただきました。Onlineシニア塾のバックボーンである「サイバーリテラシー」から見ても大変すばらしい試みだと思います(Ý)。

◎2021.7.29 「気候危機とラウダート・シ ~ 母なる地球に愛をこめて」<Zoomサロン探訪記①>

 Onlineシニア塾のメンバーでもあるメリノール宣教会修道女、キャサリン・レイリーさんが主宰して7月29日午後7時から2時間ほど行った環境問題オンライン・セミナーに参加した。「ラウダ―ト・シ」というのは2015年にローマ教皇が環境問題に関して行った回勅(重要なテーマについて教皇が信徒に直接語りかける「手紙」のようなもの)のタイトルである。
 各地の修道院関係者や気候問題に関心をもつ人など60人以上が参加し、基調報告を聞いたあと各地の実情や意見交換を行った。最後のディスカッションまで残った人が40人以上いた。米国のゴア元副大統領が携わり、世界100か国以上で開催されている環境問題に関するセミナー、クライメート・リアリティ・プログラム(Climate Reality Program)の一環でもあり、第1部ではプログラム・リーダーの資格をもつ理学博士、境野信さんが講演した。
 その中で「人新世」という言葉が紹介されたのが印象に残った。地球は地質学的に見て新たな年代に突入したという考えに基づいており、人間の活動の痕跡が地球の全表面を覆いつくした年代という意味である。地表はビルやコンクリートで覆われ、海にはマイクロプラスチックが浮遊し、大気は二酸化炭素で充満している。もはや未開地はないばかりか、人間の活動は全地球を覆うに至った。
 それは同時に人間の経済活動が地球を食いつぶしていることを意味する。新自由主義経済はすべてを市場に取り込み利潤の糧とし、人びとの精神や魂まで切り崩しているが、今や地球危機そのものが私たちの生き方を抜本的に改めることを迫っているわけである。 
 私たちは今何をすべきか、というのがセミナーのテーマで、2050年までに二酸化炭素排出量をゼロに抑えるための政治的課題とは別に、私たちが日常的に二酸化炭素放出を減らすためにできるものは何かと言った身近な提案も行われた。境野さんによれば、化石燃料で飛ぶ飛行機に乗るのも、なるべく控えた方がいいのだとか。 
 コロナ禍のもとで強行された東京オリンピックでは不祥事が頻発しているが、オリンピック関係者用に調達された食糧の大量廃棄をどう考えるべきか。このような無駄を何の痛痒も覚えずにやれるようになっている現代人の感性をこそ問題にすべきだと、突然、発言を求められて、私はまとまりのない感想を述べた。
 最後にキャサリンさんが、「前回は20人規模の参加者だったが、今日はその倍以上。少しずつ仲間を増やしていくことが力になる」と述べ、事務局の水谷安江さんは「講演依頼があればどうぞ」と呼びかけていた。
 たしかに。こういうZoomサロンをもっと広げていくべきである。だからこそ、Onlineシニア塾にも多くの人に参加してもらいたいと、我田引水的に思ったわけでもある(Y)。なお次回セミナーは10月13日19時からだそうです。希望者はcommon.home5292021@aol.comまでメールを。

<探訪先を探しています。ご連絡いただけると幸いです>

◎2021.1.9 『探見』の会「江戸城おもしろ史―天守再建ができたら」

 Onlineシニア塾の主要メンバーでもある森が主宰する『探見』の会(メールマガジン『探見』を毎月発行、読者1000人)が、従来実施してきた現地見学会や講習会を自粛せざるを得なくなって、急遽、オンラインで行なった。40人以上の申し込みがあり、今回の講師は、江戸城天守を再建する会会長・太田資暁さん(太田道灌の子孫)。 私もZoomサロンを主宰するのは初めてで、西岡恭史仕事人に助力をあおいだ。パワーポイント画面80枚以上を駆使した太田さんの講演はスムーズに運び、その後の質疑応答、意見交換も大盛況だった。まさに「案ずるより産むが易し」というのが〝大仕事〟を終えたときの感慨だった。(『探見』編集発行人・探見の会代表幹事 森治郎)

◎2021.1.30 「子育てとの両立をしながら働く女性を支援するためのオンラインサロン」

 高山れい子さんが主催する「子育てとの両立をしながら働く女性を支援するためのオンラインサロン」を西岡が手伝いました。事前に主催側とのZoomでの打合せ、当日サロン開始前にMC担当者とも打合せを行いました。
 講師の川崎市議会議員、各務雅彦氏の、地域の子育て環境の向上を目指して議員になった経緯や、銀行勤めをしながら2人を育てたシングルパパの奮闘ぶりを聞いた後、質疑応答がありました。土曜日の昼間ということもあり回線の不備があった方もいたが、8名参加のもと無事終了しました(N)。

◎2021.2.21 高承研でもミャンマーの若者から話を聞く

 Onlineシニア塾第13回<ミャンマーの若者に聞く>をきっかけに、私の主宰する「高度技術者育成と技能伝承研究会」(高承研)でもミャンマーの若者から話を聞きました。前日にマンダレーで国軍の発砲による死者の報道があった影響もあってか、星野さん、ミャンマーの若者2人、高承研側は私を含め9名が参加しました。
 話を聞いた後は、CDM(市民的不服従運動)について、アウン・サン・スーチーさんの評価、影で軍を支援する中国の影響力 への懸念、支援活動へのカンパ、広報活動の重要性などについて活発な議論がありました。
 最後に、年長者から60年安保や70年安保闘争のころの思い出や反省の弁を伺い、それに基づいて、短期的な思いに駆られて跳ね上がった活動は控え、理性的、科学的に対処することの重要性が語られました。参加したミャンマーの若者からも現状への考え方や抱負が語られて、自分の意見を堂々と話される様子に感心しました。たいへん有意義な会でした(「高度技術者育成と技能伝承研究会」主宰・大野邦夫)。

Onlineシニア塾報告①<2020.5~2021.4>

<Onlineシニア塾>については、<Onlineシニア塾への招待>をご覧ください。以下はそのOnlineシニア塾報告①です。

講座<若者に学ぶグローバル人生>

・第1回(2020.5.20) 
中国人留学生、ユー・プーホン(余浦弘)さん。北京の中央財経大学卒業後、UCLA、シカゴ大、スタンフォード大に短期研修留学、2019年から東大経済学部修士課程に在学中。

・第2回(2020.7.2) 
ベトナムのチャントゥチャン(TRAN THU TRANG)さん。ハノイ貿易大学在学中の2011年、日本文科省の奨学金を得て来日。東京外大日本語教育センター終了後、2016年に京大経済学部を卒業して日本の製薬会社に入社、2021年からシンガポール勤務。

・第3回(2020.7.17) 
ミャンマーのスータンギレッさん。ヤンゴン外国語大で仏語専攻。ミャンマーの日系企業で働いた後、2015年奨学金を獲得し来日。2018年法政大大学院でMBA取得。同大卒業後、2018年から日系総合商社に勤務。

・第4回(2020.7.24) 
スウェーデンで日本語を教える雪江しおりさん。大妻女子大在学中、北京師範大で2年間中国語を学ぶ。上海の日本語スクールでスウェーデン技師と知り合い、結婚してスウェーデンへ。ストックホルム大学で専門職学士の学位を獲得。現在、スウェーデン語学校のキャリアカウンセラーとして勤務。

・第5回(2020.8.19)
ネパールの青年実業家、パウデル・スンダ―さん。現地からの参加。ポカラ出身。祖父から「日本のラジオは世界一だ」と聞かされて育ち、ネパールの大学を卒業後、1999年に来日。武蔵工業大学で環境情報学を学び、卒業後、日本人と交流する場を作るためネパール・インド料理のレストランを開業した。その後、東洋大学大学院博士課程で木造建築を研究。ネパールで木造建築の普及を目指す会社を設立。

・第6回(2020.9.7)
ナイジェリアから留学中のチグメズ・イベグアムさん。2017年にあしなが育英会「アフリカ遺児高等教育支援100年構想」の奨学生として採用され、2018年春に来日。2年間、JASSO東京日本語教育センターおよび大阪YMCA日本語学校に通い、2020年4月より岡山大学グローバル・ディスカバリー・プログラムに進学中。
 参加者約15人。2年で修得したとは思えない流暢で〝訛り〟のない日本語に全員が驚く。いずれは故国に帰って児童教育に取り組みたいとのこと。あしなが育英会の沼志帆子さんから「アフリカ遺児高等教育委支援構想」についても話を聞く。

・第7回(2020.9.14)
ドイツ在住の映像ジャーナリスト、玉腰兼人さん。立命館大学国際関係学部在学中の2008年9月より交換留学生としてベルリン・フンボルト大学に1年間滞在、日本に帰国し大学を卒業後、再度渡独し「オペア・ホームステイプログラム」に参加、ハンブルグのドイツ人家庭で5人の子どもと1年間生活。2012年、ベルリンの映像制作会社に勤務、2019年にフリーの「VideoProducer/Coordinator」として活動。ドイツ・欧州各国において、主に日本のテレビ番組、各種プロモーション動画・写真の撮影、取材アレンジ・コーディネートなどを手がける。ドイツの難民支援組織にも所属している。玉腰さんのウエブhttps://www.kentotamakoshi.com
 一人の青年がドイツという社会でたくましく育っている姿は感動的だった。日本の教育のお粗末さを改めて感じさせられもした。

・第8回(2020.10.13)
シェラレオネから留学中のイジキエル・ガイネシさん。2018年にあしなが育英会「アフリカ遺児高等教育支援100年構想」の奨学生として採用され、2019年春に来日。JASSO東京日本語教育センターに1年間通い、2020年4月より東京国際大学に進学中。デジタル・ビジネス&イノベーション専攻。
 フェイスブックを通じてあしなが育英会を知ったのが彼の人生の大きな転機になった。学校では英語を使ってきたが、来日にあたって日本語に挑戦、大学院にも進んで、将来は国の発展に尽くしたいという。「シェラレオネの福沢諭吉をめざせ」とのエールも飛んだ。

・第9回(2020.10.22)
中国留学生、ショウ・ヨウレイ(焦燁泠)さん。江蘇省・南京市出身。南京外国語学校で中高時代を過ごし、北京科技大学に進学、英語を専攻。大学2年次に、北京大学・国家発展研究院で、経済の第2学位を取得。交換留学で北欧エストニアのタルトゥ大学に進み、その後カリフォルニア大バークレー校のサマースクールを受講。2019年秋に来日し、東大経済学部大学院研究科コースで、農業経済学や、ジェンダー労働経済学を研究中。趣味は、JーPOP、K―POP、テコンドー、ピアノ演奏。
 中国の学生は勉学意欲がすごいらしい。それに比べると日本人学生は「勉学をのんびり楽しんでいる」とのこと。喜ぶべきか、あるいは、そうでないのか。現在、日本企業への就活中。

・第10回(2020.11.10)
ベトナム出身の起業家、ドゥツク・ドバ(Duc Doba)さん。タンホア市生まれ。ハノイ国家大学IT学部を卒業したあと、ソフトウェアエンジニアとして来日。楽天、LINE、ソフトバンクなど大手テクノロジー企業で12年間、IT開発サービス研究開発に従事。日本でのSB Cloud (Alibaba Cloud)サービスの立ち上げに貢献した。2017年に9月に日本の深刻なIT人材の需要と供給のギャップを埋める事業をめざすTokyo Techiesを起業しCEOに。従業員はベトナムと日本側で合わせて35人。在日ベトナム青年学生協会(VYSA)会長も務めた。
 ベトナムの学生時代に縁あって日本企業に就職、いくつかの企業で研鑽を続け、実績も上げた経緯を、現場で覚えたという達者な日本語で、笑顔とともに話してくれた。IT技術者養成事業を日本で立ち上げた動機には篤志家の俤も。

・第11 回(2020.11.30)
セネガルから留学のアストゥ・ンジャイさん。あしなが育英会の高校留学プログラムに合格し、2016年~2019年の3年間は仙台育英学園で過ごす。卒業後、「アフリカ遺児高等教育支援100年構想」の奨学生として東京国際大学に進学。現在2年生で、経営学・マーケティングを専攻している。
公用語のフランス語、民族語、英語、日本語を話し、スペイン語、朝鮮語も勉強したという。「英語でテストがあると、私が85点ぐらいでも日本人は100点取ったりするけど、話すのはちょっと苦手」。グローバル人生としては、明るく前向きに生きる彼女に対し、日本の若者はかなり後れを取っているようである。

・第15回(2021.3.4)
  第2回にご登壇いただいたチャントゥチャンさんの紹介でベトナム在住の女性にスピーカーをお願いしていたが、現地の回線状況の関係でアクセスできなくなり、代わって3月にはシンガポールに転勤する予定のチャンさんに、在日10年の思い出や職場の国際的な顔ぶれ、今後の仕事などについて話を聞いた。まさに世はグローバル時代であることを実感させられた。

・第16回(2021.3.26)
ベトナムのブイハン(BUI THI THUY HANG)さん。2009年、ハノイの貿易大学入学。2011年、文部科学省の奨学金で日本へ留学、東京外国語大学日本語教育センターを経て2016年、一橋大学経済学部卒業して日本企業に入社。その後Warwick Business School大学院(イギリス)を卒業し、2020年ベトナムに帰国、現在は現地企業のプロジェクト品質管理に所属。
 第2回に登壇してくれたチャントゥチャンさんの紹介。ハノイの大学の同窓だが、同じ奨学金で留学後に日本で知り合ったとか。奇しくもご両人とも卒業後は医療関係の仕事に従事している。当日はチャンさんも参加してくれ、日本とベトナムの教育、医療関係の話題などで大いに盛り上がった。

・第18回(2021.4.3)
ベトナムのレマイフォン(Le Mai Phuong)さん。ハノイの貿易大学卒業後、一橋大学経済学部卒、現在は大阪大学経済学研究科博士課程在学中。
経済学に心理学を導入した新しい学問、行動経済学を研究しているというだけあって、テレビ番組に題材をとった日本人の東西比較(関東人と関西人の性格や習慣分析)から始めて、ベトナム人と日本人との商習慣の違い、実のある交流を促進するための技術など、「このところ日本語はあまりしゃべっていないので」と謙遜しつつ縦横無尽に展開する話に、質問攻めにあったシニアたちはタジタジとなりつつも、2時間近い授業は笑いが絶えなかった。

・第19回(2021.4.14)
ベトナムのグエンミンフェ(NGUYEN MINHHUE)さん。高校を卒業してすぐ日本に留学、町田市立看護専門学校を卒業して正看護師国家資格を取得、「勉強好き」(本人の弁)が高じてか、続いて放送大学教養学部卒業、さらに東京大学大学院創成科学研究科博士課程でメディカルゲノムを専攻した。JAXA(宇宙航空研究開発機構)などを経て、現在は日本の製薬会社勤務。   すごい知力とバイタリティ。その間に修得したペラペラ、かつ早口の日本語で、医療から見たベトナムと日本の違いなどについて、しじゅう笑顔で話してくれた。「Zoomのチャット機能を使って質問してくれれば、後からまとめてお答えします」と、Zoomの使い方指南もしていただいた(^o^)。

<Onlineシニア塾2020忘年会>

 12月16日、13人の仲間参加のもとにバーチャル忘年会を開きました(1人遅刻)。


 冒頭、フィリピン在住の鮎澤優さんの波乱万丈の半生を語っていただいたあと、Onlineシニア塾に参加しての感想や今後の運営に対する提案などを話し合いました。Onlineシニア塾は新年も月2回程度のペースで進める予定です。少しずつ講座も広げていければと考えています。参加希望者は<Onlineシニア塾への招待>をご覧いただいたうえ、<info@cyber-literacy.com>までご連絡ください。

講座<気になることを聞く>

・第12 回(2021.1.31)トランプ大統領によってあぶりだされたアメリカ社会の亀裂①

 在米数十年の翻訳家、宮前ゆかりさんにトランプ米大統領の4年とその退陣の混乱を通して浮かび上がったアメリカ社会の亀裂について聞いた。コロラド時間の30日午後9時からということで、日本時間は31日(日曜)午後1時からと変則的になったが、十数人の参加のもとに新講座<気になることを聞く>が無事スタートした。
 冒頭、1月6日のワシントンDCで反乱を起こした人々がParlerというアプリで内部の様子を撮影してアップロードしたビデオをProPublicaが時系列でまとめた動画の一部(写真は午後3時ごろの状況)を視聴した(担当/森治郎・矢野直明)。
宮前ゆかりさんはコロラド州ボルダー在住。フリーランスのリサーチャー、翻訳家。TUP(平和をめざす翻訳者たち)メンバー。ボルダーの独立非営利ラジオ局KGNUでニュース番組や音楽番組を手がけるプロデューサーでもある。元ナイトリッダー新聞社メディア研究員。訳書にダニエル・エルスバーグ著『世界滅亡マシン:核戦争計画者の告白』(共訳:岩波書店)、グレッグ・ミッチェル著『ウィキリークスの時代』(岩波書店)など。米国の市民運動に関する複数の記事を月刊『世界』に寄稿している。
 このセッションは引き続き開催する。

・第17回(2021.3.28)トランプ大統領によってあぶりだされたアメリカ社会の亀裂②

 今回のアメリ大統領選でバイデン候補が獲得した選挙人は306人、トランプが獲得したのはのは232人と、大差がついたようだが、投票状況を共和党(ブルー)と民主党()でカウンティ(郡)単位で図示すると、全体にパープル()模様になる(USA Today)。
  ここには共和党、民主党と支持を明確に決めきれない有権者の現状が反映されているとも言えるが、宮前さんによると、アメリカの選挙制度自体に複雑な歴史があり、黒人などの有色人種や移民などのマイノリティの人びとが投票しにくいように改変されて来ているのだと言う。つい最近も、ジョージア州で共和党の知事によって、選挙制度を厳密に運営する(「不正を防ぐ」)との大義名分のもとに、投票所(投函箱)の数を減らす、公共機関のバスなどでは行けない遠いところに設置するなど、現実には底辺の人びとが投票しにくくなる選挙制度改正案が成立している。
 これが、トランプ大統領が今回の選挙を「不正」だと攻撃し、共和党支持者の多くがそれを信じているという、日本では信じられない状況の背景である。今回は、選挙制度と銃規制をめぐるアメリカの建国以来の歴史について興味深い話を伺った。

銃規制と選挙制度と建国の精神  授業直前の3月22日に、私の住んでいるコロラド州ボルダーのスーパー内で無差別銃撃事件が起き、知り合いも含む買い物客や店員など一般市民10人が殺されました。
 ボルダーは、歴史的にも先進的な自治政策と平和運動の拠点として知られており、2018年に独自の襲撃銃禁止令を採択しましたが、NRA(全米ライフル協会)の訴訟をきっかけに、事件の10日前に州の裁判官が襲撃銃禁止はコロラド州法に違反すると裁定を下したばかりでした。犯人は21歳のシリアからの移民で、動機は明らかになっていませんが、以前にも暴力事件を起こしたことが知られており、精神的に不安定だったにもかかわらず身元調査も受けずに、事件の6日前に襲撃銃を手に入れています。
 アメリカでは、建国当時の有権者である白人地主階級が、先住民の土地の略奪と奴隷労働の搾取によって富を築いてきた歴史があり、その利権が結局は軍部や警察の肥大に貢献し、銃を保持する権利の根拠である憲法修正第2条(規律ある民兵団は、自由な国家の安全にとって必要であるから、国民が武器を保有し携行する権利は、 侵してはならない)を産み、それは同時に選挙権を抑圧する法律を支えてもきたのです。
 アメリカ建国以来の2つの理念、企業による富の集中を重んじる中央集権的考えと、地方の独立した農林業に重点を置く権力分散型の考えは、その後の歴史で変質、あるいは重複、錯綜しながらも、現在の民主党と共和党の対立に受け継がれています。
 一見唐突に見えるトランプ台頭や全米に吹き荒れる白人至上主義拡大は、歴史的必然とも言えるのです(M)。

・第13 回(2021.2.10)ミャンマーの軍事クーデターで苦悩する日本在住の若者たち①

 本講座<気になることを聞く>第2回(通算13回)は急遽、軍事クーデターの起こったミャンマーの若者、6人を招いて10日午後8時から2時間開催した(担当/星野真波)。
 2月1日のクーデターから10日、ミャンマーではヤンゴンなど主要都市で数万人規模の抗議デモ(軍事政権不服従運動、指3本の表示がシンボル)が行われているが(写真はフェイスブックから)、日本でも先日、外務省前に在日ミャンマー人、約3000人が集まって軍事政権への抗議の声を伝えている。

 当日は6人の若者(女4、男2。20~27歳)が日々の不安な生活の実態やミャンマー民主化を取り戻すための決意などを話してくれた。
 Onlineシニア塾はコロナ禍の自粛生活の中で、インターネットというツールを使ってシニア相集い、世代を超えたグローバルなコミュニケーションを行いたいと始めたものだが、激動する世界の息吹を身近に感じ、また日本人として何をすべきかというある種の責任についても考えさせられる機会となった。
 若者たちは「ミャンマーで起こっている事実を知ってほしい。ミャンマーの民主化のために日本の皆さんにもご尽力をお願いしたい」との強い気持ちから、故国の肉親の安否さえ心配な中で参加してくれた。それにしても、日本語が達者であるばかりか、自分の考えを堂々と開示できるすばらしさ。参加者からは異口同音に驚きの声が上がった。
 このセッションも適宜、開催する予定。

民主主義を守ろうとする社会の「粘り」 ミャンマー国会の8割以上の議席をNLDが占めながら軍事クーデターを許してしまった背景には、民主主義を守ろうという社会全体の「粘り」が薄れつつある世界共通の状況があるようにも思われる。アメリカしかり、日本ももちろん例外ではない。軍事政権はミャンマー国内ですでにインターネットを遮断、逆に、アメリカでは一IT企業たるツイッター社がトランプ大統領のアカウントを停止し、政治の動きに大きな影響を与えた。サイバーリテラシー的にもいろいろ考えさせられる昨今である(Y)。

「軍事政権不服従運動」 日本在住のミャンマーの若者たちと初めて話をした時、異口同音に「ミャンマーで起こっている事実を知って欲しい」と訴えていたのが印象的でした。その言葉には、事実が伝わらずに世界から見放された結果、暴力による支配に陥った時代には戻るまいという決意が込められていたからだと、今回の議論を通して感じました。 日本人の常識やこれまでの報道からは推し量りにくいミャンマーという国の背景や、人々に共有されている感情を汲み取るためにも、直接話を聞く意義を確認できる機会にもなったと思います。
 また彼らが最も伝えたかったこと一つである、「クーデター以降72時間は事態を静観したのと、デモが全国規模で平和的に展開しているのは、軍部側に民衆が暴徒化したという武力鎮圧の口実を与えまいという総意によるもの」だという話も、多くの人に丁寧に伝えられてほしいと思います。彼らは「軍事政権不服従運動」という言葉を使っています。
 ミャンマーと日本との深く、そして、複雑な関係にも話が及びました。彼らにも不安な思いが募っていると思いますが、思い描く進路、将来に向かって活躍できるよう、日本人としてできることを考え、不安な思いの中、話をしてくれた勇気に応えていきたいと思っています(H)。

・第14 回(2021.2.20)巨大地震などに備える燃料電池(災害時の非常用電源)について開発の現状を聞く

<気になることを聞く>第3弾(Onlineシニア塾通算14回)は、災害に備えた非常用電源ということで、自動車産業が先端的に取り組む燃料電池などの開発について、若い研究員、伊東直基さんに話を聞いた.(担当/松浦康彦)。
 冒頭、担当者から日本を取り囲む4大プレート(北米、ユーラシア、太平洋、フィリピン海)の説明と、東日本大震災より一桁大きな南海トラフ巨大地震が2035年±5年のうちに起こるという学者の警告などの報告があり、富士山大爆発も含めて非常用電源を準備しておく必要性が強調された。それを受けて自動車企業の研究部門で燃料電池などの研究開発に携わっている伊東さんの話を聞いた。
 活発な議論が展開され、燃料電池の利用は車に限った話ではなく、家庭用電源としての利用なども考えるべきではないかと、本来なら研究所長や社長に向けられるべき質問も飛んだが、新入社員が研究所長や社長に成り代わって日本社会の、ひいては世界の将来を考えるべき時代なのかもしれない。
 伊東直基さんは1993年生まれ。首都大学東京大学院で電磁環境工学研究室に所属し、電気自動車用ワイヤレス電力伝送装置の漏洩磁界のシミュレーションを実施。大学院卒業後は関東にある自動車メーカに就職し、充給電ユニットの開発に従事している。

 花見と直基とときどき松浦 コロナ禍の冬も終わり、急に春らしい季節になった。私は『ASAHIパソコン』を創刊した1988年から裏山の源氏山で毎年、見ごろの日曜日を選んで花見の宴をはってきた。多い時には100人ほどの参加者があり、紅白の垂れ幕を背に、敷きつめたゴザの上で女装した芸人が舞ったり、カラオケに興じたりした。雨の日は我が家に集まって花より酒の宴となり、花冷えの夕方もやはり我が家で二次会をした。つい最近まで30年以上続けてきたが、花も参加者も高齢化し、つい数年前に打ち切った。
『ASAHIパソコン』草創期にアルバイトとして3人の学生が手伝ってくれていたが、彼らは毎年、花見にも参加、そのうち彼女を連れてくるようになり、ほどなく結婚、そのうち親になった。子どもたちの中で同い年の男の子2人はすっかり仲良くなり、年に1度の出会いを楽しみにしていた。彼らは満開の桜の下でも、花吹雪の中でも、雨に打たれる花びらの上でも、ほとんど花には背いて、ゲームなどに興じていた。時がたち、2人は社会人になり、それぞれ自動車関係の会社に就職した。そのうちの1人が今回、花見の義理に背かず、講師役を買って出てくれたわけである。今回の授業を担当した松浦氏も花見後半の常連だった。
 金も組織もない「バーチャル井戸端会議」である我がOnlineシニア塾が、よって立つのが個人的なつながりだということを示すエピソードとして、この話を記した。インターネット上に半ば開かれ、半ば閉じた空間(トポス)が、IT社会のオアシス、あるいは核になる可能性に触れておきたかったからである(Y)。

特別講座<もっとZoom、初めてのSlack>

・第20回(2021.4.21)
 新たに特別講座を設けました。通常講座とは別に、ときどきの話題などを取り上げると同時に、Onlineシニア塾の「オープンキャンパス」として、従来の会員以外にも広く参加を募ります(info@cyber-literacy.comまで)。
 特別講座第1回として、Zoomのより便利な使い方ガイドと、Onlineシニア塾としても導入を始めたコミュニケーション・ツール、Slackの紹介を行った(担当/星野真波、西岡恭史、高橋慈子)。
もっとZoom
 Zoomをより効果的に利用するノウハウの紹介と「ブレイクアウトセッション」の体験。Onlineシニア塾ではまだ参加者が少なく、分科会を同時開催する必要はあまりないが、将来に備えて(^o^)。
初めてのSlack
 Slack(スラック)は2013年に開発されたチーム・コミュニケーション・ツールで、またまくまに世界中に波及、もはや多くのIT企業で必須のコミュニケーションツールとして使われている。Onlineシニア塾でも遅まきながら導入、事務連絡をはじめ授業前の情報交換、授業後のさらに掘り下げた議論などに活用したい。とくにスピーカー同士の交流に威力を発揮するのでは(ベトナムのチャンさんやレマイさんも参加)。

Online塾DOORSへの招待

ネットのオアシスを求めて

 Onlineシニア塾は2周年を迎える2022年5月に名を<Online塾DOORS(略称OnDOORS)>に改めました。当塾は朝日新聞OBが2020年春、収束しそうもないコロナ禍の蟄居する日々の中で、時代に取り残されないようにとしこしこ始めた「Zoom勉強会」が発端で、オンライン・ミーティングツール、Zoomを使ったコミュニケーション塾としてスタートしました。これまで40回近い授業を続ける中で、授業内容も参加者も当初のシニア本位の枠を離れて、よりグローバル、より多世代交流的なものに発展してきました。国境を越え、世代を超えた<Online塾DOORS>の誕生です(なお、本ウエブの従来の活動履歴などには、これまでの名称、Onlineシニア塾をそのまま使っています。ご了承ください)。

これまでの講座はPARTⅡで講座別に梗概を紹介しています。

PARTⅠ<若者に学ぶグローバル人生>
PARTⅡ<気になることを聞く>
PARTⅢ<とっておきの話>

<若者に学ぶグローバル人生>は海外から日本にやってきた外国人留学生や逆に海外で活躍している日本人の若者から話を聞くものです。
<気になることを聞く>はメンバーが日ごろから気にしている話題、あるいは最近のニュースなどに関してその道の専門家や当事者、研究者などから話を聞いています。すでにアメリカ最新報告、ミャンマー問題を考える、レオナルド・ダ・ヴィンチ天才の証明などの授業を行っています。
<とっておきの話>はメンバーが取り組んでいるか、あるいは取り組んできたテーマや趣味などについては話し合い、メンバー相互の交流を促進しようというものです。

インターネット黎明期の雑誌『DOORS』

 2022年5月現在、新聞社OB、ライター、編集者、IT起業家、日本語教育従事者、大学関係者、主婦など30人以上が参加、在日50年の米国人修道女やフィリピンで活躍する起業家もいます。<若者に学ぶグローバル人生>では、すでに中国、ベトナム、ミャンマー、タイ、インドネシア、ネパール、ラオスといったアジア諸国やセネガル、ナイジェリア、シェラレオネなどのアフリカ諸国から20人以上のスピーカーに参加していただいています。

 これから世界に大きく羽ばたこうとしている若者、すでに社会の一線を離れ、組織との縁が薄れたとは言うものの、心理学者、ユングが言う「人生の午後」を有意義に過ごしたいと思っている人、伊能忠敬の「一身二生」を生きようと考えている人、さらに言えば、藤沢周平の描く三屋清左衛門のように「日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ」を実感している人々などなど、さまざまな境遇の人びとがお互いを隔てている扉を開け放ち、広い世界に飛翔できるOnline塾DOORSであってほしいと思います。

 私はインターネット黎明期(1995年)にその情報誌『DOORS』を創刊し、紙のメディアである雑誌、電子メディアとしてのCD-ROM、オンライン雑誌としての「OPENDOORS」の三位一体メディアをめざしたことがありました(OPENDOORSはマスコミ最初のオンライン雑誌でした)。

 今回、創刊2周年を前にメンバーで話し合った結果、DOORSの新装復活となった次第です。私はパソコン黎明期(1988年)にパソコン使いこなしガイドブック『ASAHIパソコン』も創刊していますが、そのコンセプトは「すべての人がパソコンを使うことになる時代のやさしいガイドブック」で、あの時も一般のユーザーにターゲットを定めていました。

 インターネットがいよいよ私たちの生活に浸透するようになった時代のOnline塾DOORSに多くの人が参加してくださることを期待しています。

半ば開き、半ば閉じたオアシス

 パーソナルメディアの雄、SNSも「SNS疲れ」ではありませんが、一時の勢いは衰え、新たなメディアの曲がり角だとも言われています。かつてセカンドライフとして話題になったネット上のバーチャル空間でのビジネスがメタバースとして脚光を浴びてもいます。

 これからは、社会に常にむき出しになった場ではなく、インターネットを使っているのだが、完全には開かれていない半開半閉の「新たなトポス」が見直されるのではないでしょうか。

 この種の場は、〝古くは〟パソコン通信、最近でもメーリングリスト(ML)などがあったわけですが、Zoomもまた現実世界の生き方をより豊かなものにするための場として機能することが可能だと思います。

 朝日新聞の先輩でもある名文記者、深代惇郎を扱った後藤正治『天人』に、深代の青春日記にふれた箇所で、(彼は)「ドイツにおける時代状況を見詰め、マスコミの果たした役割を考察している。ナチズムがマスコミを支配しつつも数人の集まりを警戒したことを取り上げ、小さなコミュニケーションの意義を強調している。学生らしいというべきか、『それは小さなレジスタンスであるが、最も大切なレジスタンスである』と生硬な言葉で論考を締め括っている」とあります。

 深代流に言えば、こういう市井の小さなコミュニケーションの場を広げることに<Online塾DOORS>の意義もあると考えています。

<Online塾DOORSの概要>

・メンバー資格
 ウエブ<サイバー燈台>上の招待文を読んで参加を希望する人は、事務局(info@cyber-literacy.com)か矢野まで申し込めば、簡単なプロフィルを提出していただいたうえで、基本的に参加を許可する。日本語を主な言語として使用しているが、年齢、性別、国籍の制限はない。会費は当面無料である。スピーカー(講師)を務めてくれた方は、自動的にメンバー資格を得る。

・メンバー心得
 Online塾DOORSを通して活動の幅を広げるとともに、何らかの形で社会貢献することを考える。完全なボランティア活動なので、スピーカー発掘、参加者の拡大、新たな授業計画など、率先して会の運営に協力する。入会と同時にslackにも参加し、会員間のコミュニケーションに役立ててほしい。若いスピーカーには新風を、シニアの方には昔とった杵柄で若者に助言を与えるなど、塾に積極的に貢献することを期待している。

・ゲスト
 ゲストとして、毎回参加するのではなく、興味のある会だけ参加することも可能である。また時々開催する特別講座は、大学の「オープンキャンパス」のように広く参加者を募っているので、まずゲストとして参加していただくのもいいだろう。参加希望者は名前とURLを添えて事務局に申し込めば、当該授業への参加が許可される。

・サイバー燈台
 Online塾DOORSの活動はウエブ<サイバー燈台>で逐一報告される。
 それぞれの授業においてはスピーカー紹介、話の概要、エピソード、感想、みんなに知らせておいた方がいい知識などを適宜編集して公開、一般の人が当塾に興味を持ってくれるように心がけている。メンバーの寄稿も歓迎している。

2022年5月 Online塾DOORS・矢野直明