新サイバー閑話(45)

新サイバー閑話再開

 お久しぶり。新サイバー閑話1年余ぶりの再開です。

 もっともここ1年は<Zoomサロン>でOnlineシニア塾活動の報告を行ってきたので、<サイバー燈台>の活動は続けてきました。それはともかく、この激動する社会のただ中で、本流の<新サイバー閑話>のコラムも再開しようと思います。

 とりあえず2つの報告から。

<1> 東山明『健康を守り 老化を遅らせ 若返る』の出版

 インプレスのネクパブ・オーサーズプレスを利用して東山明『健康を守り 老化を防ぎ 若返る』(サイバーリテラシー研究所)を出版しました。

 これはプロジェクト・コーナーの東山明「禅密気功な日々」を再編集して書籍化したものですが、やはりオンラインと書籍との違いもまた明瞭なようです。このシステムを利用すると、やや割高になりますが、自分でWordだけで編集して、それが本になりアマゾンから出版されるというのは、やはりありがたいです。

 私は2009年に『総メディア社会とジャーナリズム』(知泉書館、大川出版賞受賞)を出し、「総メディア社会におけるジャーナリズム」のあり方を考察したことがありますが、当サイバー燈台の情報発信とともに、今回のように、そこにある原稿の書籍化もまたその実践だと考えています。

 ご興味のある方は、ぜひアマゾンでご購入ください。都内神田の三省堂書店などでも販売されます。
健康を守り 老化を遅らせ 若返る | 東山明 |本 | 通販 | Amazon

 なお本書は<サイバー燈台叢書>第1号です。「サイバーリテラシー研究所」を出版元に、これから同種の書物発行を続けたいと思っています。とりあえず私が雑誌『広報』で連載してきたコラムのバックナンバーや、Onlineシニア塾の記録などを再編集することを考えています。

<2>Onlineシニア塾の発足と拡大

 本ウエブ「Zoomサロン」をご覧いただければ一目瞭然ですが、昨年5月からOnlineシニア塾を開設しています。

 講座<若者に学ぶグローバル人生>、<気になることを聞く>、<とっておきの話(近く開設)>の3本柱でこれまでに25回の授業を開きました。<若者に学ぶグローバル人生>では中国、ベトナム、ミャンマー、ネパール、タイなどのアジア諸国やナイジェリア、シェラレオネ、セネガルなどアフリカ諸国の若者などの話を聞き、ほかにミャンマー支援をめぐる討議、アメリカ最新授業報告などの授業も行っています。

 メンバーはメディア関係者、日本語教育指導者、IT起業家、IT専門家、教育関係者、学生など30人近くになります。10月には東京新聞神奈川版で紹介もされています。

 シニアばかりでなく若者のメンバーも増えつつあります。ウエブ上の「Onlineシニア塾への招待」の趣旨に賛同してくださる方は、簡単なプロフィルを送っていただくだけで無料で参加できます。ご興味のある方はinfo@cyber-literact,comまで。

東山「禅密気功な日々」(24)

辛いほど頑張る必要はない

 人体の筋肉を大きさ順に並べると、だいたい以下のようになる。説によって、一部順位の入れ替わりがあるようだが、だいたいこんなところだと考えていい。

大腿四頭筋 
大臀筋
三角筋
ハムストリングス
大胸筋
上腕三頭筋
腓腹筋
広背筋
僧帽筋
上腕二頭筋

 上位に大腿四頭筋とハムストリングス(ももの前後)および大殿筋(尻)が並んでいるように、下半身に全身の7割の筋肉がある。上半身で大きいのは左右の肩にある三角筋、ついで大胸筋である。背中の広背筋と首筋にあたる僧帽筋は意外に小さい。上腕の三頭筋(陽面)と二頭筋(陰面)もトップ10に入っている。

 鍛えやすく、また大きくなりやすいのは大胸筋、三角筋、上腕二頭筋、大腿四頭筋、大殿筋と言われるが、高齢トレーニングでは筋肉の増強自体を目指す必要はあまりない(二次的にはともかく)。老化は足からとも言われるが、高齢者にとっては、下半身を鍛えることがとくに大事である。気功でも下半身に気血をめぐらせることはできるが、自分の体重を負荷とするウオーキングは格好の運動である。私は毎朝、蠕動のあとステイショナリーバイクに乗っている。

 一方で日常作業を円滑に行うために鍛えておかないと具合が悪い筋肉がある。手首と足首はその筆頭である。ちょっと重いもの、ポットなどを持った拍子に手首をひねったり、くじいたりする。また石に躓いたわけでも、段差のある場所でもないのに、足首を捻挫することがある。健康寿命を維持するための手首、足首の筋トレはけっこう大事である。

・トレーニングの敵は風邪とけが

 高齢トレーニングは持続することが命である。翌日体の節々が痛くなるまでやるのは、その日は充実感を得られるかもしれないが、痛みが長引いて長続きしない結果にもなる。

 持続を妨げるのは風邪とけがである。風邪は寝込むというほどでなくても、あらゆる事柄への意欲をそぐのがいけない。せっかくトレーニングを始めたのに風邪をきっかけでやめてしまう例はよくある。

 寒い時は厚着し、外出を控えるなどして予防する。やっかいなのは夏の列車、オフィス、レストランなどの冷房である。日本の冷房は効きすぎていると思うが、あるいは若者向け仕様のためかもしれない。いくら屋外が暑くても、室内用の上着を忘れないようにする。

 過度に負荷をかけたり、不自然に体を動かしたりすると、すぐけがをする。インストラクターの知人がこんなことを言っていた。「傷をつけることで筋肉は大きくなるが、キズとケガは違う。ケガをしない心がけが大事である」。高齢者にとってけがはまさに大敵である。いったんけがをすると、治るのに時間がかかるから、これも、それっきりトレーニングをやめることになりがちである。運動前後のストレッチは不可欠である。

 軽い負荷で丁寧に、鍛えたい筋肉を動かしていれば、しだいに力がついてくる。そうすると、最初のころの辛さが楽しみに変わる。菩提寺でもらった小冊子の表紙に「苦しみがなくなるのではない。苦しみでなくなるのだよ」と書いてあったが、これは高齢トレーニングにも応用できる。

 映画女優のオードリー・ヘップバーンは「人には誰にも愛する力がある。しかし筋肉と同じように、使わないと衰える」と言ったらしい。愛は高齢者にとっても魅力的だが、ここは愛よりも筋肉を鍛えることを優先しないといけない。

Onlineシニア塾報告②<2021.5~>

 Onlineシニア塾は開講してちょうど1年の節目にあたる2021年5月、特別講座「ミャンマー問題を考える」で21回を迎えました。これを機に、以後の授業はページをあらため、この「Onlineシニア塾報告②<2021.5~>」に掲載します。これまでの講座<若者に学ぶグローバル人生>第19回までと、<気になることを聞く>の第4回まで、さらに特別講座<もっとZoom、初めてのSlack>は、「Onlineシニア塾報告①<2020.5~2021.4>」をご覧ください。なお、今回からは新しい授業が上に来るように、ウエブの通常編集通りに掲載します。

講座<若者に学ぶグローバル人生>

第25回(2021/8/29)
 中国のジャンミャオさん(Jiang Miao)。清華大学卒。2015年に清華大学-東京工業大学合同プログラムで初来日。2017年に清華大学「材料科学と工学」と東工大「電子物理専攻」から修士ダブル学位を取得して卒業。東京大学で博士後期課程に入って研究を続ける。研究内容は半導体に関する新型メモリ技術。2020年に東大「電気系工学」から博士学位を取得して、日本学術振興会特任研究員として東大で働いている。
 一時は半導体部門で元気だった日本もいまは停滞気味、世界のシェアは圧倒的に台湾に握られているのだとか。ジャンさんはその最先端で研究を続けており、その現状を丁寧にやさしく説明してくれた。参加者からは「超優秀大学・精華大学から日本の大学への留学で、指導教授も良く、研究設備も良い環境で充実した研究を続けておられ嬉しいです!どうか日本の研究仲間と親しくなって国を超えて世界に貢献できる研究を展開してください。世界平和に貢献できる成果を期待しています!」との感想も寄せられた。

講座<気になることを聞く>

・第24回(2021.6.13)トランプ大統領によってあぶりだされたアメリカ社会の亀裂③

 バイデン大統領誕生からすでに半年近くたつが、トランプ前大統領の共和党内の人気はいぜん衰えていない。反トランプの急先鋒だった共和党議員団のナンバー3だったリズ・チェイニー議員は更迭され、共和党は前大統領との関係を今後も維持する構えである。トランプ氏は3月の全米規模の保守系イベントの集会であいさつ、次期大統領選への出馬もほのめかしている
 ここに一つのデータがある。5月下旬の段階で、共和党員に「議会占拠の責任はだれにあるか」と聞いたら、「トランプ」や「共和党」よりも、「民主党」と答えた人が一番多かった(The Economist)。「トランプ大統領によってあぶりだされたアメリカ社会の亀裂」は、いよいよ混迷の度を加えているようにも見える。そういう状況を受け、本授業も4年後を視野に入れつつ、少し長期的に話していただくよう宮前さんにお願いしている。

講座<若者に学ぶグローバル人生>

第23回(2021.5.29)
タイのドゥアンケーオ・スットプラータナー(Sutpratana Duangkaew )、通称リボンさん。タイ北部のチェンマイ出身。2007年に1年間琉球大学に短期留学し、2013年~2016年、文部科学省の奨励金を受けて琉球大学大学院(博士後期課程)を卒業。その後、タイのスズキモータースで通訳、東京の日本企業の海外部正社員として勤務。タイと日本を架け橋する活動として、2011年からのタマサート大学大学院時代にアジアの新しい風(Iメイト)に参加し、現在もOBとして活動を続けている。現職はタイ・マヒドン大学で日本語・日本学の講師。
 日本の留学先が沖縄で、日本人以上に沖縄通になり、空手など沖縄の文化に親しむなど、多彩な活動に取り組んできた。明るく真摯な人柄で、始終笑顔を絶やさず、日本とタイの風俗の違い、生き方の違いなどについて話してくれた。最後に「いろいろ不満があっても、文句を言うことはやめて、コツコツと自分の得意分野を生かしながらタイの発達に尽くしたい」と決意を話してくれ、多くのメンバーの共感を呼んだ。

第22回(2021.5.9)
中国のジーイーさん。北京大学を卒業後に来日して東京大学修士課程を修了、2年前から日本の求職検索サイトでシステムエンジニアとして働いている。2020年からは東大社会人博士コースでIT関係を学んでおり、その課題は「顔画像の対抗学習サンプルの検知と復元」とか。
 語学が趣味で早くから英語のほかに日本語を学習、多文化を経験したい、空気がきれいで安心できる場所、母国からあまり遠くない国といった周到な〝検索〟の結果、日本が選ばれたようだが、すっかり日本が気に入ってくれた様子だった。細かい検索システムについての「講義」もあり、我が聴講生たちも技術的質問を繰り出し、充実した授業となった。

アジアの新しい風 ジーイーさんは「アジアの新しい風」の上高子さんに紹介していただいた。通称「アジ風」はアジアの日本語学習者への支援や文化交流などを行い、相互理解を深めながら、アジアの平和、ひいては世界の平和に貢献することを目指しているNPO法人である。もう十数年の歴史があり、アジ風のお世話になった留学生も多い。いまは中国(清華大学)、タイ(タマサート大学)、ベトナム(貿易大学)、インドネシア(パジャジャラン大学)と交流している。
 趣旨に賛同してくれた会員の日本人が「Iメイト(愛メイト)」になって、留学生と一対一の関係をきずきながら支援の輪を広げており、逆に世話になった学生たちが今度はアジ風の運営にも協力するという、まことにすばらしい民間外交が繰り広げられている。奨学金支給や交流大学への日本語教師派遣なども行っているという。Onlineシニア塾で登壇していただいたベトナムのチャントゥチャンさんやジーイーさんは、そのサポーターでもある。
 本授業の前日にやはりZoomを使って行われた「春のIメイト交流会」は100名を超える盛況だった。Onlineシニア塾当日には、上さん、奥山寿子さんなど5人のアジ風関係者が参加してくださった(Y)。

特別講座<ミャンマーへの支援を考える>

第21回(2021.5.8)
  特別講座<ミャンマー問題を考える>は<気になることを聞く>第13 回(2021.2.10)「ミャンマーの軍事クーデターで苦悩する日本在住の若者たち」に続くものだが、特別講座として、より広く参加者を募って行った(担当/星野真波ほか)。ミャンマー人の若者(社会人)からは軍事政権とアウンサンスーチー国家顧問が率いるNLDとの長い抗争の歴史が説明され、ヤンゴンに滞在中の日本人企業家、後藤信介さんから現地の状況も報告していただいた。当日の参加は30人余、これまでの授業で最大だった(写真は当日発表の資料から)。


 ミャンマー情勢はいまも激しく動いているが、ミャンマーの人びと、とくに若者たちが命をかけてまで軍事政権に抵抗している背景には、「いまここでひるんではミャンマーの民主化の機運はしぼんでしまう」という強い危機感があるからだと言う。日本人としてどのような支援が可能なのかも、ミャンマーの子供たちの教育的支援などでいくつか提案がなされ、今後ともミャンマーと日本との交流の懸け橋をめざす努力をすることになった。以後は通常講座<気になることを聞く>に戻って適宜開催する予定。

日本に住むミャンマー人は4万人近い 日本にはミャンマー出身者が4万人近く暮らしています(表は在留外国人の数。中国、韓国、ベトナムの順)。その中の5000人強が留学生で、流暢な日本語を習得する人が多く、その話し方から、優しい人柄が伝わってきます。この数年、日本語の指導を通じて接点を持つ機会が増え、今後は日本社会における存在感が高まっていくと思っていた矢先のクーデターでした。
 2月1日の前夜まで、 仕事、勉強、アルバイトに忙しい日々を送り、暇な時間はゲームや動画を楽しむのが日常だったのに、その日から国家の将来像を真剣に考える当事者になっちゃった・・と、発表者の一人が冗談交じりに話してくれました。
 興味のなかった複雑な歴史を学び直し、知り合ったばかりの仲間たちと連携しながら日々活動をしています。 民主化を取り戻すための連帯を呼び掛ける思いが、日本社会へ広がるまでは頑張り続ける覚悟が発表からも伝わってきました。ミャンマーの教育事情は、義務教育を終えられない子供たちの実情を説明するためにも、発表で取り上げたい話題の一つでした。
 ミャンマーの子供たちは、教室で大きな声で発言し、雰囲気を盛り上げ、それを喜ぶ先生を見るのが、嬉しいのだそうです。(日本の学校で、それをされると、少々困るのですが・・)。 学ぶことが好きで、指導者との関係を大切にする彼らの習慣に敬意を払いながら、充実した教育環境の提供の一助となる支援を模索していきたいと思います(H)。

東山「禅密気功な日々」(23)

マイナスからの出発

 以後しばらく、高齢者の筋肉トレーニングと禅密気功(とくに蠕動)について書くことにする。

 高齢になると、使っていない筋肉は確実に衰える。滓がたまっていくからである。軽い負荷でいいから、すべての筋肉をこまめに動かしてやる。精神を集中し丁寧に、ゆっくり、意念を細胞の一つひとつに行きわたらせる。これが高齢トレーニングの要諦である。歳をとればとるほど、実は筋肉トレーニングが大事になる。毎日、食べたり、寝たり、呼吸したりするのと同じように、トレーニングすることを心がけるのがいい。

 若いときに快適に動いていた体が凝り固まったところから始めるのだから、高齢トレーニングはマイナスからのスタートである。位置としてマイナスであるばかりか、ベクトルとしてもマイナスである。1日使わない筋肉は1日分衰える。逆に鍛えれば必ずプラスに反応する。1日トレーニングをして現状を維持できれば、1日の終わりに1日若返ったと考えてもいい。これを10年続ければ、10年若返る理屈である。肉体が日々衰えていくのに抗してトレーニングし、トレーニングによる効果が1日分の老化を上回れば、それは名実ともに若返りとなる。「健康を守り、老化を防ぎ、若返りもめざす」とはそういう意味である。

 使わない筋肉は衰える。逆に、鍛えれば必ず強くなる、というのは多くの専門家が指摘しているが、私の実感としてもそうである。筋肉のピークは25歳頃で、あとはどんどん衰える。だから、平均寿命の80歳まで生きるとして、後の55年間をただ衰えるにまかせているのは、どう考えても得策ではない。前にも書いたが、それは「迂闊」というものである。

・筋トレと禅密気功は健康維持の両輪

 大事なのは凝り(筋肉の滓)ほぐしである。滓がほぐれて邪気を発生するとも、滓が邪気になって体外に排出されるとも言えるが、その滓および邪気こそが「老いの素」である。それが高齢者の頭、首、肩、背、胸、腹、股間、下半身などあらゆるところに蓄積している。肩の凝り、膝の炎症、腹の贅肉、精力減退、顔の渋、いずれも原因は一つだと言ってもいい。

 筋肉トレーニングについて言えば、若いころと歳をとってからではやり方を変えなくてはいけない。若いころは激しい運動をすることでそれらの〝毒素〟を除去できるが、歳をとるともはや無理である。激しい運動ができないこともあるが、まず蠕動で滓をほぐしてからではないと、筋肉を鍛えられない。東洋医学(針灸)の虚実補寫(病邪の実を拭ったあとで正気の虚を補う)はそのことを言っている。

 若い時は意念が不足しても鍛えられるが、歳をとると、意念をともなわない運動はほとんど効果がない。逆に意念を強くすれば、歳をとっても、たくましい、そして弾力性のある筋肉をつくることができる。筋肉トレーニングと禅密気功(とくに蠕動)は、高齢者が健康を維持するための不可欠な両輪だというのが、私の高齢トレーニングに対する基本的な考えである。

Zoomサロン仕掛人

<Zoomサロン>お手伝いします

 コロナ禍の外出自粛生活を機に、これまでバーチャルな会合には興味がなかった人びとも、インターネットで仲間と旧交を温めたり、新しい会話の機会を広げたいと思い始めたりしているようです。従来のカルチャーセンターのような集いをサイバー空間に築こうという動きとも言えます。

 当Onlineシニア塾はそういう背景のもとにパイロット・プロジェクトとして2020年5月に遠隔会議アプリ・Zoomを使って開設しました。これまですでに12回のミーティングを実施してきましたが、その経過のなかで、Zoomミーティングに参加したい、あるいは自分も趣味などのささやかなミーティングを主宰したいと思いながら、いま一歩を踏み出せずにいる人が多いことを知りました。周囲にZoomの懇切丁寧な指導をしてくれる人を見つけるのもなかなか難しい状況です。

 そこでOnlineシニア塾では、このほど<Zoomサロン仕掛け人>稼業を始めました。「元締め」のもとに、Zoom指導の実績が長いOnlineシニア塾IT顧問の西岡恭史が仕事を請負います。

 Zoomは実は扱いやすいソフトで、送られてきた招待状のURLをクリックするだけでミーティングに参加できます。だから参加出来たらほぼ8割がたのハードルを越えたことになりますが、そのハードルが超えられない方も多いようです。だからスマートフォンを使った指導なども行います。またZoomにはいろいろ機能があります。会議を主催するときの便利な機能についても伝授します。

 コンピュータへの習熟度、考えているミーティングの規模などによって悩みは様々でしょう。オンライン上にはすでにZoomマニュアルは氾濫していると言ってもいいですが、それはある程度インターネットになれた若者向けだったりして、ずぶの素人には結局、よくわからないということもあります。当「Zoomサロン仕掛人」はそういう初心者にこそ門を開いています。

 昔、マイカーブームがやってきたころ、「エンジンブレーキはどこで売っていますか」と聞いた人がいたそうです。インターネットに関するそういう初心者もアクセスしてみてください。

 矢野はパソコン黎明期に『ASAHIパソコン』というパソコン使いこなしガイドブックを創刊し、その後は「IT社会を生きる杖」としてのサイバーリテラシーを提唱してきました。広がるサイバー空間を積極的に、かつ賢く利用すると同時に、IT社会をより快適でより豊かなものにするのがサイバーリテラシーの願いでもあります(サイバーリテラシーについては、本<サイバー燈台>の「サイバーリテラシーとは」などを参照してください)。

2021.2.2 <Zoomサロン仕掛け人>矢野直明
問い合わせ info@cyber-literacy.com

 

おもいっきりZoomサロン

 全国津々浦々で呱々の声を上げつつあるZoomサロンの一覧をここに掲載します。こういうユニークなことを始めたといったお便りをお待ちします。また<Zoomサロン仕掛け人>が関与したZoomサロンに関しては、すべてここに掲載させていただこうと思います。

◎2021.7.29 「気候危機とラウダート・シ ~ 母なる地球に愛をこめて」<Zoomサロン探訪記①>

 Onlineシニア塾のメンバーでもあるメリノール宣教会修道女、キャサリン・レイリーさんが主宰して7月29日午後7時から2時間ほど行った環境問題オンライン・セミナーに参加した。「ラウダ―ト・シ」というのは2015年にローマ教皇が環境問題に関して行った回勅(重要なテーマについて教皇が信徒に直接語りかける「手紙」のようなもの)のタイトルである。

 各地の修道院関係者や気候問題に関心をもつ人など60人以上が参加し、基調報告を聞いたあと各地の実情や意見交換を行った。最後のディスカッションまで残った人が40人以上いた。米国のゴア元副大統領が携わり、世界100か国以上で開催されている環境問題に関するセミナー、クライメート・リアリティ・プログラム(Climate Reality Program)の一環でもあり、第1部ではプログラム・リーダーの資格をもつ理学博士、境野信さんが講演した。

 その中で「人新世」という言葉が紹介されたのが印象に残った。地球は地質学的に見て新たな年代に突入したという考えに基づいており、人間の活動の痕跡が地球の全表面を覆いつくした年代という意味である。地表はビルやコンクリートで覆われ、海にはマイクロプラスチックが浮遊し、大気は二酸化炭素で充満している。もはや未開地はないばかりか、人間の活動は全地球を覆うに至った。

 それは同時に人間の経済活動が地球を食いつぶしていることを意味する。新自由主義経済はすべてを市場に取り込み利潤の糧とし、人びとの精神や魂まで切り崩しているが、今や地球危機そのものが私たちの生き方を抜本的に改めることを迫っているわけである。 

 私たちは今何をすべきか、というのがセミナーのテーマで、2050年までに二酸化炭素排出量をゼロに抑えるための政治的課題とは別に、私たちが日常的に二酸化炭素放出を減らすためにできるものは何かと言った身近な提案も行われた。境野さんによれば、化石燃料で飛ぶ飛行機に乗るのも、なるべく控えた方がいいのだとか。

 コロナ禍のもとで強行された東京オリンピックでは不祥事が頻発しているが、オリンピック関係者用に調達された食糧の大量廃棄をどう考えるべきか。このような無駄を何の痛痒も覚えずにやれるようになっている現代人の感性をこそ問題にすべきだと、突然、発言を求められて、私はまとまりのない感想を述べた。

 最後にキャサリンさんが、「前回は20人規模の参加者だったが、今日はその倍以上。少しずつ仲間を増やしていくことが力になる」と述べ、事務局の水谷安江さんは「講演依頼があればどうぞ」と呼びかけていた。

 たしかに。こういうZoomサロンをもっと広げていくべきである。だからこそ、Onlineシニア塾にも多くの人に参加してもらいたいと、我田引水的に思ったわけでもある(Y)。

 なお次回セミナーは10月13日19時からだそうです。希望者はcommon.home5292021@aol.comまでメールを。

<探訪先を探しています。ご連絡いただけると幸いです>

◎2021.1.9 『探見』の会「江戸城おもしろ史―天守再建ができたら」

 Onlineシニア塾の主要メンバーでもある森が主宰する『探見』の会(メールマガジン『探見』を毎月発行、読者1000人)が、従来実施してきた現地見学会や講習会を自粛せざるを得なくなって、急遽、オンラインで行なった。40人以上の申し込みがあり、今回の講師は、江戸城天守を再建する会会長太田資暁さん(太田道灌の子孫)。 私もZoomサロンを主宰するのは初めてで、西岡恭史仕事人に助力をあおいだ。パワーポイント画面80枚以上を駆使した太田さんの講演はスムーズに運び、その後の質疑応答、意見交換も大盛況だった。まさに「案ずるより産むが易し」というのが〝大仕事〟を終えたときの感慨だった。(『探見』編集発行人・探見の会代表幹事 森治郎)

◎2021.1.30 「子育てとの両立をしながら働く女性を支援するためのオンラインサロン」

 高山れい子さんが主催する「子育てとの両立をしながら働く女性を支援するためのオンラインサロン」を西岡が手伝いました。事前に主催側とのZoomでの打合せ、当日サロン開始前にMC担当者とも打合せを行いました。
 講師の川崎市議会議員、各務雅彦氏の、地域の子育て環境の向上を目指して議員になった経緯や、銀行勤めをしながら2人を育てたシングルパパの奮闘ぶりを聞いた後、質疑応答がありました。土曜日の昼間ということもあり回線の不備があった方もいたが、8名参加のもと無事終了しました(N)。

◎2021.2.21 高承研でもミャンマーの若者から話を聞く

 Onlineシニア塾第13回<ミャンマーの若者に聞く>をきっかけに、私の主宰する「高度技術者育成と技能伝承研究会」(高承研)でもミャンマーの若者から話を聞きました。前日にマンダレーで国軍の発砲による死者の報道があった影響もあってか、参加頂いたのは星野さん、ミャンマーの若者2人、高承研側は私を含め9名が参加しました。
 話を聞いた後は、CDM(市民的不服従運動)について、アウン・サン・スーチーさんの評価、影で軍を支援する中国の影響力 への懸念、支援活動へのカンパ、広報活動の重要性などについて活発な議論がありました。
 最後に、年長者から60年安保や70年安保闘争のころの思い出や反省の弁を伺い、それに基づいて、短期的な思いに駆られて跳ね上がった活動は控え、理性的、科学的に対処することの重要性が語られました。スーさんからも現状への考え方や抱負が語られて、自分の意見を堂々と話される様子に感心しました。たいへん有意義な会でした(「高度技術者育成と技能伝承研究会」主宰・大野邦夫)。

Onlineシニア塾報告①<2020.5~2021.4>

<Onlineシニア塾>については、<Onlineシニア塾への招待>をご覧ください。以下はそのOnlineシニア塾報告①です。

講座<若者に学ぶグローバル人生>

・第1回(2020.5.20) 
中国人留学生、ユー・プーホン(余浦弘)さん。北京の中央財経大学卒業後、UCLA、シカゴ大、スタンフォード大に短期研修留学、2019年から東大経済学部修士課程に在学中。

・第2回(2020.7.2) 
ベトナムのチャントゥチャン(TRAN THU TRANG)さん。ハノイ貿易大学在学中の2011年、日本文科省の奨学金を得て来日。東京外大日本語教育センター終了後、2016年に京大経済学部を卒業して日本の製薬会社に入社、2021年からシンガポール勤務。

・第3回(2020.7.17) 
ミャンマーのスータンギレッさん。ヤンゴン外国語大で仏語専攻。ミャンマーの日系企業で働いた後、2015年奨学金を獲得し来日。2018年法政大大学院でMBA取得。同大卒業後、2018年から日系総合商社に勤務。

・第4回(2020.7.24) 
スウェーデンで日本語を教える雪江しおりさん。大妻女子大在学中、北京師範大で2年間中国語を学ぶ。上海の日本語スクールでスウェーデン技師と知り合い、結婚してスウェーデンへ。ストックホルム大学で専門職学士の学位を獲得。現在、スウェーデン語学校のキャリアカウンセラーとして勤務。

・第5回(2020.8.19)
ネパールの青年実業家、パウデル・スンダ―さん。現地からの参加。ポカラ出身。祖父から「日本のラジオは世界一だ」と聞かされて育ち、ネパールの大学を卒業後、1999年に来日。武蔵工業大学で環境情報学を学び、卒業後、日本人と交流する場を作るためネパール・インド料理のレストランを開業した。その後、東洋大学大学院博士課程で木造建築を研究。ネパールで木造建築の普及を目指す会社を設立。

・第6回(2020.9.7)
ナイジェリアから留学中のチグメズ・イベグアムさん。2017年にあしなが育英会「アフリカ遺児高等教育支援100年構想」の奨学生として採用され、2018年春に来日。2年間、JASSO東京日本語教育センターおよび大阪YMCA日本語学校に通い、2020年4月より岡山大学グローバル・ディスカバリー・プログラムに進学中。
 参加者約15人。2年で修得したとは思えない流暢で〝訛り〟のない日本語に全員が驚く。いずれは故国に帰って児童教育に取り組みたいとのこと。あしなが育英会の沼志帆子さんから「アフリカ遺児高等教育委支援構想」についても話を聞く。

・第7回(2020.9.14)
ドイツ在住の映像ジャーナリスト、玉腰兼人さん。立命館大学国際関係学部在学中の2008年9月より交換留学生としてベルリン・フンボルト大学に1年間滞在、日本に帰国し大学を卒業後、再度渡独し「オペア・ホームステイプログラム」に参加、ハンブルグのドイツ人家庭で5人の子どもと1年間生活。2012年、ベルリンの映像制作会社に勤務、2019年にフリーの「VideoProducer/Coordinator」として活動。ドイツ・欧州各国において、主に日本のテレビ番組、各種プロモーション動画・写真の撮影、取材アレンジ・コーディネートなどを手がける。ドイツの難民支援組織にも所属している。玉腰さんのウエブhttps://www.kentotamakoshi.com
 一人の青年がドイツという社会でたくましく育っている姿は感動的だった。日本の教育のお粗末さを改めて感じさせられもした。

・第8回(2020.10.13)
シェラレオネから留学中のイジキエル・ガイネシさん。2018年にあしなが育英会「アフリカ遺児高等教育支援100年構想」の奨学生として採用され、2019年春に来日。JASSO東京日本語教育センターに1年間通い、2020年4月より東京国際大学に進学中。デジタル・ビジネス&イノベーション専攻。
 フェイスブックを通じてあしなが育英会を知ったのが彼の人生の大きな転機になった。学校では英語を使ってきたが、来日にあたって日本語に挑戦、大学院にも進んで、将来は国の発展に尽くしたいという。「シェラレオネの福沢諭吉をめざせ」とのエールも飛んだ。

・第9回(2020.10.22)
中国留学生、ショウ・ヨウレイ(焦燁泠)さん。江蘇省・南京市出身。南京外国語学校で中高時代を過ごし、北京科技大学に進学、英語を専攻。大学2年次に、北京大学・国家発展研究院で、経済の第2学位を取得。交換留学で北欧エストニアのタルトゥ大学に進み、その後カリフォルニア大バークレー校のサマースクールを受講。2019年秋に来日し、東大経済学部大学院研究科コースで、農業経済学や、ジェンダー労働経済学を研究中。趣味は、JーPOP、K―POP、テコンドー、ピアノ演奏。
 中国の学生は勉学意欲がすごいらしい。それに比べると日本人学生は「勉学をのんびり楽しんでいる」とのこと。喜ぶべきか、あるいは、そうでないのか。現在、日本企業への就活中。

・第10回(2020.11.10)
ベトナム出身の起業家、ドゥツク・ドバ(Duc Doba)さん。タンホア市生まれ。ハノイ国家大学IT学部を卒業したあと、ソフトウェアエンジニアとして来日。楽天、LINE、ソフトバンクなど大手テクノロジー企業で12年間、IT開発サービス研究開発に従事。日本でのSB Cloud (Alibaba Cloud)サービスの立ち上げに貢献した。2017年に9月に日本の深刻なIT人材の需要と供給のギャップを埋める事業をめざすTokyo Techiesを起業しCEOに。従業員はベトナムと日本側で合わせて35人。在日ベトナム青年学生協会(VYSA)会長も務めた。
 ベトナムの学生時代に縁あって日本企業に就職、いくつかの企業で研鑽を続け、実績も上げた経緯を、現場で覚えたという達者な日本語で、笑顔とともに話してくれた。IT技術者養成事業を日本で立ち上げた動機には篤志家の俤も。

・第11 回(2020.11.30)
セネガルから留学のアストゥ・ンジャイさん。あしなが育英会の高校留学プログラムに合格し、2016年~2019年の3年間は仙台育英学園で過ごす。卒業後、「アフリカ遺児高等教育支援100年構想」の奨学生として東京国際大学に進学。現在2年生で、経営学・マーケティングを専攻している。
公用語のフランス語、民族語、英語、日本語を話し、スペイン語、朝鮮語も勉強したという。「英語でテストがあると、私が85点ぐらいでも日本人は100点取ったりするけど、話すのはちょっと苦手」。グローバル人生としては、明るく前向きに生きる彼女に対し、日本の若者はかなり後れを取っているようである。

・第15回(2021.3.4)
  第2回にご登壇いただいたチャントゥチャンさんの紹介でベトナム在住の女性にスピーカーをお願いしていたが、現地の回線状況の関係でアクセスできなくなり、代わって3月にはシンガポールに転勤する予定のチャンさんに、在日10年の思い出や職場の国際的な顔ぶれ、今後の仕事などについて話を聞いた。まさに世はグローバル時代であることを実感させられた。

・第16回(2021.3.26)
ベトナムのブイハン(BUI THI THUY HANG)さん。2009年、ハノイの貿易大学入学。2011年、文部科学省の奨学金で日本へ留学、東京外国語大学日本語教育センターを経て2016年、一橋大学経済学部卒業して日本企業に入社。その後Warwick Business School大学院(イギリス)を卒業し、2020年ベトナムに帰国、現在は現地企業のプロジェクト品質管理に所属。
 第2回に登壇してくれたチャントゥチャンさんの紹介。ハノイの大学の同窓だが、同じ奨学金で留学後に日本で知り合ったとか。奇しくもご両人とも卒業後は医療関係の仕事に従事している。当日はチャンさんも参加してくれ、日本とベトナムの教育、医療関係の話題などで大いに盛り上がった。

・第18回(2021.4.3)
ベトナムのレマイフォン(Le Mai Phuong)さん。ハノイの貿易大学卒業後、一橋大学経済学部卒、現在は大阪大学経済学研究科博士課程在学中。
経済学に心理学を導入した新しい学問、行動経済学を研究しているというだけあって、テレビ番組に題材をとった日本人の東西比較(関東人と関西人の性格や習慣分析)から始めて、ベトナム人と日本人との商習慣の違い、実のある交流を促進するための技術など、「このところ日本語はあまりしゃべっていないので」と謙遜しつつ縦横無尽に展開する話に、質問攻めにあったシニアたちはタジタジとなりつつも、2時間近い授業は笑いが絶えなかった。

・第19回(2021.4.14)
ベトナムのグエンミンフェ(NGUYEN MINHHUE)さん。高校を卒業してすぐ日本に留学、町田市立看護専門学校を卒業して正看護師国家資格を取得、「勉強好き」(本人の弁)が高じてか、続いて放送大学教養学部卒業、さらに東京大学大学院創成科学研究科博士課程でメディカルゲノムを専攻した。JAXA(宇宙航空研究開発機構)などを経て、現在は日本の製薬会社勤務。   すごい知力とバイタリティ。その間に修得したペラペラ、かつ早口の日本語で、医療から見たベトナムと日本の違いなどについて、しじゅう笑顔で話してくれた。「Zoomのチャット機能を使って質問してくれれば、後からまとめてお答えします」と、Zoomの使い方指南もしていただいた(^o^)。

<Onlineシニア塾2020忘年会>

 12月16日、13人の仲間参加のもとにバーチャル忘年会を開きました(1人遅刻)。


 冒頭、フィリピン在住の鮎澤優さんの波乱万丈の半生を語っていただいたあと、Onlineシニア塾に参加しての感想や今後の運営に対する提案などを話し合いました。Onlineシニア塾は新年も月2回程度のペースで進める予定です。少しずつ講座も広げていければと考えています。参加希望者は<Onlineシニア塾への招待>をご覧いただいたうえ、<info@cyber-literacy.com>までご連絡ください。

講座<気になることを聞く>

・第12 回(2021.1.31)トランプ大統領によってあぶりだされたアメリカ社会の亀裂①

 在米数十年の翻訳家、宮前ゆかりさんにトランプ米大統領の4年とその退陣の混乱を通して浮かび上がったアメリカ社会の亀裂について聞いた。コロラド時間の30日午後9時からということで、日本時間は31日(日曜)午後1時からと変則的になったが、十数人の参加のもとに新講座<気になることを聞く>が無事スタートした。
 冒頭、1月6日のワシントンDCで反乱を起こした人々がParlerというアプリで内部の様子を撮影してアップロードしたビデオをProPublicaが時系列でまとめた動画の一部(写真は午後3時ごろの状況)を視聴した(担当/森治郎・矢野直明)。
宮前ゆかりさんはコロラド州ボルダー在住。フリーランスのリサーチャー、翻訳家。TUP(平和をめざす翻訳者たち)メンバー。ボルダーの独立非営利ラジオ局KGNUでニュース番組や音楽番組を手がけるプロデューサーでもある。元ナイトリッダー新聞社メディア研究員。訳書にダニエル・エルスバーグ著『世界滅亡マシン:核戦争計画者の告白』(共訳:岩波書店)、グレッグ・ミッチェル著『ウィキリークスの時代』(岩波書店)など。米国の市民運動に関する複数の記事を月刊『世界』に寄稿している。
 このセッションは引き続き開催する。

・第17回(2021.3.28)トランプ大統領によってあぶりだされたアメリカ社会の亀裂②

 今回のアメリ大統領選でバイデン候補が獲得した選挙人は306人、トランプが獲得したのはのは232人と、大差がついたようだが、投票状況を共和党(ブルー)と民主党()でカウンティ(郡)単位で図示すると、全体にパープル()模様になる(USA Today)。
  ここには共和党、民主党と支持を明確に決めきれない有権者の現状が反映されているとも言えるが、宮前さんによると、アメリカの選挙制度自体に複雑な歴史があり、黒人などの有色人種や移民などのマイノリティの人びとが投票しにくいように改変されて来ているのだと言う。つい最近も、ジョージア州で共和党の知事によって、選挙制度を厳密に運営する(「不正を防ぐ」)との大義名分のもとに、投票所(投函箱)の数を減らす、公共機関のバスなどでは行けない遠いところに設置するなど、現実には底辺の人びとが投票しにくくなる選挙制度改正案が成立している。
 これが、トランプ大統領が今回の選挙を「不正」だと攻撃し、共和党支持者の多くがそれを信じているという、日本では信じられない状況の背景である。今回は、選挙制度と銃規制をめぐるアメリカの建国以来の歴史について興味深い話を伺った。

銃規制と選挙制度と建国の精神  授業直前の3月22日に、私の住んでいるコロラド州ボルダーのスーパー内で無差別銃撃事件が起き、知り合いも含む買い物客や店員など一般市民10人が殺されました。
 ボルダーは、歴史的にも先進的な自治政策と平和運動の拠点として知られており、2018年に独自の襲撃銃禁止令を採択しましたが、NRA(全米ライフル協会)の訴訟をきっかけに、事件の10日前に州の裁判官が襲撃銃禁止はコロラド州法に違反すると裁定を下したばかりでした。犯人は21歳のシリアからの移民で、動機は明らかになっていませんが、以前にも暴力事件を起こしたことが知られており、精神的に不安定だったにもかかわらず身元調査も受けずに、事件の6日前に襲撃銃を手に入れています。
 アメリカでは、建国当時の有権者である白人地主階級が、先住民の土地の略奪と奴隷労働の搾取によって富を築いてきた歴史があり、その利権が結局は軍部や警察の肥大に貢献し、銃を保持する権利の根拠である憲法修正第2条(規律ある民兵団は、自由な国家の安全にとって必要であるから、国民が武器を保有し携行する権利は、 侵してはならない)を産み、それは同時に選挙権を抑圧する法律を支えてもきたのです。
 アメリカ建国以来の2つの理念、企業による富の集中を重んじる中央集権的考えと、地方の独立した農林業に重点を置く権力分散型の考えは、その後の歴史で変質、あるいは重複、錯綜しながらも、現在の民主党と共和党の対立に受け継がれています。
 一見唐突に見えるトランプ台頭や全米に吹き荒れる白人至上主義拡大は、歴史的必然とも言えるのです(M)。

・第13 回(2021.2.10)ミャンマーの軍事クーデターで苦悩する日本在住の若者たち①

 本講座<気になることを聞く>第2回(通算13回)は急遽、軍事クーデターの起こったミャンマーの若者、6人を招いて10日午後8時から2時間開催した(担当/星野真波)。
 2月1日のクーデターから10日、ミャンマーではヤンゴンなど主要都市で数万人規模の抗議デモ(軍事政権不服従運動、指3本の表示がシンボル)が行われているが(写真はフェイスブックから)、日本でも先日、外務省前に在日ミャンマー人、約3000人が集まって軍事政権への抗議の声を伝えている。

 当日は6人の若者(女4、男2。20~27歳)が日々の不安な生活の実態やミャンマー民主化を取り戻すための決意などを話してくれた。
 Onlineシニア塾はコロナ禍の自粛生活の中で、インターネットというツールを使ってシニア相集い、世代を超えたグローバルなコミュニケーションを行いたいと始めたものだが、激動する世界の息吹を身近に感じ、また日本人として何をすべきかというある種の責任についても考えさせられる機会となった。
 若者たちは「ミャンマーで起こっている事実を知ってほしい。ミャンマーの民主化のために日本の皆さんにもご尽力をお願いしたい」との強い気持ちから、故国の肉親の安否さえ心配な中で参加してくれた。それにしても、日本語が達者であるばかりか、自分の考えを堂々と開示できるすばらしさ。参加者からは異口同音に驚きの声が上がった。
 このセッションも適宜、開催する予定。

民主主義を守ろうとする社会の「粘り」 ミャンマー国会の8割以上の議席をNLDが占めながら軍事クーデターを許してしまった背景には、民主主義を守ろうという社会全体の「粘り」が薄れつつある世界共通の状況があるようにも思われる。アメリカしかり、日本ももちろん例外ではない。軍事政権はミャンマー国内ですでにインターネットを遮断、逆に、アメリカでは一IT企業たるツイッター社がトランプ大統領のアカウントを停止し、政治の動きに大きな影響を与えた。サイバーリテラシー的にもいろいろ考えさせられる昨今である(Y)。

「軍事政権不服従運動」 日本在住のミャンマーの若者たちと初めて話をした時、異口同音に「ミャンマーで起こっている事実を知って欲しい」と訴えていたのが印象的でした。その言葉には、事実が伝わらずに世界から見放された結果、暴力による支配に陥った時代には戻るまいという決意が込められていたからだと、今回の議論を通して感じました。 日本人の常識やこれまでの報道からは推し量りにくいミャンマーという国の背景や、人々に共有されている感情を汲み取るためにも、直接話を聞く意義を確認できる機会にもなったと思います。
 また彼らが最も伝えたかったこと一つである、「クーデター以降72時間は事態を静観したのと、デモが全国規模で平和的に展開しているのは、軍部側に民衆が暴徒化したという武力鎮圧の口実を与えまいという総意によるもの」だという話も、多くの人に丁寧に伝えられてほしいと思います。彼らは「軍事政権不服従運動」という言葉を使っています。
 ミャンマーと日本との深く、そして、複雑な関係にも話が及びました。彼らにも不安な思いが募っていると思いますが、思い描く進路、将来に向かって活躍できるよう、日本人としてできることを考え、不安な思いの中、話をしてくれた勇気に応えていきたいと思っています(H)。

・第14 回(2021.2.20)巨大地震などに備える燃料電池(災害時の非常用電源)について開発の現状を聞く

<気になることを聞く>第3弾(Onlineシニア塾通算14回)は、災害に備えた非常用電源ということで、自動車産業が先端的に取り組む燃料電池などの開発について、若い研究員、伊東直基さんに話を聞いた.(担当/松浦康彦)。
 冒頭、担当者から日本を取り囲む4大プレート(北米、ユーラシア、太平洋、フィリピン海)の説明と、東日本大震災より一桁大きな南海トラフ巨大地震が2035年±5年のうちに起こるという学者の警告などの報告があり、富士山大爆発も含めて非常用電源を準備しておく必要性が強調された。それを受けて自動車企業の研究部門で燃料電池などの研究開発に携わっている伊東さんの話を聞いた。
 活発な議論が展開され、燃料電池の利用は車に限った話ではなく、家庭用電源としての利用なども考えるべきではないかと、本来なら研究所長や社長に向けられるべき質問も飛んだが、新入社員が研究所長や社長に成り代わって日本社会の、ひいては世界の将来を考えるべき時代なのかもしれない。
 伊東直基さんは1993年生まれ。首都大学東京大学院で電磁環境工学研究室に所属し、電気自動車用ワイヤレス電力伝送装置の漏洩磁界のシミュレーションを実施。大学院卒業後は関東にある自動車メーカに就職し、充給電ユニットの開発に従事している。

 花見と直基とときどき松浦 コロナ禍の冬も終わり、急に春らしい季節になった。私は『ASAHIパソコン』を創刊した1988年から裏山の源氏山で毎年、見ごろの日曜日を選んで花見の宴をはってきた。多い時には100人ほどの参加者があり、紅白の垂れ幕を背に、敷きつめたゴザの上で女装した芸人が舞ったり、カラオケに興じたりした。雨の日は我が家に集まって花より酒の宴となり、花冷えの夕方もやはり我が家で二次会をした。つい最近まで30年以上続けてきたが、花も参加者も高齢化し、つい数年前に打ち切った。
『ASAHIパソコン』草創期にアルバイトとして3人の学生が手伝ってくれていたが、彼らは毎年、花見にも参加、そのうち彼女を連れてくるようになり、ほどなく結婚、そのうち親になった。子どもたちの中で同い年の男の子2人はすっかり仲良くなり、年に1度の出会いを楽しみにしていた。彼らは満開の桜の下でも、花吹雪の中でも、雨に打たれる花びらの上でも、ほとんど花には背いて、ゲームなどに興じていた。時がたち、2人は社会人になり、それぞれ自動車関係の会社に就職した。そのうちの1人が今回、花見の義理に背かず、講師役を買って出てくれたわけである。今回の授業を担当した松浦氏も花見後半の常連だった。
 金も組織もない「バーチャル井戸端会議」である我がOnlineシニア塾が、よって立つのが個人的なつながりだということを示すエピソードとして、この話を記した。インターネット上に半ば開かれ、半ば閉じた空間(トポス)が、IT社会のオアシス、あるいは核になる可能性に触れておきたかったからである(Y)。

特別講座<もっとZoom、初めてのSlack>

・第20回(2021.4.21)
 新たに特別講座を設けました。通常講座とは別に、ときどきの話題などを取り上げると同時に、Onlineシニア塾の「オープンキャンパス」として、従来の会員以外にも広く参加を募ります(info@cyber-literacy.comまで)。
 特別講座第1回として、Zoomのより便利な使い方ガイドと、Onlineシニア塾としても導入を始めたコミュニケーション・ツール、Slackの紹介を行った(担当/星野真波、西岡恭史、高橋慈子)。
もっとZoom
 Zoomをより効果的に利用するノウハウの紹介と「ブレイクアウトセッション」の体験。Onlineシニア塾ではまだ参加者が少なく、分科会を同時開催する必要はあまりないが、将来に備えて(^o^)。
初めてのSlack
 Slack(スラック)は2013年に開発されたチーム・コミュニケーション・ツールで、またまくまに世界中に波及、もはや多くのIT企業で必須のコミュニケーションツールとして使われている。Onlineシニア塾でも遅まきながら導入、事務連絡をはじめ授業前の情報交換、授業後のさらに掘り下げた議論などに活用したい。とくにスピーカー同士の交流に威力を発揮するのでは(ベトナムのチャンさんやレマイさんも参加)。

Onlineシニア塾への招待

 Onlineシニア塾はコロナ下の蟄居する日々の中で、ロートル3人組(松浦康彦、森治郎、矢野直明)が、時代に取り残されないようにしこしこ始めた「Zoom勉強会」が発端である。2020年5月に開設、サイバーリテラシー研究所のウエブ<サイバー燈台>の一角に「Zoomサロン」のコーナーを設け、活動報告を行っている。

 コンセプトは<オンライン(ミーティングツール、Zoom)を使ったシニアのためのグローバル・コミュニケーション塾>で、塾長は矢野がつとめている。塾生はもっぱらシニアで、①若者に学ぶ、②シニア同士語り合う、③若者に伝える、の3分野(ジャンル)を想定しているが、2021年5月現在、講座<若者に学ぶグローバル人生>、<気になることを聞く>の2講座のほかに特別講座を適宜開設、すでに授業は20回以上に及んでいる。塾は曜日にかかわりなく、月に約2回、曜日には無関係に、だいたい午後8時から1時間半ほど開いている。

 心理学者、ユングが言う「人生の午後」を有意義に過ごしたいと思っている人、伊能忠敬の「一身二生」を生きようと考えている人、さらに言えば、藤沢周平の描く三屋清左衛門のように「日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ」を実感している人々、そういう人に参加していただければ、と考えている。もっとも昨今は70歳でも「人生花盛り」、一線で働いている人も多く、こういった現役の参加も大いに歓迎である。

 一般に「シニア(年長者)」とは何歳ぐらいから言うのか、実はきわめてあいまいである。当初は50歳以上をメドにしていたが、海外からの若い留学生から話を聞く機会も多く、若者同士の交流を促進するためにも、参加者の年齢制限は外している。すなわち若者の参加も歓迎している。

 スピーカーも塾参加者も当面はボランティア(無料)である。現在はスピーカー、メンバーとも20人強だが、これを当面それぞれ50名ぐらいまで拡大したい。

 いまや多くの情報発信がユーチューブやツイッター、インスタグラムなどのSNS経由で行われている。すっかり影を薄めたマスメディアに代わってこれらソーシャルメディアを使った良質の硬派記事が多くなっているが、趣味の園芸、クッキングなどさまざまな情報発信も花盛りで、教えたり、教えられたり、実のあるコミュニケーションが繰り広げられている。そこにOnlineシニア塾がどう一石を投じられるかは、今後の成り行き次第である。

 参加希望者はもちろん、スピーカー候補などの応募や推薦をお待ちしている。ミーティング用ソフトにはZoomを使っており、まだZoomを使ったことがないけれど、参加したいという人には、「私家版・Zoom自由自在―シニアも使える超簡単マニュアル」も用意している。

 2021年5月からコミュニケーション・ツールとしてslackを導入、ミーティング以外に会員相互で意見交換する場を設けている。参加希望、ご意見などは事務局、info@cyber-literacy.comまで。

2021年5月 Onlineシニア塾・矢野直明

<Onlineシニア塾の概要>

・メンバー資格
 ウエブ<サイバー燈台>上の「Onlineシニア塾への招待」を読んで参加を希望する人は、事務局まで申し込めば、簡単なプロフィルを提出していただいたうえで、基本的に参加を許可する。シニア塾を標榜しているが、とくに年齢、性別、国籍の制限はない。会費は当面無料である。当塾でスピーカー(講師)を務めてくれた方は、自動的にメンバー資格を得る。

・メンバー心得
 Zoomを通して活動の幅を広げるとともに、何らかの形で社会貢献することを考える。完全なボランティア活動なので、スピーカー発掘、参加者の拡大、新たな授業計画など、率先して会の運営に協力する。入会と同時にslackにも参加し、会員間のコミュニケーションに役立ててほしい。とくに若いスピーカーに対して、自分が役立てることで積極的に貢献することを考えていただきたい。

・ゲスト
 ゲストとして、毎回参加するのではなく、興味のある会だけ参加することも可能である。また特別講座は大学の「オープンキャンパス」のように、広く参加者を募っているので、まずはゲストとして参加していただくのもいい。参加希望者は名前とURLを添えて事務局に申し込めば、当該授業への参加が許可される。

・サイバー燈台
 Onlineシニア塾の活動はウエブ<サイバー燈台>で逐一報告される。
 それぞれの授業においてはスピーカー、概要、エピソード、感想、知らせておいた方がいい知識などを適宜編集して公開、一般の人がOnlineシニア塾に興味を持ってくれるように心がけている。メンバーの寄稿も歓迎している。

 <Onlineシニア塾は2021年5月で一周年を迎えました。これを機に、2020年7月29日に掲載した「Onlineシニア塾への招待」をバージョンアップ、同時にその概要を付記した>

新サイバー閑話(44)

林さんの「情報法」連載ピリオド 

 本サイバー燈台プロジェクト欄の長期連載、林紘一郎さんの「情報法のリーガル・マインド その日その日」が奇しくもこの6月4日、第64回をもって終了しました。私がウエブをサイバー燈台としてリニューアルしたのと、林さんが『情報法のリーガル・マインド』(勁草書房)を上梓したのが同じころで、その機をとらえて、サイバー燈台に寄稿をお願いしたのがきっかけです。原稿料なし、まったくのボランティアというまことに図々しい申し出を快諾してくれたころを懐かしく思い出します。たしかにお互い、歳をとりました(^o^)。

 タイトルに「情報法のリーガル・マインド その日その日」と付けたのは、新著にまつわるエピソードのようなものを気軽に書いていただければと思ったからですが、「闘魂の人」林さんは過去をのんびり振り返ることを潔しとせず、本では十分書けなかったことを敷衍したり、新たに起こった事態に題材を求めたりと、情報法研究の最先端をさらに究めるべく、毎回、大原稿を書いてくださいました。そういう意味では、まさに「情報法 その日その日」の記録ともなりました。まことにありがたく、厚く感謝しています。

 途中で著書が大川出版賞を受賞したときの挨拶や、「法と経済」などさまざまな学会にパネリストやコメンテーターとして参加した報告、さらには長らく学長を勤められた情報セキュリティ大学院大学の最終講義の様子なども挿入されていますから(後半では私の連載、「インターネット万やっかい」に関しても言及していただきました)、硬軟取り混ぜた内容になっていますが、ここには「情報法の現在」が詰まっていることは、ご愛読いただいた方にはご理解いただけると思います。

 林さんは情報法の今後を若い研究者に託したい意向を末尾に添えられていますが、サイバー燈台主宰者としては、アフターコロナの激動が林さんの知的好奇心をさらに刺激し、折に触れて投稿していただける機会もあるのではないかと、勝手に期待している次第です。

 長い間、精力的にご寄稿いただき、ほんとうにありがとうございました。ときどき打ち合わせと称して横浜北口の中華レストランで食べたランチも懐かしい思い出です。

新サイバー閑話(43)<よろずやっかい>⑨

加速する時間のやっかい

 今回のやっかいは、高速で動くコンピュータおよびインターネットの恩恵を受けながら、そのスピードがあまりに速いために私たちの日常的なリズムが追いつけないことに起因する。コンピュータを使いこなすというより、むしろそのスピードに振り回される「やっかい」である。

 その1つの例が、<よろずやっかい>⑥でふれた「等身大精神の危機」だろう。一瞬のケアレスミスが何百億円に上る被害をもたらしたわけで、軽い「引き金」が重大な「結果」を引き起こす高速コンピュータの〝暴走〟。これにどう対すればいいのか。

 個人的にはコンピュータの扱いにもっと慎重になる、画面の警告音を見逃さないという心構えが大事であり、社会工学的には、1つのアクションをより肉体感覚と連動するものにするといったシステム設計が必要になるだろう。

 コンピュータの誤作動を引き起こすバグはなくしてもらわないと困るが、そうでなくても、スマートフォンで住所録の他の宛名にひょっとふれて間違い電話をしてしまったり、翌日になれば怒りがおさまるほどの些細なことがらを感情の赴くままに書きつけ、そのまま送信して炎上という事態を招いたり……、電子の文化のスピードにはついていけないとつぶやく人(とくに高齢者)も多いはずである。やっかいと言えば、まことにやっかいである。

 サイバーリテラシーに引き寄せて言えば、コンピュータをどう使いこなすかという知識(スキル)だけでなく、コンピュータとはどういうものか、それを扱うにはどのような心構えが必要か、コンピュータにまかせない方がいい領域は何か、というリテラシー(基本素養)教育が必要ということにもなる。

 私は林紘一郎さんに誘われて、横浜の情報セキュリティ大学院大学の経壇に立ったことがあるが、当時、こういうことをすると危険である、それは法に違反するという「脅しのセキュリティ」だけでなく、こうすれば快適なIT生活が送れるという「明るいセキュリティ」も大事ではないか、という話をしたことを思い出す。

 このシリーズは「インターネット徒然草」と自認するエッセイ集みたいなものである。「つれづれなるまゝに、ひぐらしパソコンにむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」。そして、前回の⑧は「おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ」という思いが強かったけれど、今回、念頭に浮かんだのは、芥川龍之介の『侏儒の言葉』の一節である。

人生を幸福にする為には、日常の瑣事を愛さなければならぬ。雲の光り、竹の戦ぎ、群雀の声、行人の顔、――あらゆる日常の瑣事の中に無上の甘露味を感じなければならぬ。

 対象が自然と技術の違いはあるけれども。インターネットを無視して生きていくことはできない。もっとも後段でこうも言っている。

人生を幸福にする為には、日常の瑣事に苦しまなければならぬ。雲の光り、竹の戦ぎ、群雀の声、行人の顔、――あらゆる日常の瑣事の中に堕地獄の苦痛を感じなければならぬ。

・『ネットスケープタイム』

 以下、コンピュータおよびインターネットがもたらした時間の変化、加速するスピードについて考えてみる。 

 インターネット初期に「ドッグイヤー」ということが言われた。IT企業1年の成長発展は従来の企業の7年分に相当するという意味である。今はもっと速くなっているかもしれない。

 1995年はインターネットが社会に普及したという意味で「インターネット元年」と呼ばれるが、そのころ活躍したジム・クラークという一起業家が書いた自伝的書物は、ITがもたらしたスピードの変化の生々しい記録である。

 インターネットで扱える情報を活字(テキスト)だけの世界から絵や動画まで拡大した閲覧ソフト、ブラウザーの発明こそインターネット飛躍の原動力だったが、最初のブラウザーはイリノイ大学の学生、マーク・アンドリーセンによって開発され、モザイクと名づけられた。

 クラークは、自分が創業したシリコングラフィックス社を退任に追い込まれた1994年、アンドリーセンの名を聞き、直ちにこの若者に電子メールを出して、2人で新会社を作る。モザイクという名は使えなくないので、同じようなブラウザーを開発してネットスケープと名づけた。マイクロソフトのビル・ゲイツもモザイクをもとにしたブラウザー、インターネット・エクスプローラーを開発して追撃、1995年は2つのブラウザーの機能拡張競争が繰り広げられた年でもあった。

 同年、私はインターネット情報誌『DOORS』を創刊し、付録CD-ROMに両ブラウザーのプラグインソフトを収録していたが、毎月、新たな機能追加が行われ、その対応にてんてこ舞いしたものである。最終的にネットスケープはエクスプローラーに負けてしまうが、クラークの本のタイトルはNetcapeTimeだった(邦題は『起業家 ジム・クラーク』水野誠一監訳、2000、日経BP社)。

 ネットスケープタイム。加速する時間こそが勝負だったわけで、彼は「我々のビジネスでは、安定性や安全は、スピードから生まれる。つまり、競争相手より早く製品を市場に出せということである」、「私の頭の中を占領していたのは、スピードそれ自体ではなく、加速のスピード、特に企業のライフサイクルのペースが加速していることであった」と書いている。

 彼によれば、創業から株主公開までの期間は以下のように短縮した。

ヒューレットパッカード 創業1939 株式公開1957(18年後)
マイクロソフト 創業1975 株式公開1986(11年後)
アップル 創業1976 株式公開(4年半後)
ネットスケープ 創業1994 株式公開1995(1年4ヶ月後)

 製品のバージョンアップについて、こんなことも書いている。「ソフトウェアに問題があっても、ちょっと改良したバージョンとして発表し、後はこれを繰り返せばいい。車が衝突すれば、人が死ぬが、ソフトがクラッシュしてもリスタート・ボタンを押せばよいだけなのだから」、「いつも火を噴くようなトースターを製造している家電メーカーは長く生き残ることはできない。だが、バグだらけで有名な製品を市場に送り出すことでマイクロソフト社は大成功を収めている。発展初期の段階にあるテクノロジーでは、その技術の新しさ故に不完全さの苦労が許される猶予期間があるものだ」。

 ビル・ゲイツには散々煮え湯を飲まされたらしく、「私は、個人的に、ビル・ゲイツは、その一見陽気なオタク的外見の下に、殺人的な本能と、飽くことのない攻撃性を抱いていると確信している。彼の反応は、常に凶暴性を帯びているからだ」、「他社より優れた製品をつくることで競争に勝つというやり方でマイクロソフト社がトップに立ったことは一度もない。なぜなら同社は他社より優れた製品を他に先駆けて世に出したことがほとんどないからである」などと非難している。「今日では、世界を変えようとするのでもなく、何か新しいエキサイティングなことを起こそうというのでもなく、マイクロソフト社に一日も早く買収されるという目的のみを持つスタートアップ企業が増えている」とも。

 このネットスケープタイムがIT企業のみならず、多くの企業のものになった。企業経営ばかりでなく、コンピュータシステムがそれこそ急速に社会に広まるにつれ、私たちの日々の生活もスピード化の波に呑み込まれた。実際、コンマ0秒をはるかに上回る電子の速度で金融取引が行われ、そこでは人間の判断が介入する余地さえない。時間がどんどんスピードアップするのはもはや止めようがない状況である。

・自然農と経頭蓋直流刺激装置

 現代IT社会における時間はいかにあり得るのか。一端に自然のリズムのままに生きる時間があり、他端にコンピュータのスピードと共生する生き方がある。

 本サイバー燈台で古藤宗治氏に「自然農10年」という連載を続けてもらっているが、自然農というのは土地を耕さず、肥料をやらず、ほとんど機械も使わず、土地が持っている本来のエネルギーのおすそ分けで作物を収穫する。生産量は限られているし、1年のサイクルに縛られる。それ以上のことを求めない生き方の典型が第10回で紹介されている。

 私もある初夏、畑を見せてもらったが、むんむんとする草いきれと、農作物のまわりを飛び交うチョウの群舞に懐かしい思いがした。弥生式農業以前の農業と言ってもいい。ここには現代においても経験できるのどかな時間がある。

 その対極にあるのが、コンピュータの力を借りたスピードの世界である。ハラリの『ホモ・デウス』に、米軍が訓練と実践の両方で兵士の集中力を研ぎ澄まし、任務遂行能力を高めるためにやっている実験が出ている。経頭蓋直流刺激装置という、いくつもの電極がついたヘルメットをかぶると、微弱な電磁場が生じ、脳の活動を盛んにさせたり抑制したりするのだという。

 某誌の記者がその実験を体験した話が出ている。

 最初はヘルメットをかぶらずに戦場シミュレーターに入ったら、自爆爆弾を装着し、ライフル銃で武装した覆面男性20人がまっしぐらに向かってきて、「なんとか1人撃ち殺すたびに、新たに3人の狙撃者がどこからともなく現れる。私の撃ち方では間に合わないのは明らかで、パニックと手際の悪さのために、銃を詰まらせてばかりだった」。そのあとヘルメットをつけると、「20人の襲撃者が武器を誇示しながらこちらに駆けてくるなか、私は落ち着き払って自分のライフル銃を向け、間を取って深呼吸し、最寄りの敵を狙い撃ちにしたかと思うと、そのときにはもう、静かに次の標的を見極めていた」、ほんの一瞬の出来事のように思われたが、すでに20分が過ぎ、彼女は敵20人全員を倒していた。

 コンピュータを使えば、通常の頭の回転スピードを上回る速度を獲得できるということだろう。こういう装置はどんどん開発が進み、私たちはそれらで武装し、いよいよ「ホモ・デウス(神の人)」になっていく、というのがハラリの予想だった(博学の発明家、レイ・カーツワイルの「ポスト・ヒューマン」が典型的である)。

 コンピュータに限らず、文明の発展にともなって私たちの時間が加速しているのは間違いない。足で歩く→自転車に乗る→鉄道を利用する→車→飛行機と、交通手段の発達はまさにスピードアップの歴史であり、電信、電話などの通信手段もまた時間の克服に大きく貢献した。

 スティーヴン・カーンはTHE CULTURE OF TIME AND SPACE(1880-1918)(1983、翻訳は『時間の文化史』『空間の文化史』の2分冊、浅野敏夫他訳、法政大学出版局)で、「1881年頃から第1次大戦が始まる時期において、科学技術と文化に根本的な変化が見られた。これによって時間と空間についての認識と経験にかかわる、それまでにない新しい様態(モード)が生まれる。電話、無線、X線、映画、自転車、飛行機などの新しい科学技術が、この新しい方向づけの物的基盤となった。一方で、意識の流れの文学、精神分析、キュビズム、相対性理論といった文化の展開がそれぞれに、人の意識を直接形成することになった」と述べている。

 私は常々、サイバー空間の登場は人類史を2分できるほどの出来事である(BC=Before CyberspaceとAC=After Cyberspace)と述べてきたが、その最大の特徴は飛躍的スピードの増大にこそ求められるかもしれない。

・快適な時間とはどのようなものか

 IT社会を快適(幸福)に生きるためには、結局、高速化する社会(サイバー空間)との距離をうまく取る才覚が必要だということになりそうである。

 個人にとって快適な時間とはどのようなものか。

 のんびり屋、せっかちなどの性格にもよるし、年齢にもよる。年齢にはその人が生きてきた時代の時間が大きく影響しているだろう。若いころ感激し、あるいは血沸き肉躍る経験をしたハリウッド映画を見直してみると、やはりかったるい思いをする。私自身、学生時代に感激した『ウエストサイド物語』にそれを強く感じた。一方で、ゲームをしている孫の手の動きを見ていると、驚くほど速い。

 これは一部のSFファンの間では有名な話のようだが、『銀河ヒッチハイク・ガイド』などの作者が提唱した「ダグラス・アダムスの法則」というのがある。

人は、自分が生まれた時に既に存在したテクノロジーを、自然な世界の一部と感じる。15歳から35歳の間に発明されたテクノロジーは、新しくエキサイティングなものと感じられる。35歳以降になって発明されたテクノロジーは、自然に反するものと感じられる。

 年代区分はともかく、マーシャル・マクルーハン的な警句として興味深い。たしかに、インターネットはもはや大半の人には技術というより所与の環境になっている。この説に言及した「いまIT社会で」は異論も紹介しているが、これも時代とともに快適な時間が変わっていくことと関係しているだろう。

 個人差はあるけれど、個々の人間にとってそれぞれの快適な時間、速度(スピード)があるというのも確かだと思われる。

 たとえば、バイオレゾナンスというドイツ発祥の治療法では、病気の原因となる体内の気(エネルギー)には固有の周波数の波動があり、同じ周波数の波動で共鳴を起こすと、気の滞りが解消、病気が治ると言っている。「滞りと同じ周波数の波動による共鳴現象によって滞りが消えて再び気が活発に流れるようになる、これが健康を取り戻すということだ」(ヴィンフリート・ジモン『「気と波動」健康法』2019、イースト・プレス)。

 個人差もあり、それは日によっても異なるけれど、その人固有のリズムというものを大事にすることが、目まぐるしく変化するIT社会においてはとくに重要である。それが才覚である。そのためには、四六時中、つまりひぐらしパソコンやスマートフォンにかじりついて、サイバー空間の影響を受け続けるのではなく、一定の距離を置く。つまり、日々の生活の軸足を現実世界に置く意識を忘れない。そうすれば、インターネットの影響を少しは対象化して考えることもできよう。ファーストフードに対してスローフードの運動もあるように、人それぞれに自分にあうスピードを大事にするしかない。

 <よろずやっかい>➆の最後にふれたように、技術がもたらした問題の多くは技術によって解決できるはずである。サイバー空間と現実世界の接点における快適な時間の確保ということに関しても、秀逸な<よろずやっかい解決アイデア>が求められるとも言えよう。ノーベル賞級か、あるいはイグノーベル賞級の。

 ちょっと話がそれるが、この稿を書き上げたころ、友人が「最近の政治の動きは腹立たしいばかりで、ときどき藤沢周平の小説や小津安二郎の映画を見るようにしている」と言っていた。たしかに小津安二郎の映画にはゆっくりした時間が流れている。「君、どうなの?」、「どうってこともありませんわ」、「そうかねえ」、「そうですよ」なんていうセリフも懐かしい。

 当面は才覚で切り抜けるしかない、やっかい