Online塾DOORS③<2022.5~>

  Onlineシニア塾は開設2周年を迎えた2022年5月から名をOnline塾DOORS(略称OnDOORS)と改め、シニアの枠を取っ払い、さらに広範囲の塾に脱皮することになりました。塾の精神、これまでの授業など、ほとんど従来通りで、その趣旨は別稿のOnline塾DOORSへの招待、<ネットのオアシスを求めて>をご覧ください。「国境を越え、世代を超えて」がキャッチフレーズです。より多くの皆さんの参加を希望しています。

 なお従来の履歴はOnlineシニア塾①<2020.5~2021.4>、および②<2021.5~2022.4>でご覧いただけます。
 講義はしばらく
講座<若者に学ぶグローバル人生>
講座<気になることを聞く>
講座<とっておきの話>
講座<アジアのIT企業パイオニアたちに聞く>
 の4講座で行う予定です。

講座<アジアのIT企業パイオニアたちに聞く>

第44回(2022.7.29)
 ファンヴァントゥアンさん 日本とベトナムのエンジニアリングの架け橋をめざす

 2005年ホーチミン工科大学電気電子学部を卒業し3年間アメリカに滞在した後、2008年に来日、8年間日立グループ会社にエンジニアとして勤務した。その後帰国し、2015年にハノイ市でITソリューション企業、VHECを創立しCEOに。3人でスタートした会社も現在はVHECだけで118名、グループや協力パートナーを含めると300名を擁する企業に成長した(担当/藤岡)。
 幹部のベトナム人はハノイ工科大学、ダナン工科大学、茨城大学、名古屋工科大学などを卒業し、いずれも4年から9年、日本で実際に働いた経験のある技術者ばかりである。ヴァンさん自体、日本でいろんなことを学んだ経験のもとに、これからはベトナムの発展に貢献するとともに、日本とベトナムのエンジニアリングの架け橋となることをめざしている。


 VHECのほかにも、20年にニャチャン市に人工知能(ADAI)研究所やDX支援会社を創立するなど、いくつものベンチャー企業を立ち上げ、地方創生とグローバル人材開発などの事業にも乗り出している。得意分野の制御システム開発やAIを使ったユニークな研究(下写真はコロナ禍でのマスク着用の有無を検出する実験プログラム)の実情も話してくれた。
 彼によれば、ベトナムのIT企業は国の支援もあって伸び盛りで、毎年大学から5万人の人材が供給される。現人員の90%強が20代、30代の若者で、女性が4割を占める。「私が大学を出たころはまだIT企業も少なかった。日本語の先生に日本で勉強して帰国後に起業するのがいい」と勧められた。私たちの世代はベトナムIT事業の先頭を走っている」、「最初はオフショア(委託業務)を受注する企業が多かったが、自前の開発をするところも増えてきた。今のベトナムは50年ほど前の日本の状態。ここで発展させなければ、いずれベトナムも高齢化の波にのまれてしまう」。ベトナムは若い国であり、ヴァンさんの未来も明るく輝いているようである。
 日本の若者は怠ける組と頑張る組に二分されるそうである。若者はもっと外国に出るべきだというのが助言で、実際、頑張る人は海外にもよく出かけているという。日本滞在中は大企業の年配の人たちに多くを教わった経験からか、「日本とベトナムとは親和性は高い」とも話してくれた。

 高度経済成長の熱気をベトナムで見た 「君たちは日本の高度経済成長というものを知らんだろうが、ベトナムに行くとそれを体験できるよ」と、2年半前に年配の政治家から言われて、ベトナム視察旅行に行くことになり、ホーチミン市とハノイ市のIT企業を巡った。慶応義塾大学および立命館大学の学生とベトナム人留学生が4人で立ち上げたRIKKEI社は、わずか10年で従業員数1500人を擁するIT企業に成長し、オフショア開発だけでなくAIによる国会の同時字幕を付け聴覚障害者をサポートするサービスを開発していた。ベトナム語は、日本語同様に方言などがあり、簡単には音声から文字に起こすことは難しいため、AIによる判断がポイントになるということだった。彼らの自立しようとする熱気と実行力には驚かされた。自動運転ロボットのZMP社は、東京工業大学出身のドン社長が日本とベトナムの懸け橋になるという決意のもと開発に一途に取り組んでいた。
 ベトナムについては、正直に言うと、ベトナム戦争の悲惨な映像しか知らなかったのだが、行ってみて大いに驚いた。ホーチミン市には国内最高層、81階のランドマーク81(写真)を初めとして高層ビルが林立し、交通手段はバイクだが、人々の表情は活気に満ちていた。繁華街に行くと、昔ながらの市場もあり、時代が交錯し変化していく姿を体感できた。なるほどこれが「高度成長の活気なのか」と私は思った。日本でも高度成長期には給与も上がり、変化が目まぐるしく、仕事は忙しかったが活気があって楽しかった、という話をよく聞かされていた。
 実はその旅行でヴァンさんにも会ったのである。彼は颯爽としてオフィスを案内してくれた。そこで私はまた驚いた。ハノイ工科大学など日本でいえば東京大学と同じ国内トップ大学出身の技術者が熱心に開発に取り組んでいた。すでに日本の技術力を追い抜いてしまった中国や、発展目覚ましいインドとともに、ベトナムの将来は大いに期待できそうである。
 この<アジアのIT企業パイオニアたちに聞く>シリーズは、IT起業家たちを中心に躍進するアジア経済最新事情を紹介することをめざしている。まったく、日本もうかうかしてはいられません。本塾で紹介するにふさわしい方をご存じの方はinfo@cyber-literacy.comまでお知らせください。どうぞよろしく(藤岡福資郎)。

講座<気になることを聞く>

第43回(2022.7.16)
 阿部裕行さん 【地方自治体の首長でも、何をしたいのかという明確な意思、住民の命を守ろうとする決意、国と本気で戦う覚悟、そして日々勉強さえすれば、できることはいっぱいあります】

 東京都多摩市長。日本新聞協会事務局次長から、2010 年に、民主・共産・社民・生活者ネットワークの推薦で立候補し当選、次期14 年からは政党の推薦を受けずに無所属で立ち、今春4選を果たした。「健康」と「幸福」を兼ねそなえた「多摩市健幸都市宣言」、「多摩市非核平和都市宣言」、「多摩市気候非常事態宣言」など、独創的な地域づくりや平和・脱原発への取り組みで知られる。森治郎さん主催の<『探見』の会>との共催2回目です。
 どこの自治体も同じだが、コロナ禍ではずいぶん苦労したらしい。とくに多摩市には都直轄の保健所しかなく、PCR検査など患者情報が個人情報保護法のネックで市と共有できないなど、最初はいろんな制約があったが、それを粘り強い国への働きかけ(「多摩一揆」などと言われたらしい)で丁寧にほぐしつつ、都内でワクチン接種率1位という実績に結びつけた。
 「市にも国から派遣されたり、逆に国にこちらから派遣したりと、人的交流がありますが、どんな人に来ていただくかによって大きく変わります。私はその人選にも積極的にかかわり、コロナが起こる前から医師、福祉関係者、市職員がツーカーで話し合える環境を作っていました。これが大いに効果を発揮しました。市職員の採用、昇給などの人事にも必ず立ち会っています。首長は議会や国、職員にまかせておけばつとまるお飾りみたいなものだという人がいますが、それは違います。何をしたいのかという明確な意思、市民の命を守るのだという決意、国と本気に闘う覚悟があり、よく勉強して、日々の仕事をこつこつと積み重ねていけば、いろんな制約があるとはいえ、やれることはいっぱいあります。市長は365日、休むいとまはありません」。
 数々の実績を誇る阿部さんに言わせれば「為せば成る」ということらしいが、住民の立場から言うと、どういう首長を選ぶかという心がけが大いに重要だということでもあるらしい。

第42 回(2022.7.13)
 西尾浩美さん 【軍事クーデターから1年半、ミャンマーの人たちは弾圧にめげず「いずれ私たちは勝つ」と強い決意を固めています】

熊本生まれ、横浜育ち。母親の影響で早くからボランティア活動に親しむ。教師になろうと入学した大学の文学部史学科時代、夏休みを利用して東南アジアをバックパーカーとして旅行したこともあって、途上国での医療活動に従事しようと翻心、看護学科に学士入学して看護師となった。NGO職員としてミャンマーに出かけて、2021年2月1日の軍事クーデターに遭遇した。
 本塾ではクーデター直後の2月10日と5月8日に「ミャンマーの軍事クーデターで苦悩する日本在住の若者たち」の話を聞いたことがあり、今回はミャンマー問題としては3度目の授業となる。西尾さんは自分の直接見聞したクーデターの様子やそれに抵抗する人びとの動きを生々しく報告してくれた。
 昨日(2022.7.12)までの犠牲者は2077人、逮捕者は1万4549人、いまだにスーチーさんをはじめ1万1483人が拘束されている。軍政下の圧政は苛烈と言っていいようだが、その中で市民的不服従運動(CDM)、亡命政府(NUG)などを中心に抵抗も続いている。国境周辺の少数民族の武装勢力と組んで若者たちが武装して戦っているのは報道されている通りである。
 彼らの抵抗が報われる日はいつになるのか。西尾さんは「軍政が定着するのか、市民が民主主義を取り戻すのか、しばらくは対立状態が続くと思うが、人びとは『闘うしかない』という強い意志を固めている。それは悲壮な思いというよりも、『絶対に勝つ』というとても前向きなものです」と話していた。知人たちは彼女に「僕たちはクーデターで一度死にました。だから死ぬのはもう怖くない」、「死ぬのは怖い。でも希望のない未来を生きるのは、もっと怖い」と決意を語ったという。彼女は半年ほど前に日本に戻り、いまは医療支援のためのカンパ活動をしている。
 日本は国会でも軍事クーデターを非難する決議をしているが、ミャンマー支援の実情はきわめておそまつな実情らしい。クーデター後も防衛大学は軍からの留学生を受け入れるなど、むしろ軍事政権を支援しているような傾向も見られるという。

医療支援へのご協力をお願いします「僕たちは、絶対に暴力を使わない」。ミャンマー人の友達からそんな言葉を聞いたのは、軍事クーデターの翌日でした。「もし暴力的に抵抗をすれば、軍は『国の治安を守るため』という口実で、武力で鎮圧にかかる。今まで僕らは、そうやって何度も弾圧されてきたんだ」
 2015年まで半世紀もの間、軍事政権が続いたミャンマー。人々は、ストライキや抗議デモ、不買運動など、あらゆる平和的な方法で抵抗を続けました。しかし丸腰の国民たちを、ミャンマー軍は虐殺。活動家だけでなく、医療者や子どもたちまでもが殺されました。
 市民たちは、武力での反撃に舵を切りました。今も、ふつうの大学生だった若者たちが、慣れない銃を手に、40万兵力と言われるミャンマー軍とゲリラ戦を戦っています。(2022年4月のTBS『報道特集』が、非常にリアルな状況を伝えています。ぜひご覧ください)
 私はミャンマーで保健医療の仕事をしていました。しかしクーデター後、保健医療システムは崩壊。軍による弾圧で重傷を負っても、新型コロナが重症化しても、医療を受けられない人が続出しました。また現在はゲリラ戦で傷ついた若者や、村を焼かれジャングルなどで暮らす国内避難民たちが、緊急医療を必要としています。
 そうした人々の命をひとつでも多く救うため、以下のサイトで寄付を募っています。クーデター後1年半が過ぎて人々の関心も薄れ、支援も先細りになっています。しかしミャンマーでは今も緊急事態が続いています。ぜひリンク先の内容を読んでいただき、ご支援いただければ大変ありがたいです。よろしくお願いいたします。【がんばれミャンマー!医療支援】 (西尾浩美)

新講座<アジアのIT企業パイオニアたちに聞く>

第41回(2022.6.29)
  田中旬一さん 地方創生事業をグローバルに展開、将来はリベラルアーツ大学院大学設立をめざす

 岡山県瀬戸内市出身、両親の放任教育の恩恵を存分に堪能、好きなことに全力で挑戦、16歳からはアルバイトに精出しかなりの額を稼いでいたとか。学校の成績はほぼ最下位だったが、貯めた金でヨーロッパ各地を旅行、世界のおもしろさを知った。九州大学法学部にはセンター試験ではなく英語の論文試験で合格、その論文「民主主義について」では、旅で知り合ったオーストリアの政治学の教授から聞いた「西洋と東洋の民主主義の違い」という話を思い出しながら書いたのだという(担当/藤岡福資郎)。
 受験教育に毒された昨今の学生とはまるで違う破天荒な経歴だが、その異色ぶりそのままに卒業後は、2012年のアジアマーケティング株式会社を皮切りに、2017年には学校法人せとうちを設立、さらに日本ITビジネスカレッジ、アジア人材サービス開発会社、外国人キャリア教育研究所、日本ITシステム株式会社、株式会社BlockChainなどを次々に設立、多くの事業に乗り出している。代表取締役、理事長、CEOなど多くの肩書を持つが、まだ40代前半である。現在の事業内容は下図の通り。そのバイタリティあふれる話を聞いた参加者たちは日本にもすばらしい人材が生まれつつあることを実感、今後の活動への熱いエールも飛んだ。

 事業の基本精神は「地方創生」と「グローバル」。たとえば日本ITビジネスカレッジは、「岡山県で人材育成を通じて次世代の 100 年を創る 」をキーワードに、県内の廃校を借りて校舎とし、アジア各地からすでに130人の生徒を集めている。カリキュラムはIT、観光、介護などだが、ユニークなのが「注文式教育」という方針。「企業から求人需要をヒアリングし、求人票の内容に沿って授業カリキュラムを作成する」、「企業と提携して授業を展開し、インターンシップも実施」するなど、企業との提携を強めている。近く日本語教育部門も開設する。いまは実務教育本位だが、田中さんの構想はそれに止まらず、2030年以降は多様な価値観が求められる時代を生き抜くためのリベラルアーツ(理系、文系の垣根を超えた一般教養科目)を教える大学院大学を設立する計画だという。日本ITシステムやブロックチェーンなどIT関連会社も運営しており、これらの会社は卒業生の受け皿企業ともなりそうである。田中さんは全国各地に広がるいろんな地方創生事業とも連携を深め、地元に根ざししながら、同時にグローバルに展開するという。まさに発展途上である(右写真は瀬戸内海船上でのブロックチェーンの面接風景)。

 新講座<アジアのIT企業パイオニアたちに聞く>は、日本やアジア各国のベンチャー企業関係者を取り上げる予定です。ご期待ください。

講座<気になることを聞く>

第40 回(2022.6.12)
 升永英俊さん【日本は、国民主権国家ではない。日本は、国会議員主権国家である。現在の国会議員は国会の活動の正統性を欠く】②

 同講義2回目は前回(5.19)に引き続き、升永弁護士が取り組んできた「1人1票」運動について話を聞いた。彼が人口比例選挙の重要性に気づいたのは45年ほど前の1978年、コロンビア大学ロースクール(法科大学院)に留学したときだという。日本の衆院選では公示から投票日まで、最短で12日間しかないが、米大統領選の選挙運動はとてつもなく長い。そのことについて米国人の級友は「大統領選は、選挙という形式をとっているが、実は共和党支持者の国民と民主党支持者の国民の間の戦争である。南北戦争では国民が南と北に分かれて戦い50万人を超す死者が出た。これに懲りて米国民は、政治の意見の争いは、選挙で解決することにした。大統領選で過半数の得票を得たグループが大統領を選び、向う4年間、行政権を独占する。だから、予備選を含めると2年半超もの長期間、国民は次の大統領選で過半数を得票すべく草の根で議論をし、選挙運動をやっている」と語った。升永さんはこの時初めて「選挙が民主主義国家の心臓だ」と知り、そして感動した。
 その経験のもとに、彼は1人1票選挙の実現に取り組んできた。その経緯は、前回報告に寄稿していただいた通りである。何度かの最高裁判決を受けて1票の格差は徐々に縮まりつつあるが、与党たる自民党は憲法改正草案において、その差をかえって広げることをねらっている。「これを許したら1人1票制度は、とくに参議院において絶望的になるだろう」と彼は話した。それを防ぐためにはどうすればいいのか。その思いはメンバーに事前に配布された文書の最後のくだりに込められている。

人口比例選挙を支持される方は、今回の参院選だけは、憲法改正が絡む特別な選挙と考えて、自民党に対する1回限りの批判票として、立憲民主党、共産党、社民党、れいわ(但し、人口比例選挙を支持している。)のいずれかに、投票して頂きたいと私は願っています。私は、相対的に当選者数が多いと見込まれる立憲民主党又は野党統一候補に投票します。

 7月参院選を前にした時期でもあり、升永さんの熱弁に呼応するかのようにいろんな意見表明や質疑が繰り広げられ、講義はいつもの時間を大幅にオーバー、10時半過ぎまで続いた。今回の参院選の重要さに鑑み、もっと議論する場を持ちたいとの意見も出た。

民主主義的選挙のリテラシー 「選挙は国会の多数を獲得するための国民の戦争である」というのが升永さんの考えである。そのことがよくわかっているのが自民党で、多数を獲得するためにあらゆる努力をし、そして成功している。それに対して野党はどうか。国民はどうか。投票率が低いのは戦線離脱で論外としても(それは与党を有利にもしている)、選挙でどのような代表を国会に送り込むのか。そのための戦術は何なのか。まず大事なのは具体的候補者よりもその人が所属する政党であり、もっと言えば、野党候補の中でも、政党の違いを超えて、その選挙区で当選可能性の高い野党候補をこそ選ぶべきである、というのが升永さんの考えだと思われる。そもそもこれは、学校でも教えるべき民主主義的選挙に関する一つのリテラシーではないだろうか。そのためにも大事なことが、国民が選挙に平等に参加できるための前提、「国民の過半数が国会議員の過半数を選ぶ」選挙制度「人口比例選挙」の確立ということになるだろう(Y)。

講座<若者に学ぶグローバル人生>

第39回(2022.5.30)
インドネシアのサムスル・マアリフ(Sasul Maarif)さん。2013年、パジャララン大学日本語学科卒、南山大学日本語別科や大阪大学大学院文化研究科博士課程で学び、現在、パジャジャラン大学日本語学科非常勤講師。
 日本のポップカルチャーがきっかけで日本に興味を持ち、小学生では「聖闘士星矢」、「ドラゴンボール」、中学時代は「るろうに剣心」のファンだった。「日本の文化で育ったと言っても過言ではない」、さらには「日本は夢の国」だと言ってくれる、ありがたい日本ファン。現在、母校で日本語を教えている経験から、いまアジアの若者たちが日本語を学ぶ理由、日本語学科の卒業生の進路などについて話していただいた。

日本語を学ぶ人は多いが来日者は少ない その時示された日本語学習者の数でインドネシアが世界第2位 であるとのデータが興味を引いた。その一部をグラフにしたもので見ると、数の多さが際立つ。インドネシアの人口は世界第4位ではあるけれど‣‣‣。
 ところで第21回講義でも紹介した下図によると、日本滞在の外国人数は中国、韓国、ベトナム、フィリピンの順で、留学生でも中国、ベトナム、ネパール、韓国となっている。
 インドネシアで日本語を学んだ人の半数は現地の日系企業に就職しているという。なぜ日本に来ないか。その理由はイスラム教にある。インドネシアは世界最大のイスラム教国であり、人口の9割がイスラム教徒である。食べ物の制限(ハラール)もあるし、1日5回のお祈り、ラマダーンの断食など厳しい戒律があり、生活環境の違いが来日を思いとどまらせているらしい。サムスルさんは「祈りの場所を用意していただけると、インドネシアからの雇用もスムーズにいくのでは」と話していた(Y)。

Slack内に若者グローバルネットワーク開設 本塾は開設2周年を期して<Online塾DOORS(略称OnDOORS)>と改称しましたが、これを機にメンバーやスピーカーの交流用に開設しているslack内に「若者グローバルネットワーク」のチャンネルを設けました。これまで話していただいたアジア、アフリカ各地からの留学生、あるいは元留学生、さらには海外で活躍する日本人の数もすでに20人を超えています。スピーカー同士の相互交流を図るとともに、新たな仲間を求めてのチャンネル開設です。
 世話役を第33回に登場した中国出身の大森静さんにお願いしました。今後は本slackだけの加入も認め、あわせて新たなスピーカー発掘にもなれば、と思っています(参加希望者は事務局info@cyber-literacy.comまで。サムスル先生にもいろいろご協力いただけるようになりました。
大森静です。中国から日本に来て、いまは日本人と結婚、福岡市に住み、4歳の子どもがいます。九州大学研究室で働いています。よろしくお願いします。楽しい場にできるように頑張ります(^o^)。
 英語に興味がある日本の学生と日本語をより学びたい外国人のランゲージエクスチェンジの場になればいいと考えています。
 日本にいる外国人のキャリアデザイン、学習情報、食べる情報、法律の情報、言葉の情報、定住の情報、子育て支援情報、医療情報、婚活情報、資源のリサイクル情報など、いろんなことを話し合える場になればと思っています。
 異なる意見も理解してあげる、理解できないことは寛容してあげるという謙虚の気持ちで付き合いましょう。お互い尊重して気持ち良いお話をしましょう。意見の争いがあればその場で議論してその場で終わり、後に残さないようにしてください。自分が欲しくないことを人に渡さないこと。
 友だちも紹介してください。自分が好きなことを他人といっしょに喜びたい方、人のお役立ちたい方、人とwinとwinの考えをお持ちの方、人に寛容な心をお持ちの方、日本の社会にいいことを与えたい方、留学生の方にいいことを与えたい方、日本にいる外国人にいいことを与えたい方を私たちは歓迎します。

講座<気になることを聞く>

第38 回(2022.5.19)
 升永英俊さん【日本は、国民主権国家ではない。日本は、国会議員主権国家である。現在の国会議員は国会の活動の正統性を欠く】

1942年生まれ。弁護士(第一東京弁護士会)・弁理士。米国のコロンビア特別区及びニューヨーク州弁護士。TMI総合法律事務所シニアパートナー。元東京永和法律事務所代表兼東京永和特許事務所顧問。東京大学法学部卒業、後に東京大学工学部も卒業。
 升永弁護士は選挙における「1人1票」実現運動に精力的に取り組んできた。次期衆院選をめぐって「10増10減」の折衝も始まる予定だが、民主主義の基本である選挙における「1人1票」がなぜ守られていないのかを聞いた(担当/藤岡福資郎)。
 以下、骨子を当日示された図に沿って報告する。

<1>日本は国会議員主権国家であることの3つの論点

<2>国民主権国家と国会議員主権国家の違い(国民主権国家でないために、国民の少数が選んだ国会議員の多数が内閣総理大臣を選出し法を議決しているという矛盾)

<3>米国ペンシルバニア州では最大投票区と最小投票区の差は1人。2012年参院選の差は903,451人であるとの例示

 この授業は新生Online塾DOORS(略称OnDOORS)の旗揚げ講義として行われ、メンバー以外にも広く声をかけ、法律専門家の方にも何人か参加していただた。升永弁護士は長年の運動の意味とその成果について丁寧に、かつ熱っぽく語り、参加者からは「我々の根源的な問題がここにもあったか!と反省しきりで拝聴しておりました。『国会議員主権国家』は正鵠を射た表現ですね。民主主義が、何によって立つものであるのか、にダイレクトに目を向けさせてくれます」、「一票の格差についての裁判は耳にしていましたが、いままで真剣に考えたことがなく、今日は非常に勉強になりました。中国との比較で、かの国はまったく民意を問わない党幹部の選出に関して、日本は公平な選挙で代表を選ぶ民主国家であると信じて疑っていませんでしたが、今日のお話を聞いて国会議員選挙に正当性がないことに気づかされました。この年になって、お恥ずかしい限りです」という〝目から鱗〟的な感謝の言葉が寄せられた。
 新生Online塾DOORS旗揚げ講義にふさわしいばかりか、近づく参院選を前に、選挙民の自覚を促すためにも恰好の話だった。かりそめの「主権者」を〝不正〟に選んでいる、あるいは選ぶことすら放棄している憲法上の(本来の)「主権者」よ目覚めよ!
 次回は6月12日(日)午後8時からです。視聴希望者は当欄コメント欄やinfo@cyber-literacy.comまで。なおOnline塾DOORSでは新しい参加メンバーを募集しています。<Online塾DOORSへの招待>をご覧いただいた上で、希望者は上記へお申し出ください。各自を真綿のように閉じ込めている扉(DOOORS)をこじ開けて広い世界へ!

韓国の大統領選挙との違い 講義を聞いてくれた九州大学工学研究院の小林泰三先生が「『一人一票=完全人口比例』が間接民主主義を成立させる絶対条件であることは、比例を勉強する小学生でも理解できる平明な理屈です」と感想を述べてくれたのは大いに我が意を得た思いがした。
 たとえば2022年3月の韓国大統領選(1人1票選挙)と日本の1票の格差2倍の衆院選選挙の違いを考えてみよう。

 両氏の間の得票差は0.73%(=48.56%-47.83%)であった。即ち0.37%(≒0.73% × 0.5)の僅差で、尹(ユン)氏が大統領に当選し、政権交代した。投票率は、77.1%。日本の非人口比例選挙の2021年衆院選の投票率55.9%と比べて高いのは、韓国大統領選挙が人口比例選挙であることと関係していると推察される。衆院選(小選挙区)では、1票の格差は、1:2.1倍であり、全人口の47.0%が全衆議院議員465人の過半数(50.1% 233人)を選出している。
 議院内閣制であっても、人口比例選挙(=1人1票選挙)であれば、主権を有する全国民の50%超(過半数)が、国会議員を通じて行政の長(内閣総理大臣)を選出することになるので、主権を有する全国民の過半数(50%超)の意見が行政の長を決定する。 
 そして選挙により成立した政権与党(単独与党、連立与党の双方があり得る)の次回選挙までの政治が過半数の国民に不人気であれば、主権を有する国民の過半数は次回選挙で野党に政権を交代させることが出来る。したがって、次回選挙までの与党(連立与党も含む)の国政運営は国民の過半数に不人気であることが許されない。おのずから与党の国政運営は緊張を伴ってなされることになる。これが、人口比例選挙の唯一かつ肝心要の長所である。
 このことは、2021年4月現在で、日本の1人当りGDP(購買力平価換算/IMF)が韓国に劣っていることとも無関係ではないと私は思っているが、これについては私見を記すにとどめる。 1人1票訴訟の経過にふれておくと、

①わたしどもは、2009年に衆議院選挙違憲訴訟を全国で提訴した。2009年から今日まで、国政選挙毎に全国の14高裁で提訴し、累計で120個の高裁判決と8個の最高裁大法廷判決を獲得した。
②8個の最高裁大法廷判決の結果、2022年の本国会で10増10減の衆院選選挙区割り法が成立すると予測されるようになった。
③2009年の衆院選では、全人口の46%が全衆院議員の過半数を選出していた。
④同8個の最高裁大法廷判決の結果、10増10減の選挙区割りにより、全人口の48%が全衆議院議員の50.1%を選出することになる。
⑤これにより、日本も人口比例選挙(即ち、全人口の50.1%が全衆議院議員の50.1%を選出する選挙)まで、全人口の2%(=50.1%-48%)の差まで肉薄する。

 すなわち、人口比例選挙まで(国会議員主権国家を脱して、国民主権国家に変わるまで)もう一息のところまで来たということである。(升永英俊)

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