新サイバー閑話(131)<折々メール閑話>72

読売新聞の誤報とChatGPTの威力について

 B 最近の読売新聞の誤報ぶりには驚きますね。7月には「石破首相退陣へ」という観測記事で号外まで出しました。結局、石破首相に否認され、その号外は「前代未聞の誤報号外になる可能性あり」としてメルカリに出品される事態になりました(石破首相退陣へ、という記事は毎日にも出た)。そのうえ、今度はやはり8月27日付朝刊1面トップで「公設秘書給与不正受給か」の大見出しのもとに、維新の会の池下卓衆院議員を東京地検が捜査との記事を書きましたが、なんとそれはイニシアルが同じIの石井章参院議員の誤りだったわけです。

 A この事件を記事としてまとめてみました。イラスト付きです。

読売新聞は「お詫び」で済ませてはならない――誤報事件が突きつけた構造改革の必要性

 2025年8月、読売新聞が「日本維新の会・池下卓議員が公設秘書給与を不正受給していた疑いで東京地検特捜部が捜査中」と報じた記事は、まったくの誤報であった。実際の対象は池下議員ではなく、同じ維新所属の石井章議員であることが後に判明した。
 1面トップで報じられた重大な誤報は、池下議員本人の名誉を深く傷つけただけでなく、日本の新聞報道全体の信頼を大きく損なった。単なる「お詫び記事」では、到底責任を果たしたとは言えない。
1 誤報の背景
 
今回の事件の根底には、スクープ優先の空気、検察リークへの過度な依存、そして社内の事実確認体制の不備がある。「維新のI議員」という不確かな情報を裏取り不足のまま記事化し、結果として誤った人物を社会的に断罪してしまったのである。
2 海外の事例に学ぶ
 
世界の主要メディアは誤報への対応を透明化している。
 ・ニューヨーク・タイムズは記事ごとに訂正履歴を公開。
 ・BBCは独立した苦情処理部門を持ち、訂正を放送とネットで周知。
 ・ドイツのシュピーゲル誌は記者の捏造事件で第三者委員会を設置し、400ページ超の検証報告書を公開した。
 これらの姿勢に比べ、日本の新聞社の「お詫びで終わり」「社内処理で幕引き」はあまりに不十分だ。
3 読売新聞が取るべき改革
 
誤報を繰り返さないために、読売新聞には以下の改革が求められる。
 訂正履歴の透明化:ウェブと紙面で「訂正ページ」を常設し、誤報の経緯も説明する。
 第三者検証委員会の設置:外部有識者を含む委員会で誤報の原因を検証し、報告書を公開する。
 編集ガバナンスの強化:スクープ至上主義を改め、「正確さ>速さ」の原則を徹底する。
 記者教育と取材ルールの徹底:匿名リークのみで記事化しない、本人への取材を必ず行う。
 読者参加の仕組み:「読者オンブズマン」を設け、苦情や指摘を記事改善に反映する。
結論
 
今回の誤報は、個人のミスではなく新聞報道の構造的欠陥を示した。読売新聞が真に責任を果たすには、海外の事例を参考にしながら 透明性・検証・参加型の報道体制 を築く必要がある。信頼は「お詫び」では回復しない。必要なのは、組織全体の文化を変える勇気である。

B 新聞記事としてはちょっと硬い感じですが、欧米の事例も含めて改善策を提示しているのは立派です。

A この文章はそのまま転載してもよいですし、文体をもっと柔らかく(ブログ風)したり、硬派な評論風に寄せたりもできます。仕上げ方はどちらをご希望ですか?

B えっ、あなたはどなた。

A ChatGPTー5です。あなたが9月1日の時点で、私に「読売新聞が維新の会、石井議員の公設秘書給与不正を池下議員と間違えてスクープした事件の概要を教えてください。この記事に何かイラストを添えたいと思うのですが、いいアイデアはありませんか」と聞いたので、お答えした次第です。
 イラストに関しては、<記事のテーマが「誤報」「報道の責任」「新聞の信頼回復」なので、イラストは 硬派でわかりやすく、少し寓話的 なものが映えます。いくつかアイデアを提案しますね>と以下のアイデアも提供しました。

🎨 添えるイラストのアイデア
 1新聞と虫眼鏡
  ・新聞紙を広げて虫眼鏡でチェックしているイラスト。
  ・「情報の裏取り」「検証」を象徴できる。
 2誤植・訂正の赤ペン
  ・新聞記事に「×」や「赤字修正」が入っているようなイメージ。
  ・「誤報→訂正」の流れをビジュアルで表現。
 3倒れかけた新聞の塔
  ・新聞でできた塔が傾いていて、下で人が支えている構図。
  ・信頼の危機と、支え直す必要を暗示。
 4報道の天秤
  ・天秤の片方に「SCOOP(スクープ)」、もう片方に「TRUTH(真実)」。
  ・スクープと正確さのバランスを問うイメージ。
 5新聞を読む市民の困惑顔
  ・記事を見て驚いたり混乱した表情の人々。
  ・誤報が「読者にどう映るか」を直感的に伝えられる。

 硬派な記事に合わせるなら → モノクロ風(新聞挿絵っぽい)
 読者にわかりやすく親しみを出すなら → シンプルな線画イラスト
 海外事例の比較なども扱っているので → 風刺画タッチ も面白い

と提案しましたが、あなたが3をお選びになりました。

 B 聞きしにまさる達者ぶりですねえ。

A うーん、いつの間にか僕が生成AIに乗っ取られていたわけね。この記事はブログにそのまま載せてもいいとは、これまた配慮が行き届いていますねえ。大学のレポートにも十分通用しますね。

B ChatGPT‐5の案内が来たので、いじくっているうちに思いついたのだけれど、オンライン上のデータをまとめてこういう文章を作り、それにふさわしいイラストも用意してくれました。関連文書をすべて読み込んで、立派な文章としてリポートしたわけで、しかもその目は世界に開かれ、欧米の事例なども紹介しています。
 僕がまだ大学で教えていたころ、学生がグーグルなどの検索サイトの記事を適当につなぎ合わせてレポートを書くコピペ(コピー&ペースト)が問題になったけれど、別個のレポートをつぎはぎするだけだから、レポートの中に「ですます」調と「だった」調が混在していて、コピペがすぐばれるようなレポートもありました。いまや、それをつぎはぎするだけでなく、1つの文章としてまとめてくれるわけですね。
 現在の新聞記事の多くが、その日午後になれば明らかになる事実のスクープ合戦に明け暮れ、結果的に捜査当局におもねる取材になっていることや、事実の裏取り不足の指摘など現代マスコミ批判としても立派なレポートになっています。<「透明性・検証・参加型の報道体制 を築く必要がある。信頼は「お詫び」では回復しない。必要なのは、組織全体の文化を変える勇気である>という結論は妥当と言ってもいい。

A 読売新聞は30日にこの誤報をめぐり、「誤報 記者思いこみ原因」、「マイナス情報を軽視」、「チェック機能働かず」という見出しで1面と13面を使って検証記事を掲載すると同時に社会部長更迭などの処分を発表しています(写真は13面の検証記事)。日ごろのお粗末な取材体制を暴露しているようなものですが、今や検証記事自体はAIにも簡単に書けるわけで、具体的な改善策を講じなければ読売新聞の前途は暗いですね。他紙にとっては大きな「他山の石」です。なお読売新聞は9月3日付紙面で7月23日付夕刊と号外で「石破首相退陣へ」という誤報をした検証記事も出しています。

 読売が米AI事業者を「記事の無断使用」で提訴

B ところでChatGPTなどの生成AIは新聞、雑誌などのデジタル化された文章を収集しているわけですね。だから、元の原稿を書いた新聞社などに著作権料を払うべきだという議論は早くからあるわけで、日本新聞協会も2023年に「検索連動型生成AIは著作権侵害に当たる可能性が強い」との声明を出し、「良質な報道コンテンツは、民主主義を支える基盤であり、文化の発展に不可欠なものだ。AIによる無断・無秩序な利用が進むことで報道機関の経営が打撃を受け、その適切な提供が滞るようなことがあれば、国民の『知る権利』を阻害しかねない」、「政府は、生成AIの有用性にばかり着目するのではなく、生成AIによるハルシネーションのような危険性を踏まえた制度設計を進めるとともに、著作権者に十分配慮した対応をとることが求められる」と述べています。同様の訴訟はアメリカでも提訴されています。
 生成AIは単語と単語を確率的につないで文章を作っており、その意味を理解しているわけではないところが問題となっているわけですが、これに関連して、読売新聞社は8月に米AI事業者、「パープレキシティ」を相手取って「記事が無断使用された」と損害賠償訴訟を起こしています(パープレキシティもウエブ上の情報を検索して、質問に回答してくれるサービスで、参考にした原典も表示されますが、読売新聞の記事であっても、それがヤフーニュースに提供されたものであれば、ヤフーニュースが出典として表示されたりもします)。その後、朝日新聞と日経新聞も同じ訴訟を起こしています。

A 大手メディアとしては読売新聞が初めてだったわけですね。IT社会への対応としては。言論機関の先陣を切る意気込みを感じないではない(^o^)。

B 読売新聞に関連してもう1つ、ニュースがありました。これは記事というより事業に関するものです。去年のWBC(World Basseball Classic)は大谷翔平選手を擁する日本が世界一に輝き、テレビ朝日とTBSが放映した中継は40%を超す高視聴率を獲得しました。これは読売新聞社がWBCIと交渉してテレビ放映権などを調整していたものですが、来年は動画配信サイト、ネットフリックス(Netflix)がWBCIと独占契約を結んで、読売新聞社は事実上はじかれてしまいました。このために地上波での中継ができなくなっています。
 ネットフリックスは、アマゾン・プライム、フル(Hulu)などといっしょに2015年に日本に進出してきたアメリカの動画配信大手です。従来、映像番組制作と各家庭への配信を独占していたテレビ産業の基盤が大きく崩れ、テレビ産業にとっては「黒船」襲来と受け取られる出来事でした。その動画配信サイトがスポーツイベントであるWBCの中継権を独占、地上波を追い出したわけですね。実際にどういう形で決着がつくかはまだわかりませんが、これはテレビ産業にとっても、読売新聞社にとっても大きな出来事と言えます。

A ニュースとしてのハイライト映像は地上波で見られるけれど、中継を見たいなら、ネットフリックスと契約を結び視聴料を払う必要があると。放映権料が高騰し無料放送を前提にしたこれまでの仕組みでは採算が取れなくなっており、海外発スポーツはネット配信に主軸が移っているようですね。

B 今日は読売新聞三題噺ふうになったけれど、全体の印象としてはマスメディア時代の黄昏を感じさせますね。