新サイバー閑話(63)<折々メール閑話>⑬

自民党&日本に深くたくみに潜行した統一教会

B 安倍元首相の銃撃事件をきっかけに、統一教会(旧統一教会と現世界平和統一家庭連合を一括してこう表記)は、信者の世界だけでなく政治の世界にも深くたくみに潜行していたことが、日に日に明らかになっています。
 若いころ水中ダイビングで比較的浅い海底に立った時、ふと前の岩場を見ると穴から大きなウツボがこちらをにらんでいた。あの獰猛な面構え。目を移すとそこにも、振り向いた背中の後ろにもウツボがいて、ゾッとしてあわてて浮上したことがあります。その恐怖に似た感覚を今回、思い出しました。統一教会はこんなに日本社会にひたひたと浸透していたのか、と。長期に及ぶ異常とも言える安倍政権を支えていた構図の一断面がはっきり見えたようにも思います。

A 統一教会と議員に対する自民党の調査は相変わらずおざなりで、本丸ともいうべき安倍元首相、細田衆院議長などは調査の対象外、数々の関連が明らかになっている山際大志郎経済再生担当相も閣僚に居座ったままですね。
 岸田首相は最近の国会で統一教会に対する宗教法人法に基づく調査を「質問権」を行使してやると言ったものの、解散命令請求が認められる法令違反として刑法だけでなく民法まで含まれると答弁するのに、1日の朝令暮改がありました。こんな腰の軽さでは、本気で解散命令を考えているようにも思えません。世論調査の内閣支持率急減にあわてふためき、この場をなんとか切り抜けようという魂胆が見え見えではないですか。

B 国政選挙で選挙の手助けをする見返りとして、統一教会側が自民党国会議員に対して教団の政策を推進するよう「推薦確認書」を提示し、署名を要求していたことも明らかになりました。そりゃそうでしょう、選挙事務所に教団員を無償で応援にかけつけさせ、雑務や電話応対をさせていた教団側からすれば、当然の見返りだったとも言えます。しかしこれは教会が日本の政治に影響を与えようとしていた証拠としてきわめて重要です。この事実は自民党調査では表に出てこなかったですね。自らの恥部を隠そうとしたのだと思えます。

A 統一教会と自民党議員の癒着は地方議会も例外ではありません。教団員の一票の重みは地方自治体選挙でこそ増すわけだから当然でもあります。妙なツイート発言をめぐって紛糾した小林貴虎三重県議の統一教会との深い関係はすでに明らかですが、自民党富山県連会長は10日、国会議員や県議を集めた会議で「統一教会と県内議員との関りについて調査しないことに決めた」との方針を明らかにしました。
 日刊ゲンダイDIGITALが「調査したら大混乱となり、有権者の支持を失うと恐れて、調査しないと決定した可能性がある」と書いています。こういう「臭いものにふた」というのは、政界のみならず日本社会の悪弊だと思いますが、もはや悪臭芬々、すべてを明るみに出すべきときだと思います。
 富山県では県知事や富山市長の統一教会との関係も指摘されています。これも保守王国の岐阜県では、中日新聞調査によると、県政自民クラブの19人が統一教会や関連団体のイベントに出席したと回答したようです。この種の例は各県で見られるのでは。

B 推して知るべし、でしょうね。

A 統一教会の地方への浸透ぶりを示す一つの指標として、2012年以来、地方議会で成立している「家庭教育支援条例」の広がりがあります。財団法人、地方自治研究機構の調べだと、2022年9月現在で、都道府県条例が10、市町村条例が6成立しています(表)。
 提案者は議員や市長となっていますが、各種報道によれば、提案を働きかけた人物に統一教会(勝共連合も含む)関係者の影が見え隠れしています。提案議員と統一教会の直接的な関係が指摘されている例もあります。最初の熊本県条例が成立した2012年は第2次安倍内閣が発足した年でもあります。
 これとは別に、国レベルの家庭教育支援法を制定しようとする動きがあり(野党の反対で現在は棚上げ)、全国34の地方議会が家庭教育支援法の制定を求める意見書を可決しています。ここでもたとえば熊本県や神奈川県などで統一教会の関与が指摘されています。

B これは2006年、第1次安倍政権下で実現した教育基本法改正と歩調をあわせた動きです。いじめ、登校拒否、虐待などの原因は親の責任だとして、公権力の家庭への介入をめざしています。その背景には伝統的な家族観があり、核家族、共稼ぎ、貧困家庭、不十分な福祉政策など現在の家庭を取り巻く環境は捨象したままです。ジェンダーフリー・バッシングの動きとも軌を一にしており、個人(子どもや障碍者、性的マイノリティーなど)の基本的人権への配慮が極めて希薄です。
 実はこれは自民党改憲草案に脈々と流れる考え方でもあり、安倍政権や自民党、公明党、さらには維新などの保守勢力が推進しようとしている政策を、同じ考えに立つ統一教会が支援しているとも言えます。二人三脚と言ってもいいし、政権側が統一教会の強力なエネルギーを利用し、運動の下支えどころか実質的な駆動力にしているとも言えるでしょう。

A 統一教会は2015年に世界平和統一家庭連合と改称したように、「家庭」、「家族」が教えのキーワードで、その家族観は、創始者の故・文鮮明氏を「真のお父さま」と呼び「神様の下に人類が一つの家族である世界」を理想に掲げており、自由恋愛や婚前交渉は論外、信者には合同結婚式で相手が選ばれます。社会の構成単位が個人ではなく、教主を頂点とする家族なわけですね。個人の自由をまったく尊重していない。むしろ否定している。生まれた2世へのしばりもそうですね。

B 家庭が大事だというのはその通りで、子どもの教育には親もあずかってしかるべきですね。たしかに安倍元首相のふるまいを見ていると、この「金持ちのお坊ちゃん」は家庭でどういうしつけを受けてきたのかと不思議に思うことが多かったですね。その人が家庭教育が大事だというのも不思議と言えば不思議です。
 冗談はさておき、一連の動きの背景には国や地方自治体が家庭に介入する国家統制的な考えが潜んでいます。「法は家に入らず」という格言もあり、この種の立法には慎重でなくてはいけません。
 自民党と統一教会の癒着は、選挙で協力してもらう見返りに社会的認知と広報㏚をするというだけに止まらず、もっと深いところで結びついている。もはや同根と言ってもいいでしょう。来年4月に設置予定の「子ども家庭庁」の名称は、元は「子ども庁」だったらしい。統一教会側が自らの働きかけの成果として報告しているほどです。

A 統一教会は、「山上家の悲劇」に象徴されるように、家庭を破壊しつつ、家族愛を訴える。大いなる矛盾を抱えた組織です。

・「ウツボの恐怖」と闇を払う覚悟

B 問題を広げると、自民党改憲草案と統一教会の政治組織、国際勝共連合の見解が「緊急事態」や「家族条項」などでほとんど一致していることが指摘されています。ニワトリが先か卵が先か、この辺は何とも言えないけれど、結果的に、統一教会の意向が陰に陽に最高法規にまで忍び寄ってきている感じがしますね。
 統一教会と政権与党の考えが一致しているから統一教会の影響を受けているとはもちろん言えませんが、統一教会の考えと家庭教育支援条例の内容が似ていることは確かで、自民党議員と統一教会のどちらが主導しているのかは非常にあいまいです。

A 暴力的とも言える献金などを強要していた「反社会的集団」の統一教会と政権与党が手を組んでいたと。

B 前回も言及しましたが、世耕参議院議員は「この団体の教義に賛同する我が党議員は1人もいない。我が党の政策に教団が影響を与えたことはない」と語ったけれど、語るに落ちるというか、影響を受けたのではなく、もともと同じ考えだと言うつもりでしょうか。その類似点、および相違点についても釈明してほしいですね。
 これに関連して、「文春オンライン」(9月22日)は下村博文衆院議員が政調会長時代、統一教会の関連団体幹部から陳情を受け、党の公約に反映させるよう指示を出していた疑いを報じています。統一教会の改称が認められた2015年の文科大臣は下村氏でした。

A 自民党の野田聖子・前男女共同参画担当大臣が超党派の女性議員らでつくる勉強会で、「伝統的な価値観を重視する宗教団体が自民のジェンダー政策に一定の影響を与えた可能性がある」という認識を示したとも報道されました。

B すなおに見ればこういうことだと思いますね。ここ十数年、戦前への回帰の動きが強まってきていますが、保守政治の着々とした動きの背後、少なくともその一部に、統一教会の存在があることがしだいに明らかになってきたということでしょう。
 それは安倍政治がめざしていたものであり、さらに言えば、彼が念願していた憲法改正への下準備でもあったように思われます。国会で改憲する、改憲すると言いつつ、裏ではなし崩し的な〝改憲〟状態を進めようとした面を否定できないですね。

A 自民党議員たちが選挙協力を受けることで、統一教会に隠れ蓑を貸したり広告塔になったりすること自体が大いに問題だけれど、自らの政策遂行のために反社会集団と手を組んでいる実態こそをより深刻に受け取るべきですね。まるで同じ穴のムジナではないですか。

B 自民党議員が統一教会との関係をあいまいにしようとしている真意は、どうやらそこにありそうです。冒頭でムジナならぬ「ウツボの恐怖」と言ったのは、統一教会がいつの間にか日本の深部に深く浸透してきていることへの驚きです。これが安倍政治の本質だったと思いますが、いま岸田政権はその安倍政治を踏襲すると言っています。
 この日本社会に広がる「深く暗い」闇を払うには、野党も、メディアも、私たち自身も、相当の覚悟が必要ではないでしょうか。

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