自公の票が国民や参政に流れて、何が変わるのか
B <折々メール閑話>前回の投稿が4月6日だから、早や3カ月以上たってしまいました。この間もコメ不足と小泉農林水産大臣登場、東京都議選など、話題はいろいろあったけれど、ちょっと体調を崩したこともあり、特筆すべきこともないと思えば、そのようにも思え、なんとなく過ぎてしまいました。そして、あっという間に参院選がやってきました。
A このところの選挙で驚くのは、参政党の躍進ですね。少し前までは石丸(伸二)ブームや国民民主党の躍進があったけれど、石丸新党は都議会議員選挙では全滅しました。国民民主党はこれまでの0議席に対し9議席も獲得しましたが、山尾しおり元議員の参院選立候補をめぐる公認と取り消し騒動も影響して(本人は無所属で東京選挙区から出馬)、一時の勢いがなくなったようです。これに対して、参政党は都議選も4選挙区で候補を立て、世田谷、大田、練馬の3選挙区で、しかもそれぞれ高位で当選しました。大阪府尼崎市議選、愛知県西尾市議選、福井県あらわ市議選でもトップ当選しています。鎌倉市議選でも1人当選しましたね。
B 参政党は2000年に神谷宗幣氏が立ち上げた政党で、2022年の前回参院選で神谷氏が比例区で当選、2024年の衆院選では比例で3議席を獲得しました。地方議員はすでに140人以上います。
参政党の新日本憲法構想案(「改憲」ではなく「創憲」と言っている)を見ると、前文では「日本は、稲穂が実る豊かな国土に、八百万の神と祖先を祀り、‣‣‣、心を一つにして伝統文化を継承し、産業を発展させ、調和のとれた社会を築いてきた」、「天皇は、いにしえより国をしらすこと悠久であり‣‣‣、国全体が家族のように助け合って暮らす、公権力のあるべき道を示し、国民を本とする政治の姿を不文の憲法秩序とする。これが今も続く日本の國體である」と、まるで戦前の建国神話のような文章が続き、個々の条文には人権に関する章もなく、全体に法律の体裁も整っていない。時代錯誤の極右政党としか思えませんね。
理念的には、れいわ新選組と対極にあると言ってもいい政党ですが、既存組織とは関係なく支持拡大をはかっている点や、神谷代表が山本太郎代表とほぼ同年代で、党設立も1年の差であるなど、れいわ新選組と表面的に似通ったところもあります。選挙公約などでもナショナリズムや反グローバリズムなどの保守的主張に加え、反ワクチンや減税などの口当たりのいい政策を掲げています。
このヌエ的で政治的に稚拙な極右政党が今回参院選の各種投票予想調査でも、異常な躍進ぶりであることは、やはり大きな驚きです。支持者たちは憲法構想案を読んでいるのでしょうか。
NHK世論調査(6月27日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかける「RDD」という方法で実施)による各政党支持率は左図の通りです。参政党はれいわを上回っているわけですね。
これを年齢別に見ると以下の通りです。この表から次の点が指摘できるのではないでしょうか。
①自民、立民、公明、共産という既成政党は高齢者の支持が高いのに対して、国民、れいわ、参政は若者層の支持が多い。このところの選挙で明らかなように、高齢層と若年層の意識の乖離がいよいよはっきりしてきた。維新は明らかに退潮傾向にある。
②自民、立民、公明、共産という既成政党の票が新興の国民、れいわ、参政党などに流れているように見えるけれど、ここで推測をたくましくすると、与党たる自公の票が参政党や国民民主に流れている、すなわち民意はより一層保守化しているというか、右方向に流れているのではないか。
A 参政党は第3、、あるいは第4与党だと言われているみたいですが、「日本ファースト」などという耳ざわりのいいワンフレーズにいとも簡単になびく選挙民の、それこそ民度の問題だと思いますね。背後には怪しげな宗教団体も存在するようですが、そもそも党首が信用出来ない。おまけに言うことにこと欠いて、れいわは移民推進政党だなどとデマを振りまく。「国民の危機感を煽り、自身の主張を言い募るのはナチスと同じだ」とれいわ三重サポーターズの仲間が言っていました。
B 右翼政党の台頭はドイツで「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進したように、世界共通でもありますね。既存政党に不信をいだく有権者がテレビで「れいわか参政党に入れる」と言っていましたが、れいわと参政党というまるで違う政党が同じように見られているわけです。
・今回も逸材そろうれいわの候補者
A 今回参院選でれいわは安保問題の専門家、東京外国語大学名誉教授の伊勢崎賢治、経済政策の長谷川うい子、主婦パワーの奥田ふみよなどの逸材を比例に立て、選挙区でも東京で元衆院議員の山本譲司、神奈川で元外交官の三好りょう、京都で教育学博士の西郷みなこ、広島で弁護士のはんどう大樹など、他党とは明らかに際立つ人材を擁立しています。顔ぶれ一つ見ても、れいわの政治に取り組む真剣さが感じられますね。有権者がかっと目を見開いて投票することを期待したいです。伊勢崎氏は比例の特定枠だから、当選したも同然ですが、国際問題がいよいよ緊張している今、なぜ他の政党にこういう人材がいないのかはよく考えてもらいたいです。
B 以前、このコラムで政治家の劣化を取り上げたけれど(『山本太郎が日本を救う』第1集、「まともな人間を育てない教育」参照)、保守化する若者層を見ていると、いびつな社会や教育の犠牲のようにも思えます。まともな人びとももちろん多いわけだけれど、大きく見ると、フランスの歴史家、エマニュエル・トッドが言うように、教育が知性を育むことから離れて、ただの「資格」取得のためとなり、物事を深く考える暇もなくただ学歴だけを積み上げていく人間を生み出している。これは世界的傾向で、日本もまったく同じ、それは指導層にも言えるし、国民全般にも言えるのでは。こういう状況下での参政党躍進でもあると思います(トッドは最近、『西洋の敗北』という本を書き、独特の視点からウクライナをめぐる現代世界情勢を分析している)。
A 今回参院選比例で興味深い顔ぶれとしては、2024年都知事選で落選した蓮舫氏が立憲民主党から再挑戦すること、梅村みずほ氏が維新から参政党に鞍替えして立候補したこと、タレントのラサール石井氏が社会民主党から立候補していることですね。先の都知事選で15万票を得たIT技術者の安野たかひろ氏も「チーム未来」から立候補しています。
B ラサール石井氏の社民党からの立候補には男気を感じますが、じり貧傾向の社民党を救えるかどうか。
A 都知事選では石丸ブーム、今回参院選では参政党台頭、そのつどウケ狙いの連中が登場しては消えてゆく。それだけで何も変わらない。変わらないのは山本太郎ただ一人!