新サイバー閑話(107)<折々メール閑話>㊽

多難な年明けに、れいわの真価が試される

B 多難な年明けになりました。正月1日の能登地震が最大の災禍です。夕方、正月のテレビ番組を見ていて、飛び込んで来たけたたましい地震警告情報に驚きましたが、日がたつにつれて悲惨な実態が明らかになりました。道路は寸断、水道管も破裂、停電が相次ぎ、家屋はぺしゃんこ、その下敷きになって亡くなる人の数も日を追って増え、14日現在の死者は221人に上っています。避難者はなお2万人以上、寒さに向かう中で能登半島の人びとは、いまも辛い生活を送っている状況です(写真は行方不明者捜索を行う重機、石川県珠洲市で14日、中川祐一撮影、毎日新聞提供)。

A れいわの山本太郎代表は5日に能登に入り、連日、ツイッターで被害状況や必要な対策について発信し続けています。「始発でレンタカーに空きがある駅まで移動し、能登町に到着したのは午後6時。役場の駐車場には全国から集まったNPOが片付けと翌日の準備に忙しい」とレポートを始めています。彼は昨年暮には渋谷でホームレスのための炊き出しにも参加していました。

B この山本太郎の能登入りが外野で大きな騒ぎになりました。実は岸田首相はその5日に自民、公明、維新、立憲、共産、国民の党首会談を開いて、地元の要請を受けた形で、いま多くの人が現地に行くとかえって混乱を招くからと、国会議員の現地視察見合わせを決めたんですね。こういう大事における共同歩調は、ともすると、当然取るべき行動を相互に規制する作用をしがちですが、案の上、維新の議員から現地入りした山本太郎バッシングが起こった。報道機関の協定破りのように受け取られたわけです。
 しかし、どうでしょうか。石川県などの要請があったことは確かだけれど、とてつもない災害が起こっている可能性があるとき、報道陣が一斉に現地入りするのを止めることはできないですね。国会議員の場合も同じで、とくに野党の場合、国や行政の怠慢、あるいは落ち度をチェックすべき立場にあり、すべてを行政ルートで流れてくる情報に頼って良しとする姿勢はきわめて疑問です。
 なお6者首脳会談にれいわが呼ばれていなかったのもおかしい。山本太郎は常々「国会議員8人ではまだ国会にきちんと意見を反映できない。せめて次回選挙ではこれを20人まで増やしたい」と言っていたけれど、これなどその具体的証拠だと思います。

A 山本太郎が被災地で炊き出しのカレーを食べたとツイートしたことで、「被災者のものを食べると何事か」という騒ぎにもなりました。

B 一方に大惨事があり、その実情を自らの目で直接見たいと現地に駆け付け、SNSで報告している国会議員がいる、他方にそういう具体的な救援活動とは違うところで、野次馬的にその行動を非難する声が、やはりSNSなどで高まる。まさにインターネット時代ですが、ちょっと哀しい話でもあります。

A 現地では、1外国人がツイートしていたように、果敢に訪問してくれた山本太郎に感謝する声も多いようですね。岸田首相はようやく2週間後の14日に現地入りしました。ここでも、いざという時に頼れる政党はれいわしかないことを示したんじゃないですか。

B 本末転倒だと思うけれど、ここでも「いつも勝手に行動して全体の和をめざす」というような、れいわ孤立化の圧力も強まりました。心ある国民がどちらを支持するか、いや、山本太郎を支持して具体的支援の声をあげることが必要だと思いますね。

・庶民の底力と政界、芸能界、メディア界の腐敗

A 正月2日には羽田空港で日航機が被災地への救援物資を運ぶ途中の海上保安機と衝突するという傷ましい事故もありました(写真はJNNの中継画面)。

B これもテレビで地震被害を眺めているうちに突然、日航機の炎上のリアルタイム画面が飛び込んできました。燃え上がる日航機から乗客がシューターで脱出する瞬間も見ましたが、379人の乗員乗客が無事に脱出したのはせめてもの朗報でした。この脱出劇に対しては海外から日本人の冷静な行動に拍手の声がわきましたが、一般の日本人の底力を示したのだと思います(保安機の5人は気の毒にも亡くなりました)。

A 政界の堕落がいよいよが明らかになった年明けでもありますね。

B 昨年から話題になっている自民党の裏金問題では、安倍派幹部が軒並み東京地検の事情聴取を受け、二階派の二階幹事長も取り調べられました。裏金のキックバックを受けた安倍派の議員1人は逮捕されています。この事件は権力の腐敗のすさまじさを見せつけましたが、早くも捜査当局は派閥幹部だった議員たちの立件は見合わせるとの憶測も流れています。何のための捜査か、と思いますね。
 自民党は11日、この事件をうけた「政治刷新本部」の初会合を開きましたが、そのメンバーを見ただけで、これが政治刷新を目指すというより、当面の世論の鎮静化を待つための組織だというのが明らかです。本部長が岸田総理、最高顧問が麻生太郎、菅義偉、本部長代行が茂木敏光、幹事長が木原誠二というんだけれど、こんな顔ぶれでまっとうな政治刷新ができるわけがないですね。本来なら裁かれるべき人が、裁く法制度を検討するという、おなじみの手法とはいうものの、学識者や野党議員が入ったもう少しまともな組織を作るぐらいしないと、何も変わらないですね。茶番だと思います。
 こういう非常識に率先して異議を唱える人がいない。ここでも石橋湛山を引き合いに出すと、彼は戦後、首相になりながら病気で潔く辞任したとき、こういう言葉も残しています。「私権や私益で派閥を組み、その頭領に迎合して出世しようと考える人は、もはや政治家ではない。政治家が高い理想を掲げて国民と進めば、政治の腐敗堕落の根は絶える」。

A こういう状況下で、また「文春砲炸裂」というか、昨年暮発売の新年合併号で、吉本興業のお笑いタレント、松本人志の性的醜聞を暴露する報道がありました。昨年の芸能界はジャニーズの性加害問題でが大きく揺れましたが、今年は吉本興業かもしれません。

B いつも火付け役が『週刊文春』だという現実にも考えさせられます。一般紙にはただの芸能ネタと受け取られがちだけれど、松本人志は30年以上もお笑い界に君臨するビッグな存在で、大阪万博では「アンバサダー」をつとめるなど、政治的にも大きな役割を果たしています。マスメディアの多くの記者にとっては、こういう構造がはっきり見えていないようですね。

A 文春記事による松本人志の醜聞はまことにおぞましい。彼本人ばかりでなく吉本興業もこれを「事実無根」と否定し、法的措置を取ると言っていましたが、その後少し様子が変わり、松本人志は芸能活動休止となりました。
 吉本興業の社長、副社長とも松本人志、浜田雅功のお笑いコンビ、ダウンタウンの担当マネージャーだったらしいですね。会社も当初は松本人志の言い分をそのまま受けて対応したのでしょうが、その後、本人が「事実無根なので闘いまーす。それも含めワイドナショー出まーす」とツイートしたことで(ワイドナショーはフジテレビで14日に放映予定だった番組)、テレビ側が反発したのか、その出演も取りやめになりました。突然のことながら、吉本興業からもフジテレビからも、それに一部スポンサーからも見捨てられた状態になったようです。昨年のジャニーズ事件はもとより、スポンサー離れの影響も大きいようです。

B 松本人志の醜聞およびその対応を見ていると、自民党政治家とほとんど同じだという印象が強い。きちんと説明もせず、強引に〝逃げてしまう〟ようなことがなぜ許されているのか。そのこと自体が不思議だと同時に、今の日本の倫理的退廃を感じさせますね。この状況に対する国民の失望感、あるいは怒りはかなりなもののはずで、これが泉房穂元明石市長が「救民内閣」成立を促す背景だと思います。と言うか、彼は鋭い政治感覚でその状況を把握したということでしょう。

・れいわが独自に勝つチャンスはかなりある

 彼は「救民内閣7つのステップ」を明らかにし、政権交代でまず非自民政権を樹立し、ついで政策をめぐってさらに選挙をやるべきだとも言っています。政策の柱は、県をさらに大きな「圏」に広げる「廃県置圏」と「首相公選制」です。ただし、現実の政界地図をどのように再編成するかについてはまだはっきりしません。

A れいわの山本太郎は既存野党との共闘を原則的に拒否しています。彼は次期衆院選への姿勢にふれて、立憲民主党との連携を考えていないことをはっきりさせて、「とにかくれいわの議席を増やすことを優先する」と言っています。いまの野党でまとまってもダメだと見ているわけです。

B 山本太郎の考えには原則的に賛成ですが、泉提言によって眠っていた世論が掘り起こされる可能性は無視できない。そのエネルギーをうまく利用した方がいいとも思うわけです。
 れいわはこれからどう対応すべきかについて、元朝日新聞政治部記者、鮫島浩がれいわの集会に招かれて「どうする野党再編」と題して講演した内容が興味深いですね。彼はまず1993年の政治改革が構想した二大政党制は米国や経済界に都合のいい制度でしかなかった、と自己批判も込めて話しています。そして現在の政局はほとんど自民党内の勢力争いと絡んでいると。
 たとえば岸田政権にアンチの菅元首相は維新と近く、現在の最高権力者と目される麻生元首相は連合を通じて国民民主党と近い。そして立憲はどこに近いかというとそれは財務省である。というわけで、共産党を除く野党はいずれも既存勢力と密接なつながりをもっており、野党が野党としてまとまる芯のようなものはない。だから、現状では自民党内で権力を掌握したのがだれかによって、いずれかの野党が自民党に取り込まれてしまい、野党共闘はすぐガタガタになる。そして政治体制は実質的にはほとんど何も変わらない。そういう現状を説明したあとで彼はこういうふうに言いました。

 れいわ新選組はいま微妙な立場にある。他党とも協力しながら政権を窺うのか、国民の味方である立ち位置を死守して、徐々に勢力を伸ばしていくのか。その帰路にあるように見えるが、私は、れいわは独自の道を歩むべきだと思う。これからはイデオロギーとしての左右の対決ではなく、力としての上下の対決である。れいわはあくまで庶民、弱い国民の味方であるとの立場を貫き、安易に野党共闘に加わるべきではない。先方から寄ってくるのはいいが、自分からはそちらに近づかない。二大政党制に組み込まれることを拒否し、常に大きなビジョンを失わず、上級国民vs庶民の構図を作り出し、庶民をがっかりさせるようなことをしなければ、勝つチャンスはかなりあると思う、と。

 日本の政治を長い間見つめてきたジャーナリストの発言だけに、れいわにとっては貴重な提言に思えますね。