新サイバー閑話(103)<折々メール閑話>㊺

いよいよ沈みゆく泥沼の日本政治

B 前回に引き続き、政局液状化の話です。岸田政権、および自民党はいよいよ沈没に向かって崩れゆくようですね。このところのニュースは開いた口がふさがらないというか、まことに恐れ入ることが多い。
 自民党派閥の裏金(パーティ券収入のキックバック)問題は、国会終了後に強制捜査が始まるようですが、東京新聞によれば、旧安倍派で実務を担うとされる事務総長経験者の松野博一現官房長官、高木剛国対委員長、世耕弘成参院幹事長側が直近5年間で派閥から販売ノルマを超えた売り上げ1000万円以上の還流を受けたらしい。いずれの政治資金収支報告書にも記載はなく、裏金になったと言われます。
 また安倍派幹部の萩生田光一政調会長、西村康稔経済産業省、塩谷立座長にも同様の疑惑が浮上しており、安倍派は戦々恐々、政権スポークスマンの松野官房長官は、国会の追及に「派閥がいま事実関係を精査している。私は政府の立場としてここに出席している」とまともな答弁をしていませんが、岸田首相は松野長官更迭へ動き出したとも報じられています。
 自らは税金逃れの裏金を選挙対策、あるいは私用に使っておきながら、中小企業者やフリーランスの人びとのわずかな収入から税を取り立てようとするインボイス制度をよく導入できると思いますね。安倍派の問題はもちろん多くが安倍晋三元首相に起因するけれど、長い間の一強体制でまさに動議は地に落ちたということでしょう。

A 岸田首相は真相究明に指導力を発揮するどころか、いまになって「派閥から離脱する」と寝ぼけたことを言い出しました。自民党の歴代首相は在任中は派閥を抜ける慣習があり、安倍元首相ですら在任中は派閥を離脱していたのに、岸田首相は派閥会長をやめなかった。その理由として、「派閥を不在にすれば、戻った時に自分のポストがなくなる」ことを恐れたという情けない憶測がされていたけれど、今回の事件勃発を機にやむなく派閥会長をやめることにしたのか、あるいはこれも逃げの姿勢でしかないのか。

B 醜態ですね。岸田首相は安倍国葬を決めたときから首相としての道を踏み誤った。その後も政権延命のために安倍派引き止めにやっきとなり、閣僚人事や政策でもほとんど首相としての主体性を放棄してきたわけで、その責任は大きい。前回紹介した石橋湛山の言葉、「政治家にはいろいろなタイプの人がいるが、最もつまらないタイプは、自分の考えを持たない政治家だ」は彼のためにあるようなものです。

・岸田首相と統一教会の関係が明るみに

A 岸田首相に関しては、最近になって彼が自民党本部で統一教会幹部と同席していたことが明らかになりました。朝日新聞がスクープしたもので、彼が党政調会長だった2019年10月に統一教会の友好団体「宇宙平和連合ジャパン」トップ、梶原正義氏、ニート・ギングリッチ元米下院議長(共和党)、、米教団元会長とされるマイケル・ジェンキンス氏と4人で撮った写真も公開されました(写真は東京新聞12月9日付、共同)。本来は安倍元首相と面会する予定だったのだが、日程の都合で岸田氏が出席したらしい。
 朝日新聞報道ではキングリッジ氏はその会合を認め、写真も提供した。この報道を受けて岸田首相はキングリッジ氏と面会したことは認めたが、そのとき同席した人に「覚えがない」と述べたんですね。「安倍さんに頼まれてしょうがなく出席したのが、今になってたたった」ということかも知らないが、「教団関係者とは知らなかった」などという強弁を信じる人はいないですね。これは安倍譲りの虚言です。
 自民党総裁でもある人が自らの統一教会との関係を隠蔽しているのだから、他の自民党議員がシラを切るのも当たり前。これもあいた口がふさがらないですね。細田博之衆院議長が統一教会問題でほとんど口をふさいでも、これを叱責できるわけがない。

B その細田議長にも唖然とすることがありました。彼は10月20日に「病いで議長を務めるのは無理になった」と衆院議長を辞任しつつ、次期衆院選には引き続き出馬すると宣言しました。これにはちょっと驚きましたが、議長引退後1か月もしない11月10日に多臓器不全で亡くなったのでまた驚きました。死の直前まで議員にしがみつく執念は、まことに恐れ入りやの鬼子母神です。
 ここでも石橋湛山を引き合いに出すと、彼は首相就任直後に過労が引き金となって脳梗塞で倒れ、「2か月の絶対安静が必要」との医師の診断を受けたとき、「私の政治的良心に従う」と潔く退陣したけれど、その後回復、亡くなったのは15年以上後のことです。

・オスプレイ「不時着水」し乗員8人死亡

A まだまだありますね。極め付きがオスプレイ「不時着水」です。かねて安全性に疑問が出ていた米空軍輸送機「オスプレイ」が11月29日、鹿児島県屋久島沖で墜落、乗員8人が死ぬ事故がありましたが、会見した宮沢博行防衛副大臣は事故について こう説明しました。「最後の最後までパイロットが頑張って(コントロールして)いたということだから『不時着水』だ」。墜落を「不時着水」と言い替えれば、事故の衝撃性が弱まるとでも思ったのか、いかにもアメリカに気兼ねした物言いです。念を押すのもばかばかしいが、これが東大法学部出身者の発言です。

B 「不時着」というのは諸般の事情でやむなく予定地以外に着陸することで、乗員はまず無事の場合が多いでしょうね。墜落(crash)を「不時着水」と言い換える日本政府に、オスプレイの飛行停止を求める主体的な外交を求めるのは無理。その後、米軍はオスプレイ飛行を全世界で停止すると発表しています。また12月9日の沖縄タイムスウエブ版によると、米国防省はオスプレイの生産を2026年で中止するとのことです(オスプレイの写真は同ウエブから、米軍横田基地)。
 オスプレイは「未亡人製造器」と呼ばれたほどの事故多発機で、沖縄県民を初めとして日本配備に反対する声が強かったのだが、日本政府はほとんど何の手も打てなかった。米軍が全世界で飛行を停止すると決めたことで、日本もそれにならうことになった。オスプレイを在日米軍と置き換えると、在日米軍基地は米国が不要との判断をしない限り日本に存在し続けるわけで、ここに主体的な外交というものはない。これが日米安保体制の真実です。にもかかわらず「外交の岸田」を吹聴する岸田首相には、たしかに開いた口がふさがらない。

A こういう日本政治の泥沼状況を受けて出てきたのが泉前明石市長の「救民内閣」構想でしょうね。山本太郎は街宣活動で「泉氏と連携するのか?」と聞かれて、「漠然としていて具体的情報に欠けるので回答できない」と答えていた記憶があります。

B これだけ自民党政権が支離滅裂なのに野党も対決姿勢を打ち出せないでいるところに、「救民内閣」という呼びかけがあった。これは、政党だけでなく、国民そのものにも奮起を促す声だと受け取るべきだと思います。
 泉氏の「自民もひどいが、立憲もひどい。国民からすれば、どっちもどっちの状況で、自民にNOだからといって、立憲にYESにはなっていない。その理由は、立憲も国民を向いた政党になっていないからだ。立憲よ、国民のための政策を語れ!財務省にひれ伏する立憲に未来はない」というツイートを86万人が読み、3万人がいいね!を押したところに、国民の気持ちの一端が示されているとも言えますね。
 れいわ新選組としても、いよいよ正念場がやってきたということです。前回もふれたけれど、「非自民」だと言って、ここに維新もなだれ込んでくるようなことになると、単なる野合にすぎず、腰砕けになる可能性が強い。最低限の政策で合意して自民に対決する必要があります。そういう点では、れいわが今後の政局の主役になれるように改めてエールを送りたいですね。
 というわけで、次回から次期衆院選をめざすれいわ候補の活動ぶりを紹介しようと思います。