新サイバー閑話(100)<折々メール閑話>㊷

岸田首相と石丸安芸高田市長の器について

 B これまで「軍備増強」、「増税、増税」、「原発、再稼働、再稼働」と叫んでいた岸田首相が、どんどん下がる内閣支持率におびえてか、突然、10月23日の衆参両院本会議の所信表明演説で「経済、経済、経済」と連呼しました。「減税」とも言いましたね。

A 彼は何を考えているのか。

B 何も考えていないようですね。彼のメガネの奥に国民はいないし、国や世界に対する関心も、実はない。ただ仲間の利害だけがある。これは安倍元首相と同じだけれど、岸田首相の場合、安倍首相ほどにはその隠れた真意を表に出さなかった。しかし、安倍前首相が少なくとも仲間のことは考えていたのに対して、彼はどうも自分、あるいは家族のことしか考えていないようにも見えますね。最大の関心はいかにして首相の任期を維持するかだけのようです。

A 岸田首相の所信表明演説に関して、れいわの山本太郎が胸のすくような批判をしています。

 ひとことで言うなら、厚顔無恥、ポエムの連続、中身なしです。彼が一番力強く訴えたかったの経済の再生だっだと思うんですけど、三位一体の改革をやる、って言ってるんですよ。労働市場の改革、企業の新陳代謝の促進、物流改革――、労働市場の改革って、これいわゆる流動化でしょ。不安定な仕事をより広げていくってことですよ。企業の新陳代謝の促進は、中小企業潰しです。経済的に不安定な状況のとき、不況のときには、企業を守らなきゃダメなんですよ。でもそういうものをどんどんばらしていくっていうのは、失われた30年を作ってきた戦犯である自民党のやり方を一切変える気が ないってことです。それを、より拡大していくって訴えてるってことですね。だまされちゃいけない。よくそんなこと恥ずかしげもなく、大声で言えてるな、っていうことです。それに対して自民党席はやんやの大喝采です。劇団自民党と岸田さんと一席設けたみたいな光景を私たちずっと見せられてる状況だったということです。

 まさに一刀両断、痛快この上なしですね。これをツイッターにアップした人が「岸田総理の経済政策、平たく言えばこんなことだったんだね。こう言ってくれたら誰も投票しないよね」とコメントしていました。

B 付け焼刃の減税政策、しかも後には増税路線が控えているような状況で内閣支持率が上がるとはさすがに思えないけれど、定見なし、首尾一貫しない首相の態度にはうんざりです。25日の参院本会議では、自民党の世耕弘成参院幹事長までが「(内閣)支持率が向上しない最大の理由は、国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないことに尽きるのではないか。残念ながら現状において岸田総理の『決断』と『言葉』にはいくばくかの弱さを感じざるを得ません」と批判したくらいです。
 最近、興味をもって見ているのが、岸田首相とは対照的な広島県安芸高田市の石丸伸二市長です。この人と市議会の対立をめぐって、最近ではユーチューブでもたくさんの動画が上がっているのでご存知と思うけれど、石丸市長のやっていること、あるいはやりたいことは首尾一貫しています。

A 市政に取り組む姿勢がはっきりしていますね。私利私欲でもない。

B ちょっと石松市長登場に至る経緯を整理しておきます。
 石丸氏が安芸高田市長になったのは3年前の2020年です。安芸高田市は岸田首相のおひざ元、広島県の広島市からやや北方に位置する人口2万7000人の市です。ちょっと因縁話めくけれど、2019年の参院選広島選挙区で、自民現職の溝手顕正議員を敬遠した安倍首相が対抗馬として河井克之衆議院議員の妻、案里氏を担ぎ出しました。溝手氏は岸田派の重鎮だったけれど、岸田氏は安倍首相のなすがまま、結果は河井案里氏の勝利となりました。この選挙が実は金まみれで、結果的に河合夫妻が公選法違反で逮捕されますが、そのとき安芸高田氏の市長、市議会議長がともに、河井陣営から金をもらっていたことが判明、市長は辞職し、そのための市長選が2020年に行われました。
 石丸氏は安芸高田氏の出身で、京都大学経済学部卒、三菱UFJ銀行に就職し、ニューヨーク駐在の経験もあるエリートビジネスマンだったのだけれど、安芸高田市長選で前市長の後釜として副市長だった人が立候補、対立候補はいないという記事を新聞で読み、いきなり会社に退職届を出し、立候補を決めたと言われています。「故郷への恩返し」というのが出馬の動機だったらしいですが、「新しい政治を始めよう」というスローガンを掲げて当選しました。当時、石丸氏は37歳でした。

A おもしろい経緯ですね。

B 話が〝面白く〟なるのは、彼が市長になってからです。初登庁後の市議会一般質問で、市議の1人がいびきをかいて寝ていたので、彼はいきなりツイッター(今はⅩと名を変えているが、以下ツイッターの旧名を使用)で、それを公開します。これが市長vs市議会のスタートですが、市議会でツイッターをやってる市議はほとんどいなかったらしく、ツイッターを見た報道陣がこの件について市議会議長に問い合わせると、議長は「居眠りがどうした?」と言ったかどうかはともく、居眠り議員を擁護すると同時に、議会内の出来事をSNSで発信した行為に対して市長不信を強め、徹底抗戦の姿勢を取り始めます。議会は本来公開されているものだから、それをツイッターで書いたから問題だということはないんだけれど、議員連中が驚いたのはわからないでもないですね。

A これがきっかけで市長と市議会のけんかが始まるわけですか。

B そうです。まず市長が空席の2人目の副市長ポストを公募して人選まで終えたのに、市議会はこれを否決、さらに副市長の定数を2人から1人に減らす条例改正案を可決して、新たな副市長設置を不可能にしました。それに対し市長が議員定数を半減する条例案を提出し、これを議会が否決、市長が市活性化のために道の駅への「無印良品」の出店を計画すると、それも拒否するという大騒ぎになっていきます。市長側は議会に提案するとき、古いしきたりである根回しを一切しない。市議会の方では、「俺は聞いてないぞ」と従来の慣習無視という理由でこれに反対するわけです。市長のやり方は、なあなあ政治の旧弊を打破し、合理的な政治確立をめざすものだったと言えますが、市長が制度上可能な専決処分を繰り出すのも気に入らなかったようです。

A  言い分としては市長に分がありますね。

B 市議会保守系の清志会が中心になって、政策論論争そっちのけで、とにかく市長に徹底抗戦という状態になり、市長問責決議を可決しました。ところが他の議員が出した市長不信任案は否決されます。市長けしからんと叫びながら、なぜ不信任案は否決なのか。不信任案を可決して市長が議会を解散するのを恐れたわけです。ともかく、こういう具合に市長と市議会の対立は2023年まで延々と繰り広げられ、大手メディアでは報道されないけれど、ユーチュブでは「人気コンテンツ」に育っていきます。
 最初にもふれたように石丸市長の初心は「故郷に対するご恩返し」です。まっとうな議会運営を目指しているだけで、市長の職に汲々としているわけでもない。自分の地盤を固めたいわけでもない。記者会見では「そんなことはダサい」とも言っています。頭脳明晰、論理明解、冷静な口調で繰り出す追及に市議側はアップアップの状態でもあります。

A 石丸市長の舌鋒は鋭い。市議会運営としては、あえて波風を立てるようなやり方に不満があるとしても、発言内容はむしろまっとうです。言っている内容より態度が気に入らないという心理的反発があるようですね。

B  その最高潮が7月、いまから3か月前の市長定例記者会見です。市長案件を説明する中で、地元の中国新聞記事を取り上げ、事実関係の記述があいまいだと中国新聞記者を問い詰めました。このことにより、第三者を標榜している新聞メディアが当事者として引き出され、石丸市長の鋭い追及に新聞社側はタジタジの事態となりました。

A マスメディアが議論の俎上に乗せられ、舞台は市長vs市議会&中国新聞へと転回したわけですね。新聞記事は、市長には市議会との調整という責任もあるのではないか、と対立の中には入り込まず、市議会混乱の責任は市長にもあるという形で、結果的に議会寄りになった。「紛糾の原因は市長方針を聞こうともせずやみくもに反対する議会にあるのに、なぜその事実を報道しないのか」というのが市長の言い分ですね。

B ここにはマスメディアのいわゆる「客観報道」の問題点が凝縮しているとも言えます。古くは 60年安保当時の7社共同宣言が反対デモによる死傷者発生を機に「暴力を排し議会主義を守れ」との見出しを掲げ、「その事の依ってきたる所以は別として、議会主義を危機に陥れる痛恨事であった」と、結果的に安保闘争を鎮静化させた例があるけれど、やはり「事の依ってきたる所以」を捨象して「混乱する議会」の正常化を叫んでも、解決にはならないですね。若い市長によって大手新聞社が批判されたと言うので、この安芸高田市制作の動画が再生回数100万回というヒットになりました。

A 痛快でもありますね。何をやりたいのかさっぱりわからない岸田首相と比べると、同じ広島出身でありながら、こうも器が違うものかと思います。方や一地方の首長、方や一国の首相です。地方だからできるとも言えるけれど、そうであれば、他の地方も見習うべきだと思いますね。国レベルでは山本太郎とれいわ新選組が頑張っているけれど‣‣‣。

B 岸田首相の広島サミットに関して、地元中国新聞の社説を紹介したことがあるけれど(㉝踏みにじられた「広島」の心、『みんなで実現 れいわの希望』所収)、ブロック紙としての中国新聞はけっこうまっとうだと僕は思っているんですね。これはマスメディア共通の問題です。私鉄ストなどの社会面原稿はともすると、「ストで失われた市民の足」みたいなものになりがちなわけです。

A 若い市長によって、メディア報道が批判された例として興味深いと思います。

B 石丸市長はトランプ前アメリカ大統領ではないけれど、ツイッターを駆使しています。政治をめぐるメディアのあり方も、これから大きく変わるでしょうね。これだけ再生回数が多いと、ユーチュブも無視できないでしょう。
 実はこの記事では中田敦彦氏のユーチューブ動画に多くを教わりました。ユーチューブには他にもすぐれた動画がありますね。政治とITの関係では、最近こういうニュースもありました。
 東京地裁は10月16日、ツイッターの匿名アカウント「Dappi」による虚偽の投稿で名誉を築づけられたとして、立憲民主党の小西洋之議員らが東京都内のIT関連企業「ワンズクエスト」と社長らに損害賠償を求めていた訴訟で、「投稿が会社の業務だった」と認め、計220万円の支払いと問題の投稿の削除を求めました。
 Dappiに関しては、早くから自民党との関係が取りざたされ、自民党から金が流れていたこともわかっています。判決も「自民によるネット操作の一環ではないかとの疑いは排除できない」としています。だれもが好きなことを投稿しているように見えるツイッターを政党や企業が大金を投入して操作できる余地があるというのも、新しいメディアの問題点です。直接関係のある話題ではないけれど、気になる出来事として追記しておきます。

“新サイバー閑話(100)<折々メール閑話>㊷” への3件の返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です