サイバー燈台オープン(第137回、2017/6号)

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イラスト

今回は「サイバー燈台」オープンの言わばお披露目です
目玉企画の「いまIT社会で」のもとになった『広報』連載がほぼ10年、サイトの「サイバーリテラシー提唱」からは15年もたつんですね
提唱の内容はいまでも十分通用すると自負しているのだが……
イラストのコンセプトは「人の進化、ITの進化」としました
何十万年と数十年が一つのイラストにおさまって壮大です
わずか数十年でのコンピュータの驚くべき進化を、社会に与える影響という視点からずっと見られてきたわけですね。インターネットが一般に普及しはじめて20年ということを考えると、その先見性は充分アピールポイントになります
嬉しいことを言ってくれるねえ
サイバー燈台のどこかに「15周年」のロゴを入れましょう
……お後が宜しいようで

< ML楽屋話 >


Kan 新しいオンラインメディア・プラットホームをめざすサイバー燈台への応援メッセージを、みなさんよろしく。


Sic 先生のグイグイとあげるハードルに、ちょっと気恥ずかしさというか申し訳なさを感じつつ、ダチョウ倶楽部的なノリでイラストを公開します。

 もはや色々なパロディが存在している「猿から人への進化図」ですが、これにITの進化を合わせてみました。ダーウィンの進化論では、長い年月をかけて猿から人に進化しましたが、IT(特にコンピュータの世界)の進化はほんの短い間に凄まじい速度で発展しました。「日進月歩」に対して「秒進分歩」とも揶揄されるほどです。

 IT側も、もっと色々な進化を表現したかったのですが、スペースの都合上、ブラウン管PC(ワークステーション)、ノートPC、タブレット、スマートフォンの4つにしました。

 ITは右にいくほど残像が増えています。これは捉えきれない進歩(スピード)の表現ですが、扱う人間も変化しています。タブレットは女性が持ち、スマートフォンは子どもが持っています。社会に対してのITの浸透具合の表現です。いまや女性進出は当たり前、子どもに専用のスマートフォンを持たせる親も少なくありません。

 一方で、IT格差も問題になっています。最近では、タブレット(スマホ)は使えるけどPCは分からないという若者も多いそうで、ますます複雑化するIT機器に対し、使える者と使えない者の差はどんどん開いていくでしょう。

 もしかしたら、ITの進化に人が追いつけなくなる日が来るかも知れません。


Kan コンピュータの進化が人間を追い越すとして、その特異点(singularity)を具体的に指し示す人もいるからね。


Sic グリッド線の彼方は光り輝いていますが、進化する「ヒト」も、IT社会に追随する「人」も、その光の方向は見えていません。IT側は進路方向すら見ていません。いつかは道を見失い、迷うときが来るかも知れません。そんなとき、横を見ればいつでも見える光、進む道を指し示す光となるのがサイバーリテラシーであるという思いを表現しました。

 ちなみに、背景のグリッドはWordを使って作成しました。実は前々から、Wordのテクスチャや図形をイラストに使ったりしています。何かこういう裏話みたいな機会に、実はここはWordなんですよ~という話に展開できるようになんですが……。最近は、グレースケール部分をスクリーントーンに変換してくれるソフトがあって、ちょっと気になっています。やはりモノクロの絵は、グレーよりもスクリーントーンのほうが見栄えしますしね。


Kan 壮大なカットに触発されて、インターネットの簡単な歴史に触れておきます。

 インターネットは1970年代後半の米国防総省アーパネットを源流とするわけだけれど、その魅力に取りつかれた若者、技術者、一部専門家のボランティア活動で、ほどなくして多くの人が使う便利な道具になりました。バーナーズリーが開発したWWWという仕掛けとそこにビジュアルを取り組んだブラウザーの飛躍的発達がエポックメイキングだったと言えます。 

 インターネット黎明期のこの熱気は、WWWはWorld Wide Webの略ではなく、World Wide Westの略だとの冗談があるくらいです。米西部開拓史を彩ったカーボーイ、保安官などが活躍したいわば無法の世界に、教会が立ち、学校や 病院が出来、それを利用したビジネスが発達し、しだいに法の支配が行き渡っていきます。初期のサイバースペースがどのようなものとして認識されていたかを示すのが、米議会でインターネットの情報を規制しようとする通信品位法が成立したときにジョン・バーロウが書いた「サイバースペース独立宣言」です。当時はネティズン(ネットの市民)というまぶしいような言い方もありました。

 マイクロソフトのウィンドウズ95が登場した1995年は「インターネット元年」とも呼ばれますが、僕がインターネット情報誌『DOORS』を創刊したのがまさにこの年です。月刊誌でしたが、毎号、マイクロソフトのエキスプローラとネットスケープという2大ブラウザーの機能拡大を報じていたのを懐かしく思い出します。

 インターネット上の情報を検索できるようにしたヤフーのあっと驚くアイデア、それから5年ほど後に登場したすべての情報を検索してしまう恐るべき検索エンジン、グーグルの登場が、インターネットを飛躍的に発達させたのはみなさんすでにご存じでしょう。2004年ぐらいから広く言われるようになったWeb2.0がインターネット第2世代、いまのインターネットの原型になりました。

 この辺はサイバー燈台「サイバーリテラシーとは」所収のサイバー空間と現実世界の交流史の図と簡単なコメントをご覧ください。いまその最新版を考えているところです。

  インターネットの発達は、世界を大きく変え、僕自身は全人類史をサイバースペース出現以前(BC=Before Cyberspace)とサイバースペース出現以後(AC=After Cyberspace)に分けても過言ではないと思っています。

  Sic君が描いてくれたイラストのコンピュータ発達史に並行して、こういったインターネット発達史、およびそれがもたらしたIT社会変遷史が存在するわけです。 


Kyu 先日、中学生がウイルスを作って逮捕されましたが、日本もそういう時代になりましたね。けしからんと言うのじゃ無く、こうした才能をうまく導く役割が学校の教師にも望まれます。

 ITやプログラミングとサイバーリテラシーを学んだ教師が必要になっています。


Kan コンピュータを動かなくして、元に戻すには身代金を出せと脅すランサムウェア(ransom=身代金)って、ほんとに簡単にできるみたいで、テロと変わらないですね。こういうことを法で規制するのは難しく、だからこそ情報倫理の確立が急務なのだが……。

 ところで本文でもふれているけれど、サイバー燈台ではプロジェクトコーナーを充実させ、より多くの読者を獲得したいと計画しているわけだが、いくつかを紹介してくれますか。


Sic 「サイバー絵本」は、もともと「サイバーリテラシーをわかりやすく、また広く知ってもらうためのイラストコンテンツ導入」という一研究員の提案から、サイバー大学のSNSなどでイラストなどの同好会を主宰していた私に白羽の矢が立ったのがきっかけです。

 ちょうど、新プロジェクト<若い母親が幼児に読み聞かせながら考えるサイバーリテラシー>を立ち上げようというときだったので、母子で読めるコンテンツ=絵本ということでいくつかのプロットを提案しました。そのうちのひとつが「リトルベア・チャーリーチャ―ルストンと魔法のタブレット」(原題:しろいくまとくろいくま)です。企画に賛同してくれた友人の協力もあり、このプロトタイプとして手作り冊子の絵本となりました。

 大人(お母さん世代)向けブラックユーモアも含めた内容だったのですが、先生の提案で完全幼児向けに直したものが今回の作品となります。お母さんがお子さんと一緒に読めて、サイバーリテラシーについて考えることができる、そんな内容です。それほど長いものではありませんので、ちょっとしたときにでもご一読ください。

 なおコンテンツはiPadやAndroidタブレットで読めるPDF版を無料でダウンロードできます。お子さんとのコミュニケーションツールとしてご活用いただければ幸いです。


Kan こちらはもう完成しているのだから、サイトの枠組みが出来上がればすぐ公開できますね。


Sic 「サイバーいじめSOS」の方ですが、膨大な情報が行き交う現代社会において、痛ましいニュースもまた減ることがありません。なかでも、いじめを苦にした若者の自殺事件は目を覆うばかりです。

 そして、こういった事件は、ニュースを耳にしたときはいつでも手遅れです。結論から「たられば」を講じたとしても、失った命が戻ることはありませんが、「それでも」と「こういう方法もある」と皆で知恵を絞ったのがこのコンテンツです。

 悩みを抱えた若者が、このコンテンツで少しでも悩みの緩和、なんらかの解決、ひとかけらの「光」を見出せたなら、私たちの足掻きも意味があったと思うのです。サイバーリテラシーができること、サイバーリテラシーだから提示できることを念頭に、いじめに悩む人、心の奥底でSOSを発している人々に「何か」を提示できればと思っています。


Kik

 「映画史に見るサイバーリテラシー」を担当するKikです。えーと、このサイトで堂々と書くのは勇気がいりますが、ぶっちゃけ「サイバーリテラシー」って、なんか難しそうですよね。だいたい「サイバー」の「リテラシー」って言葉自体、普通に意味分かんないし……(^o^)。

 サイトや関連書籍を読んでも、そこに含まれるテーマがやたらと幅広い。広すぎ。「情報倫理」みたいなガチガチに硬い話から、ピコ太郎や、IT事件簿のような(軟らかいとは言わないけど)時事問題まであり、ピンポイントで「これがサイバーリテラシーだ!」とテーマを絞れません。

 それもそのはずで、「サイバー空間」も「現実(リアル)世界」も結局は人間の社会。コンピュータやインターネットによって顕在化、または拡大、あるいは深刻化したとはいえ、「サイバーリテラシー」が提起する諸問題の本質は、人間と、人間が作り出した社会そのものなんです。

 だから、「敷居」は高くないけど、「間口」がやたらと広い。おかげでどこから入れば良いのか(その「入り口」が)、いまいち分かりにくい。そう思いません?(え。僕だけ?)

 でも大丈夫。難しく考える必要はありません。人間と、その社会について考えるという行為は、昔からあらゆる形で表現されてきました。映画もその一つです。気楽な娯楽映画であっても、人間社会を描いている以上、自ずと何らかのテーマを持ってしまうもの。「サイバーリテラシー」と共通するテーマも多く、特定のテーマに限れば、難しい解説書を読むより、ずっと感覚的に理解しやすいんです(たぶん)。

  本企画では、関連する新旧の映画紹介を通じ、「サイバーリテラシー」への「入り口」を探していきます。人それぞれに最も合った「入り口」があるはずなので、皆さんも一緒に探してみてください (「サイバーリテラシー」にかこつけて好きな映画の話をしてるだけと揶揄されるかもしれませんが、そうとばかりは言えない面白さと深さがありますよ)。


Sic 気安い感じがして個人的にはすごくよいです。サイトがどうしてもお堅いイメージなので、こういう気楽に見れるコンテンツがあると集客効果は高まるんじゃないかと思います。


Kan これも冒頭部分はもうできているんじゃないの。「サイバーリテラシー」はサイバー社会を生きるためのリテラシー(基本素養)です。IT社会を生きる杖だから、まあ、いろんな杖があっていいわけですね。杖を鍛え上げるのもサイバーリテラシーの役目です。

 さて、これも本文でふれているけれど、プロジェクト欄には<客員コーナー>も設けます。当初予定している3人は、いずれも早くからインターネットの影響力を肌で感じ、それぞれの学問、業績をITとどう調和させるか、正面から取り組んできた先達です。なるべくみんなに親しんでもらえるように工夫してもらうつもりです。どうぞご期待ください。

 第2陣以降は、若い人や女性たちにも参加していただきたいと思っています。サイバー燈台は、「サイバーリテラシー」を通奏低音としつつも、いろんな知見を紹介する「オンライン適時刊総合誌」をめざしています。投稿歓迎です。もっともしばらくは原稿料ゼロです(^o^)。


ご意見をお待ちしています