新サイバー閑話 (25)

映画『新聞記者』を見る

 東京新聞記者の望月衣塑子さんの原案になるという映画『新聞記者』(藤井道人監督)を見て、この時代にこういう反骨の映画を作る人がまだいる、しかもけっこう見る人もいることにちょっと救われる思いがした。

 神奈川県茅ヶ崎市のシネコンで見たのだが、最近にない観客の多さに少し驚いた。平日昼ということもあり、老人が多かったけれど、映画パンフレットは売り切れ、ちょっと熱気を感じた。

 映画そのものもおもしろかった。紋切型で深みがたりないと批判もできそうだけれど、そんなことを云々するより、よく作ってくれたという気持ちの方が強い。かつては『悪い奴ほどよく眠る』とか『金環蝕』といった、骨太の構想、奥行きのある内容、すぐれたエンターテインメント性などで、文句のない重量級の映画があった。森友や加計問題を正面から取り上げた映画を見たい気もする。

 主役の女性記者が韓国人俳優シム・ウンギュンで、熱演していたが、日本の女優で引き受ける人がいなかったのだとも聞いた。苦悩する若手官僚を松坂桃李が好演していた。悪玉官僚を演じた田中哲司がいかにもの演技で、彼が最後に言う「この国の民主主義は形式だけでいい」というセリフはドスが効いていた。

 折しも、7月5日のニューヨークタイムズ電子版に、官邸記者クラブで〝孤軍奮闘〟の活躍をする望月衣塑子さんが取り上げられ、菅義偉官房長官の「独裁政権のような振舞い」が批判されていたが、他の記者がすっかり萎んでしまっているように見えるのは残念である。メディアに対して高圧的なのは、トランプ大統領も同じだけれど……。

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