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粟飯原 みなさんはじめまして。インターネットのサービスサイトのプロデューサーをしている粟飯原と申します。私はたぶん今日の出席者の中では一番若輩もので、本当にミーハー的にインターネットを触っているだけなのですが、今日はそのミーハーな立場からお話しできればと思っています。
「All About Japan」は、みなさん就職情報でご存じかと思いますが、リクルートとアメリカのアバウト・ドット・コムが合弁で2年前にスタートした会社です。このサイトをご覧になった方はどれぐらいいらっしゃいますか? 割と少ない(笑)。5名ぐらいですね。  このサイトは、「その道のプロがあなたをガイドする」というのがコンセプトです。ビジネスから生活情報まで250人のその道のプロがサイトに常駐して、1テーマにつきお1人、ガイドをしていらっしゃいます。
 去年はうどんがブームだったと思いますが、例えばみなさんがインターネット上でうどんのおもしろいサイトを探そうとして、GoogleとかYahooで「うどん」と検索すると、すごい数のサイトがヒットすると思うんですよね。事前にお願いしたアンケートを拝見しても、インターネットの情報はたくさんありすぎて「どの情報が本当にいい情報なのかわからない」というコメントがありました。
 このサイトでは、うどんのプロが「うどんのサイトだったらここがいいですよ」、「うどんのお店を探すなら、このホームページを見るといいですよ」というふうに、人間の目で目利きをして厳選しているんですね。パンやうどんといったグルメから、映画とか歌舞伎みたいなエンターテインメント、就職活動とか引越しとか、変わったテーマだと離婚というのまであって、離婚をしたいときにどのホームページを見て相談すればいいのかということをガイドさんが案内しています。月間のユニーク来訪者数が6月時点で885万人いらっしゃいます。それだけの方がプロのガイドに厳選サイトを目利きしてもらいに来ているわけです。
 私は、このサイトのユーザー数を伸ばして、もっといろいろな人に使っていただこうと、プロモーションをうったり、イベントをやったりしています。ちょうど先週までやっていたのですが、有楽町の三省堂書店さんに棚をいただいて、「All About Japan のガイドがプロの目で選ぶ本」を100冊展示するようなことを企画させていただいています。「うどんのガイドが選ぶうどんの本」とかセレクトして。
 自分でもいろんなサイトを立ち上げており、その一つが「よせがきコム」、インターネット上で無料で寄せ書きができるサイトです。以前に矢野さんも送られる側を体験されたことがあると思いますが、例えば私が、会場にいらっしゃるどなたかとお友だちだとして、その方の誕生日が来ます。こっそりお友だちみんなで、インターネット上に寄せ書きを用意したいなと思うわけですね。
 よせがきコムにアクセスして「誕生日よせがき」というプレートを選んで、メッセージを入力します。それから、この寄せ書きに書き込んでほしいと思う人をどんどん入力して、最後にOKのボタンを押すと、書き込まれたアドレスの方に一斉に連絡がいって、「粟飯原さんが○○さんの誕生日に寄せ書きを企画しているので、みなさんここにアクセスして書き込んでください」みたいな案内がメールでいきます。その案内に従って、みなさんが寄せ書きを書き込んでいくサイトです。2000年に立ち上げて、2002年までの2年間で、口コミだけで18万人の方に使っていただきました。去年、楽天さんに株式譲渡をして、いまは楽天さんのサービスになっています。
 会場に日経BP社『PCビギナーズ』編集長の大塚葉さんがいらっしゃるのでびっくりしたのですが、じつは「よせがきコム」というサイトが誕生したきっかけは、大塚さんにみんなでメッセージを送りたいなと思ったときに、こんなサービスがあったらいいんじゃないかと考えついたんですね。だから、大塚さんは生みの親でもいらっしゃるんですけど。びっくりしました(笑)。
「OL美食特捜隊」はもっとミーハーなサイトです。初めて就職した会社がNTTで、同期が3000人いましたが、気のあったOLメンバー5人でおいしいお店の食べ歩きをしていまして、自腹で行って、ほんとうにおいしかったお店をメールマガジンで紹介したらおもしろいんじゃないかと、99年8月にスタートしました。
 ところが、OLが自分の目線で、自腹で行って、おいしい店をレポートするメディアがこれまでなかったということで非常に反響を呼びまして、メールマガジンの読者がいま首都圏に3万人いらっしゃいます。1年前に『東京美食パラダイス』という本になりましたが、オンライン書店のアマゾンで7日間連続で総合ベストセラー第1位になりました。
 ネット発の、聞いたこともないサイトの本が総合ベストセラーの1位になったということで、問い合わせをいっぱい受けまして、いまは『Oggi』(小学館)という女性誌で連載させていただいたり、CSテレビでレギュラー番組をさせていただいたりとかいうふうに、気がついたら、ミーハーなサイトが立派なコンテンツになってしまったというふうなサイトです。

「地に足が着いたミ−ハー」という言葉がすごく好き

 最後は「Hon-Cafe」で、去年の12月に新しく立ち上げました。これも趣味がもとで、みなさんよりちょっと年上になるかもしれませんが、20代後半から30代の働く女性向けに、その世代の等身大ナビゲーターが、インターネット上で私的本棚を公開しましょうと。自分が仕事で悩んだときに、こんな本を読んだらほんとうに役に立ったとか、彼氏とうまくいかなくなったときに、この本を読んですごく癒されたりしたというようなことを、素直な感想とともに語っていくサイトです。
 インターネット上のカフェにしたいという気持ちを込めたタイトルです。ナビゲーターが13人いらっしゃるんですけれども、その方々が自分の読んだ本を「これはフレッシュジュースな本だな」とか、「カフェオレだな」とか、「日本茶な本だな」みたいに自分たちでジャンル分けをしまして、カフェオレな本だったら、ちょっと癒し系とか、アメリカンコーヒーだったらビジネス系とか、勝手に私たちで決めて、そういうジャンル分けをしたりしています。
 メールマガジンの会員が1万人になったぐらいのところで、三省堂書店さんに「Hon-cafeリアル書店」ということで、コーナーをオープンさせていただき、サイトで選んだ本が実際に書店さんでも買えるという展開をさせていただいています。先ほどご紹介した大塚さんは、オープニングのときもスペシャルゲストで起こしいただきました。
 基本的には、仕事でもプライベートでも、ミーハーに自分の思いついたサイトをどんどん立ち上げるという形で、サイトの立ち上げとか運営、プロデュースなどをしているわけです。
 私は「地に足が着いたミーハー」という言葉がすごく好きなんですが、インターネットって、「地に足が着いたミーハー」でいようという態度で見ると、すごくおもしろいと思うんですね。ちょっと興味をもったことを検索してみると、無料でどんどん調べられる。もっと興味をもって見よう、もっと掘り下げようと思うと、どんどん深く検索していけて、こんな情報があったのとか、こんな人がいたの、みたいなものに出会えたりとか、それで自分がミーハーから始まったのに、いつの間にか「こだわりさん」になっちゃっているみたいな、そういうおもしろいところがインターネットにはあるんじゃないのかと思っています。
 それから、インターネットで発信しはじめると、自分がどんどん豊かになっていくことに気づくんですね。『OL美食特捜隊』のときに思ったんですが、食べ歩きのサイトをはじめた途端に、みんながおいしいお店を教えてくれるようになるんですよ。会う人会う人が、「あそこに行ったら」、「ここへ行ったら」、「こんなお店を知っていますか」というふうに、教えてくれるようになるんですね。発信する人が一番豊かになれるんだな、ということに気がついたりもしました。「発信しよう」と思った瞬間に自分のアンテナがすごく高くなるというか、IT時代に発信する気軽さがおもしろいところかなと思います。
 以前に「ITは車の運転と同じだ」と書いたことがありますが、私自身はこんなことを言いながら、みなさんと同じ学生時代はコンピューターに触ったこともなかったんですね。図書館で本の検索もできなくて1個ずつ棚を歩いて探しているようなアナログ人間で、NTTに入ってから必死で覚えたわけです。インターネットって、自分がやりたいことさえ見つければ、車の運転と同じですね。覚えてしまえば簡単だし、自分が難しいと思えば、運転できる人を探してくればいい。自分は「何がやりたいんだろう」みたいなことを描いてみると、すごくおもしろい世界じゃないかなと思います。(拍手)。


矢 野 ありがとうございました。「ミーハーも、地に足が着けば、こだわり屋になる」というお話でした。発信していくことでどんどん豊かになるというご指摘は、大変含蓄がありますね。次ぎは関根さん、お願いします。


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