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2017年06月24日

IT社会を照らす灯を掲げて「サイバー燈台」オープン(2017/6)

 サイバーリテラシー研究所ウエブが2017年5月、大きく生まれ変わりました。昨年、はっきりと明るみに出た社会およびメディアの激変。その中であふれる情報に私たちはどう対応すればいいのか、誰が権力監視などのジャーナリズム機能を担い得るのか―。未曽有の端境期に当ウエブもささやかな一石を投じたいと考えてのことです。新ウエブの目玉に本コラムをめぐる意見交換を据えました。

「サイバー燈台」に込めた思い

 タイトルを「サイバー燈台」としました。闇夜に沖を行く船舶に道しるべを与える岬の燈台をイメージしましたが、そこまで大げさでなくても、暗い部屋にかすかに揺れるロウソクの燈台の役割ぐらいは果たしたいものです。願いはIT社会の闇を照らす一筋の光――社会に向けたレーザー光線のような鋭い光、あるいは日常生活の中の明るく温かい灯火です。

 サイバーリテラシー研究所ウエブは15年前の2002年に開設しましたが、そのキャッチは「IT社会を生きる杖」でした。現実世界とサイバー空間の交流で、かつて経験したことのない社会を生きるための基本素養が「サイバーリテラシー」であり、ではどう生きればいいのかの指針が「情報倫理」です。

 ウエブはサイバーリテラシー普及を願い、基本的考えをまとめたり、折々に執筆した原稿をアーカイブとして収容したりしてきました。14年から15年にかけては、よりわかりやすい解説として、MOOC(インターネット上で誰もが受講できる大規模な講義)の試み「5分間の公開授業」も作成しました。

 しかし、サイバーリテラシーをより多くの人に知ってもらうためには、もう少しビジュアルを備え、読者とのインタラクティブな仕掛けを持った、より親しみやすいウエブに模様替えしないと駄目だと一念発起、このほど若い仲間にも助けられて大刷新に踏み込んだ次第です。

 トランプ米大統領誕生をめぐる2回のコラムで明らかなように、いまは社会の大転換期であり、同時にメディア激変の時期でもあります。私自身、長年新聞社に勤め、記者や編集者の仕事をしてきました。いまやマスメディアとパーソナルメディアが混然一体となった、というよりSNS主流の相互情報発信が主流の「総メディア社会」であり(『総メディア社会とジャーナリズム』参照)、そこでのメディアのあり方を模索したいとの思いもあります。

目玉は本コラムをめぐる意見交換

 サイトの概略を示すと以下のようになります。
 
 当面のメニューは、

 ①いまIT社会で――雑誌『広報』コラムをめぐる意見交換
 ②プロジェクト
 ③サイバーリテラシー教本
 ④アーカイブ

です。①が新しくオープンした「サイバーリテラシー店」の言わばショーウインドウです。気楽にのぞいて、おしゃべりもしていただければと思います。サイバーリテラシーに興味を持っていただいた方は、「サイバーリテラシー教本」を参照してください。アーカイブはこれまで折りにふれて発表した論考などを集めたもので、これまでの『広報』連載はアーカイブのトップ「サイバー閑話」に掲載しました(サイトリニューアルにあたり、しばらく埋もれていた「明治大学シンポ」も〝復活〟しました)。

 目玉の「いまIT社会で」は、本コラムのテキストとカラーイラスト、イラストをめぐる担当者との短いやりとりの後に、「楽屋話」としてMLを通してサイバーリテラシー研究所の仲間で行ったやりとりが掲載されています。とりあえず「トランプ大統領」、「ピコ太郎」、「PC‐98の思い出」の3本をアップしました。

 このコーナーは連載進行にあわせて順次追加していきますが、古いバックナンバーについても逐次掲載していく予定です。

 プロジェクトのコーナーはサイバー燈台の「専門店街」です。当初のメニューはML仲間による「サイバー絵本」、「ネットいじめ」、「映画史に見るサイバーリテラシー」(近日オープン)などですが、いずれは店数も増やしていく予定です。さらには広く有志からの〝出店〟を求めたいと考えています。もっとも、専門店街に静かに流れる通奏低音はサイバーリテラシーです。

 本コラムは今回が137回、すでに10年以上続いていることになります。長年にわたり連載の場を提供してくださった編集部には深く感謝していますが、それも読者あってのことですね。これまでは直接お声を聞くことはできませんでしたが、これからはコラムにふれ、あるいはサイバーリテラシー全般についてどんどん投稿いただければ嬉しいです。

情報環境を豊かに美しく

 みんなが情報発信できるようになった時代の情報環境(インターネット)を美しいものにする、というのも「狭義のサイバーリテラシー」です。関連するサイトにもリンクを張るなどしてネットワークを広げていきたいと思いますが、サイトとしてはオンラインマガジンとしての編集権を確保し、少なくとも第1次リンクの内容には責任を持てるようにしたいと思っています。これが本ウエブの基本姿勢です。
 
 またインターネットだからといって、何もかもスピーディにしないといけないという考えはとっていません。ラインのやりとりが典型的ですが、メールが来たらすぐ返事を書かないといけないと、現に会っている人とのコミュニケーションを犠牲にするような生き方は本末転倒ですね。
 
 IT社会を豊かで楽しいものにしていくための個別具体的な生活指針=「情報倫理」もこのウエブを通して、みんなで築き上げられれればと願っています。

投稿者: Naoaki Yano | 2017年06月24日 00:20

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