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2008年10月06日

毎日新聞英語版サイト「WaiWai」コラム事件(2008/9)

 毎日新聞英語版サイトのコラムをめぐって、ネット上で「低俗だ」、「海外に日本人を誤解させる」などと批判が起こり、ネットを通じて繰り広げられた抗議行動が当のサイトの閉鎖や毎日新聞本体の「おわび」へと発展した。ここには、マスメディアとパーソナルメディアが錯綜する「総メディア社会」が直面する大きな試練が横たわっている。

マスメディアを揺るがす「総メディア社会」

 最初に事実関係を説明しておこう(別表「関連資料」として上げた毎日新聞やウエブ上の各種記事による)。

 毎日新聞社の英語版サイト「毎日デイリーニューズ」に「WaiWai」というコラムがあり、国内の週刊誌、夕刊紙、写真週刊誌などをネタ元にして、日本人のハレンチな、あるいはセックスがらみ、奇癖まがいの話題をおもしろおかしく翻訳提供していた。2001年4月から原則として毎日掲載されていたという。

 このコラムに対しては、編集部や毎日新聞本体に国内外から「低俗である」とか「日本人を誤解させる内容である」とかいう抗議が来ていたが、無視されたままだった。しかし今年4月にブログ「毎日新聞英語版は誰にハックされているのか」に「何の根拠もない記事を垂れ流す毎日新聞はおかしい」という批判記事が出て、ほどなく2ちゃんねる掲示板や、関連記事をまとめたウエブなどで毎日新聞への抗議行動が繰り広げられる事態に発展した。

 ネット上の抗議行動(「電話突撃作戦」、略して電凸などと呼ばれる)は「毎日新聞英語版を潰すため」に多くの人びとに「この事態を2ちゃんねるやブログを通じて日本国民に広く知らせる」、「毎日新聞社、毎日新聞のスポンサーに対し、メール・電話・質問状などを通じて抗議する」、「他の新聞・雑誌に記事として取り上げてもらう」などを要請したもので、とくにスポンサーへの働きかけが大きな効果を上げたらしい。

 ジャーナリストで元毎日新聞記者の佐々木俊尚「毎日新聞社内で何が起きているか」によると、毎日のニュースサイト「毎日・jp」の広告は七月下旬から一時全面ストップしたほか、毎日に広告を出稿しているスポンサー企業や提携先、関連団体など、毎日社内の集計でも200社以上への働きかけが行われ、相当数のスポンサーが本紙への広告停止措置をとったという。

 その結果、毎日新聞は未曾有の混乱に見舞われ、6月25日朝刊本紙およびウエブにおわびを掲載、翌7月20日には「英文サイト出直します 経過を報告しおわびします」という記事を朝刊本紙およびウエブに掲載、あわせて同日紙面に2ページ見開きの特集「英文サイト問題検証」記事を掲載する事態に陥った。

「編集メディア」と「無編集」メディア

 事件を毎日新聞の側から見てみよう。マスメディアは、記事に幾重にもチェック機構が介在する「編集メディア」である。記事は掲載までにデスク段階、整理段階などで幾重にもチェックされる。だから誤報がないとは必ずしも言えないが、一応は記事の誤りや不適切な内容はチェックされて、没になったり、手を加えられたりする。そのような紙の新聞では当たり前のチェック機構が英語版サイトにはなく、記事はほとんど外国人のコラム担当者が書き、そのまま掲載されていた。

 だから検証記事では、ずさんな編集態勢や幹部の監督責任が問われ、社内的処分も行われた。しかし、ここには現下のメディア全体が置かれたもっと本質的な問題が露呈しているというべきだろう。

 マスメディアが編集メディアであれば、パーソナルメディアとしてのウエブやブログは「無編集メディア」である。記事は本人の責任で書かれ、それを信じるかどうかは、読者の自己判断に任される。もちろんウエブでは、読者からの指摘で誤りが正され、すぐ訂正されることも多いから、パーソナルメディアは「相互編集メディア」でもある。

 ここがマスメディアとパーソナルメディアの大きな違いと言えば違いなのだが、パーソナルメディア勃興の前に、マスメディアの従来の厳格な紙面づくりが内部的に緩みつつある。とくにオンライン発信ならパーソナルメディア並みの信頼度でいいだろうという甘えがあったというべきである。
 
 今年3月、ウエブでラーメン店を中傷する記事を書いたとして名誉毀損罪に問われた会社員に対して、東京地裁は「記載内容は真実とは言えないが、インターネットの個人利用者が求められる水準の調査は行っていた」として無罪を言い渡している。マスメディアとパーソナルメディアでは記事の真実性の基準は異なっていいと判断を示したわけで、これはこれで興味深いテーマだが、私が危惧するのは、マスメディアとパーソナルメディアが錯綜する「総メディア社会」で、記事の信頼性というものが、押しなべて低下している事実である。ジャーナリズム精神の衰退と言っていい(もっとも、最初のブログが「マスメディアよ、しっかりしろ」というきわめてまっとうな問題提起だったのは記憶されていい)。

ネットのもつ巨大な力

 パーソナルメディアの側から見ると、ネットのもつ巨大な力が発揮されたエポックメイキングな事件だということになる。抗議行動の結果は、「毎日新聞事件の情報集積wiki」にまとめられているが、500件はあると思われるスポンサー企業、マスコミ、官公庁などへの抗議行動とその結果が詳細に報告されている。インターネット普及期の1999年に起こった家電メーカー・アフターサービス事件は、企業相手の「たった一人の反乱」だった(1)。十年を経過して、事態は大きく変わったというべきだろう。

 そもそもの火付け役がブログであったこと、事件報道や抗議行動がウィキ(wiki)という、誰もが書きこみできるウエブを利用して展開されたこと、さらにはいくつかの顕名サイトが問題の本質を鋭く抉るすぐれた論評を展開したことも特筆されていい。

 佐々木記者は、某全国紙の社会部記者の述懐として「この事件を真正面から取り上げ、新聞社へのネットの攻撃パワーの強いことを明確にすると、刃が自分たちのところに向かってきそうで恐怖感がある」という興味深い証言も紹介している。マスメディアが置かれた最大の難問が広告収入源であるという事実は、既存メディアによってはほとんど報じられていない。

<注>
 1、家電メーカー・アフターサービス事件の詳細は、拙著『インターネット術語集』(岩波新書、2000)を参照してください。
 
【事件をめぐる関連資料】

<毎日新聞>
 ●おわび 6月25日朝刊本紙およびウエブに掲載
 ●本社英文サイト問題の経過説明します 6月28日朝刊社会面
 ●英文サイト出直します 経過を報告しおわびします 7月20日朝刊本紙1面およびウエブに掲載 
英文サイト問題検証記事 同日朝刊特集面2ページ 

<ネットの言論および抗議活動(発表日時はURL参照)>

 ●「毎日新聞英語版は誰にハックされているのか」(ブログ「Mozuの囀」)
 ●「毎日新聞の英語版サイトがひどすぎる まとめwiki
 ●「毎日新聞の英文サイトがひどすぎる」(2ちゃんねるスレッド)
 ●まとめサイト「毎日新聞事件の情報集積wiki」
 ●「毎日新聞英語版サイト『変態ニュース』を世界発信」(JCASTニュース)
 ●藤代裕之「毎日新聞『WaiWai』問題と私刑化する社会とネット時代の企業広報の視点」(ガ島通信)
 ●佐々木俊尚「毎日新聞で何が起きているか㊤㊦

投稿者: Naoaki Yano | 2008年10月06日 22:45

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コメント

安田さん、yamaさん

 コメントありがとうございます。
 元新聞記者の身としては大きいことは言えませんが、限られたメディアを持つマスメディアの人間に奢りがあったことは確かですね。悪く言えば奢り、強いてよく言えば矜持だったわけですが、みんなが情報発信するようになったときの「書く」行為の意味、というものをもう一度考え直すべきときですね。

投稿者: Naoaki Yano | 2008年10月10日 12:34

毎日新聞社主催の「毎日ファッション大賞」。
経済産業省がこのイベントを後援しているそうなので、以下の文書について情報公開請求しました。
・毎日ファッション大賞後援名義依頼決済文書 H20年度のもの。
・後援承認基準(後援審査基準)最新のもの。

 請求が認められましたのでここ(↓)に公開します。興味のある方読んで見てください。
       
http://kissho1.xii.jp/7/src/7jyou15993.pdf.html

投稿者: mashin | 2008年10月17日 02:27

Also excellent in the film are Frank D'Amico as ruthless mob boss Mark Strong and his needy son Chris D'Amico (played with a wonderful playfulness by Chris Mintz-Plasse of "McLovin" fame).

投稿者: gangbang nederland | 2011年08月20日 18:59

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