新サイバー閑話(29) 令和と「新選組」③

新聞はこれでいいのか

 消費税が10%に上がった10月1日、購読紙に「消費税軽減税率の適用にあたって」と題する3段抜きの社告が出ていた。日本新聞協会と当該紙の連名になっているから、ほとんどの新聞に同じ社告が載ったと思われる。

 新聞に軽減税率が適用され、8%に据え置かれたことを「報道・言論により民主主義を支え、国民に知識・教養を広く伝える公共財としての新聞の役割が認められたと受け止めています」と書き、「この期待に応えられるよう、責務を果たしていきます」と続けているのだが、昨今の新聞のあり方をふり返るとき、ずいぶん身勝手な見解だとシラケる人も多かったのではないだろうか。

 たとえば、以下のユーチューブの動画を見てほしい。

 東京新聞の望月衣塑子記者が官邸記者会見で萩生田光一氏が文部科学大臣になった件などを追求したときの菅義偉官房長官の記者をバカにしきった、いかにも醜い表情が映し出されているのだが、こんな記者会見を許している新聞が「公共財としての役割が認められた」とよく言えたものだと思う。

 すでに日常的な会見風景になっていると思われるが、仲間の新聞記者がこんなふうにあしらわれているのを他の記者が放任していること自体が信じがたい。ひと昔前なら、だれかが「国民の代表たる新聞記者に向かって何という態度だ」と、これもいささかどうかと思う発言ながら、とにかく為政者の横暴に抗議する、あるいはたしなめるような反骨精神が発揮されたはずである。

 そのひと声、その一突きが事態をがらりと変えると思われるが、そのひと声を発しようとせず、その一突きを繰り出す勇気がない。

 新聞よ、お前はもう死んでいる。

 もはや、そういう状況なのに、政府に公共財としての役割を認めていただきありがたい、と言わんばかりに軽減税率適用を喜んでいる(ように見える)のは、まことに恥ずかしいことではないだろうか。