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2012年04月08日

グーグルのプライバシーポリシー変更(2012/3)

 グーグルは3月から自社のプライバシーポリシーと利用規約を変更すると発表、大きな議論を巻き起こしている。その背景には、提供する多くのサービスを通じて入手する個人情報を一括把握して、ユーザーの便宜を促進すると同時に、自社のビジネスにも役立てようという思惑がある。

グーグルが示唆する風土?

 グーグルが提供するサービスの一端を見てみよう。

 まず本流の検索サービスから。検索窓にたとえば「夫」と打ち込み、その後に空白を入れると、自動的に、夫に続いて「嫌い」「彼・男友達」「呼び方」「英語」「アスペルガー」「うつ」「クリスマスプレゼント」が、次に「妻 」と入力すると、「死んだふり」「クリスマスプレゼント」「呼び方」「誕生日」「英語」「離婚」「誕生日プレゼント」「ヒステリー」などと出てくる。今年1月30日のとある時間の検索結果だが、夫、あるいは妻で検索した人が次に何を入力したかの結果が、頻度順に表示されている(グーグルサジェストと呼ばれるサービスだが、どのくらいの期間の集約かはわからない)。

 日本人の傾向というか、精神風土のようなものすらうかがわれて興味深いが、問題はグーグルの検索エンジンは、これほどのデータ収集力および編集能力を持っているということである。

 次にグーグルが2010年から提供をはじめた日本語入力ソフト(昨年暮れにはアンドロイド版スマートフォンでもベータ版がリリースされた)。この日本語変換辞書は、自分で育てるのではなく、日本語入力ソフトを使っている全ユーザーの入力履歴をすべて集約して、もっとも妥当性の高い変換候補を表示してくれる。いちいち単語登録などしなくても、グーグルが自動的に日本語辞書を育ててくれるわけである。逆から見ると、みんなで育てる辞書である。

 ここまでやっているのかと驚いた人がいるかもしれないが、これほど細やかに、しかも大規模にデータを処理する能力が、いまのIT技術にはある。グーグルはGメール、グーグルリーダー、ユーチューブ、グーグルマップ、SNSなど、提供するサービス全体でこのようなデータ収集と編集作業を日常的に行っている。

 Gメールとかユーチューブなどでグーグルアカウントを設定している人は、それだけの便益を受けると同時に、一括して個人情報を把握される可能性は高い。グーグルはそれらのデータを精緻に分析して広告ビジネスなどに利用する。

すべてのサービスを統合

 これらの個人情報の収集は、従来はサービスごとに独立して行われ、統一的には管理されていなかった。それでは、たしかにもったいないと言えなくもない。そこでグーグルは個人情報を統一的に管理することにした。これがプライバシーポリシー変更の大きな理由である。

 ウエブにあるプライバシーポリシーの説明には、「本プライバシーポリシーは、Google Inc. およびその子会社と関連会社が提供するすべての製品、サービスとウェブサイトに適用されます」、「Google アカウントのご登録手続きに際して、Google は個人情報の提供をお願いしています。Google では、アカウントに含まれる情報を Google の他のサービスまたは第三者から取得した情報と統合し、ユーザーの利便性の向上および Google のサービスの品質向上のために使用する場合があります。一部のサービスについては、情報を統合しないように選択することもできます」と書いてある(1)。

 グーグルをまったく使わないという人は少ないだろうから、一度、このポリシーは読んでおいた方がいいだろう。グーグルが言うように、これは利用者にとってより便利になることではあるが、一方で、個々のサービスが統合されると、自分の趣味趣向や財政状態、あるいは健康問題までが統一的に把握されるのではないか、そのための歯止めはどうなっているのかという心配はどうしても消えない。

 グーグルがプライバシーポリシー変更を発表した直後、米連邦議員8人がグーグルに質問状を送ったのもそのためである。グーグルはそれに答えて、①プライバシーポリシーを一つにまとめて簡略化し、わかりやすくした。②グーグルアカウントでログインすれば、ユーザー体験はよりシームレスになる、などと強調、「ユーザーは複数のアカウントを使ってサービスを使い分けられる」、「ユーザーはグーグルアカウントでログインしないで、検索、ユーチューブなどのサービスを利用できる」などと説明している。

 また欧州連合(EU)27カ国の規制当局でつくる作業部会は、2月2日付の書面で「個人情報が十分に保護されているかどうか調べる必要がある」として、新しいプライバシーポリシーの導入を見合わせるように求めた(2)。

細かくなる網の目

 個人情報を包括的に把握される危険までおかしてグーグルを使わないという選択肢もないわけではないが、実は、それはもはや不可能だと言っていい。グーグルは個人情報を自社以外の企業には流さないとも言っているが、同じような情報収集を行っているサービスには、グーグル以外にもフェイスブック、ツイッター、アマゾン、アップルのアイフォン、アイパッドなどの端末やスマートフォンを利用した多くのアプリケーションなどがあり、主としてアメリカ巨大企業によって提供されている。

 そして、多くのサイトがフェイスブックやツイッターと連携していることからも明らかなように、それらのサービスが企業の垣根を超えて統合されるのは必然でもある。サイバー空間に張り巡らされるネットワークは拡大の一途をたどり、その網の目はどんどん細かくなっている。何よりもこの事実を認識したうえで、大局的な対策を考えるべきだと思われる。

<注>
(1)http://www.google.com/intl/ja/policies/privacy/
(2)朝日新聞2012.2.6紙面

投稿者: Naoaki Yano | 2012年04月08日 22:35

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