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2011年07月18日

メインストリームに躍り出たソーシャルメディア(2011/6)

 ツイッター、フェイスブック、ユーチューブなど、私が「パーソナルメディア」と呼んできたインターネット上の電子メディアは、最近では「ソーシャルメディア」と呼ばれることが多い。その驚異的躍進は世界共通の現象で、今や「マスメディア」に代わる情報流通のメインストリームになりつつある。日本の場合は、東日本大震災を機に一段とその傾向が強まっている。

 AFP通信によれば、ユニークな活動で知られる米歌手、レディー・ガガのツイッターのフォロアー数が5月に1000万人を突破したという(1)。同ニュースによれば、フォロアー数が1000万人を突破したのは初めてで、2位はカナダ出身の歌手、ジャスティン・ビーバー(970万人)、3位がオバマ大統領(802万人)だという。

フォロアーが1000万人

 一人の人間のメッセージを世界の1000万人がほぼ同時に目にするというような事態は歴史始まって以来だろう。そのメッセージにはすぐ反応が書き込まれたり、受け手によってリツイート(再ツイート)されたりして、さらに世界に広がっていく。

 別の日の同ニュースによれば、ガガは米経済誌フォーブスの2011年度の「世界で一番影響力のあるセレブ」(2)にも選ばれている。フォーブス誌は「ガガが第一になった理由は、彼女が年間9000万ドル(約73億円)を稼いだだけではなく、フェイスブックで3200万人のファンを持ち、ツイッターのフォロアー数が1000万人に達するという驚くべき人気によるものだ」と書いている。

 現在、ツイッターの利用者は全世界で1億5000万人とも言われる。フェイスブックは実名主義のSNSとして2004年に開設されて以来、急速に世界に普及し、その会員は6億人。2010年にはフェイスブックを描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」も公開された。ガガはそのフェイスブックで3200万人のファンを持っているわけである。

 今では多くのサイトがツイッターやフェイスブックにリンクを張っているから、ツイッターやフェイスブックは巨大な情報インフラになっており、その情報インフラを使った新たなサービスを展開している人も多い。

 動画サイトとしてのユーチューブを知らない人はもはや少ないだろう。ツイッターのフォロアー数2位のジャスティン・ビーバーは1994年生まれ、17歳のポップ歌手で、ユーチューブに投稿した演奏が評判になって一躍トップスターになった。震災時においても、多くの人が地震や津波の動画を投稿したばかりでなく、専門家が福島原発をめぐる危険な状況を解説したりした。

大震災を機に躍進

 4月18日に更新された2011年3月度のニールセン調査を紹介した斉藤徹のブログによると、今回の震災を機にソーシャルメディアの活用が劇的に増加した。ミクシィ、ツイッター、フェイスブックのパソコンからのアクセスデータは、ミクシィ1321万人、ツイッター1757万人、フェイスブック766万人で、それぞれ前月比で124%、137%、127%の増加となっている。

 ケータイによるアクセスは含まれていないが、東日本大震災がソーシャルメディア躍進を促したのは間違いない(同ブログによれば、4月のニールセン調査では、3媒体とも前月比90%前後と減っているから、3月だけの特殊事情もあったようだ)。

 日本最王手のSNS、ミクシィが出たので、ゲーム中心の交流サイトにふれておくと、ミクシィ、ディー・エヌ・エー、グリーの3社の会員数は3月末で合計7557万人、前年同期比で34%増となっている(3)。ゲーム交流サイトも、大きな意味ではソーシャルメディアである。

マスメディアは退潮

 かつて新聞は戦争や大災害になると部数を伸ばすと言われた。実際、まだテレビもなかった関東大震災(1923年)では、翌年に大阪朝日新聞(現朝日新聞)が100万部を突、大新聞への飛躍を果たしている。今回の大震災ではどうだったか。日本ABC協会が発表した4月の販売部数によると(4)、読売新聞は995万部で17年ぶりに部数1000万部を割り込み、朝日新聞は770万部で前月比16万部の減少である。新聞全体では100万部減ったという。

 ここにも、マスメディアからソーシャルメディアへと大きく比重を移しつつあるメディア状況が反映されている。もっとも、これで既存マスメディアの役割が急速に減少しているかというと、そうではない。

 たとえば野村総合研究所が3月29日に発表した「震災に伴うメディアの接触動向に関する調査」(5)によると、「震災に関する情報提供で重視しているメディア・情報源」(複数回答)は、以下のようになっている。

 テレビ(NHK) 80.5(%)
 テレビ(民放) 56.9
 インターネットのポータルサイト 43.2
 新聞 36.3
 インターネットの政府・自治体情報 23.1
 インターネットの新聞社の情報 18.6
 ソーシャルメディア 18.3

 テレビが突出しており、ソーシャルメディアへの信頼度はなお低い。無責任なデマ情報に対する警戒も含まれているだろうが、安否確認やボランティア情報伝達などでソーシャルメディアが果たした役割は大きかった。その一端は前々回にも紹介したけれど、震災時に限らず、これからはツイッターやフェイスブックなどの巨大情報インフラのまわりにすべてのメディアが集まって、新しいメディア環境が成立していくだろう。

 私が『総メディア社会とジャーナリズム』(知泉書館、2009年)で描いた「総メディア社会の進展図」の二つの楕円を支えているのが、いまやツイッターとフェイスブックだということである。

<注>
(1)http://www.afpbb.com/article/entertainment/entertainment-others/2800418/
7225460。日本で最高の部数を誇る読売新聞がほぼ1000万部である。
(2)http://www.afpbb.com/article/entertainment/fashion/2801278/7235672
(3)日本経済新聞5月11日付朝刊
(4)http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/110519/ent11051901080001-n1.htm
(5)http://www.nri.co.jp/news/2011/110329.html

投稿者: Naoaki Yano | 2011年07月18日 17:38

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