第23回

おとなもいっしょに考える
先生編

さとしくん
しんごくん
まいちゃん
先生
サイバー博士
shingo
この連載の主人公
小学4年生
さとし君のおさななじみ
小学4年生
さとし君の
クラスメート
さとし君の
クラスの先生
サイバーランドから
やってくる謎の博士


ケータイについて教えるべきか
先生たちもとまどっている

 小学校にケータイを持っていく子どもたちもいま、わずかですがいるようです。でも、それはいいことでしょうか。今回は先生の立場に立って、ケータイを持つことについて考えてみましょう。

みんなで手をつないで


しんご君が
ケータイを
持ってきた


 授業が終わると、しんご君がさとし君のところへうれしそうにやってきました。手にはケータイが見えます。
「さとし、これ見てよ」
「あ、ケータイだね。新しいの買ったんだ」
「へへ。また買ってもらっちゃった」
「だけど、学校にケータイ持ってきていいの」
「だいじょうぶさ」
「先生に見つかったらおこられるよ」
「あ、ケータイだ!」
 しんご君のまわりにはクラスメートも集まってきて、大さわぎです。

先生に
見つかって
おこられた!


 授業がはじまるチャイムがなっても、さとし君たちはしんご君のケータイで遊んでいます。
「ほら、席について」と先生がやってきました。 
「やばい、先生だ。ケータイかくして!」
「こら、いま何かかくしただろう。出しなさい」
 しんご君のケータイが先生に見つかってしまいました。
「学校には勉強に関係ないものは持ってきてはいけないはずだろう。なんでケータイなんか持ってきたんだい」
 しんご君もみんなもシーンとして何もいえません。
「先生は、みんなのような小学生がケータイを持つ必要はないと思う。それにこの小学校はみんなの家から近いのだから、ケータイは持ってこない約束だったろう。とりあえず、これは先生があずかっておいて、かえるときに返すからな」
「えっ、そんなぁ…。だって、お母さんが持っていけっていったんだよ」としんご君は小さな声でいいました。
「そうか。お母さんやお父さんにも話さなきゃならんな。そもそも、ケータイについては学校で教えることではないと思うんだがなぁ…」
 しんご君はいまにも泣きそうです。

学校と家庭がいっしょになって考えることが必要

「やっぱり先生におこられちゃったよ」
 小学校はみんなで勉強をする場所だからの。もし、授業中に電話がかかってきたり、メールがとどいたら、勉強ができなくなってしまうじゃろ。しんご君もみんなにケータイを見せびらかすことなどをしてはいけなかったの。
「でも、ケータイを取り上げなくてもいいのになぁ」
 さとし君の学校にはケータイを持ってきてはいけないという決まりごとがあったのだから、仕方がないの。
「先生もお父さんみたいにケータイは必要ないっていってたね」
 そうじゃね。先生もみんなのことを心配しているんじゃ。ケータイで悪い人に呼び出されはしないか、変なメールがこないだろうかってね。やはり先生からすれば、よけいなものを学校に持ってきてほしくないじゃろうね。しかし、さとし君の先生にも、ちょっと考えてほしいことがあるのう。
「どういうこと?」
 さっき先生は「ケータイは学校で教えることではない」といったじゃろう?たしかに、さとし君がケータイを持つかどうかは家庭で決めることだね。でも、さとし君のお父さんやお母さんでさえケータイについて、いろいろな考えを持っていたじゃろ。
「お父さんはダメっていっていたけど、お母さんはそうでもなかった」
 そうだったね。友だちのお父さんやお母さんたちも、また別な考えを持っているわけじゃ。もちろん先生たちにもいろいろな考えがある。だから、先生も学校で教える必要はないというのではなくて、親御さんや、そしてさとし君たちといっしょに小学生がケータイを持つことをいろいろと話してみることがだいじじゃ。
 サイバーランドでは、小学校から「サイバーリテラシー」の授業があってのう、みんなでコンピュータやケータイをどういうふうに使ったらよいのか話しあっておるのじゃ。
「そうか。サイバーリテラシーのこと先生にいってみるよ」

大切なのは人の心

 千葉県柏市立旭東小学校の佐和伸明先生のクラス(6年生)では、金沢大学の中川一史先生などといっしょに「携帯活用プロジェクト」を行っている。
 授業では、「便利なの?危ないの?携帯電話について考えよう!」というテーマで、ケータイを持つことのいい点や悪い点を考えたり、じっさいにケータイを使って調べものや交流学習をしているそうだ。
 佐和先生も、小学生同士の生活にはケータイは必要ないと考えている。でも、いずれみんながケータイを持つようになったとき、何も知らないよりも、ちゃんとケータイのことを理解して、安全にかしこく使えるようになってほしいと思っているんだ。

 また、ケータイといっても、やはり「人と人との間のコミュニケーション」であること、「ケータイの向こうには人がいる」ということを理解して、やさしさと思いやりを身につけてほしいとおっしゃっていました。
 ケータイを持つ前にいろいろと学んで準備をしても、使ってからはじめてわかることもある。まだ早いといって何も教えないのではなく、みんなでいっしょに話し合ってみてはどうでしょうか。
(M)

新聞掲載:2004年3月10日