第8回

さとしくん
まいちゃん
まいちゃんの
お母さん
しんごくん
サイバー博士
shingo
この連載の主人公
小学4年生
さとし君の
クラスメート
まいちゃんの
お母さん
さとし君のおさななじみ
小学4年生
サイバーランドから
やってくる謎の博士


「自分のいまいる場所が
わかってしまうのはなぜですか」

 ケータイからは基地局にむかって電波が出ていることはいぜんお話ししました。このしくみをつかえば、いま自分がどこにいるのか知ることができます。これを「位置情報サービス」といいます。どうしてそんなことができるのでしょう?

衛星と基地局の両面作戦


暗くなったら
電話で
帰るコール


 さとし君はともだちのしんごくんの家で遊んでいましたが、暗くなってきたのでそろそろ帰ることにしました。
「あっ、もうこんな時間だ。ちょっと電話かりてもいい? お母さんにれんらくしておかないと、またおこられちゃう」
「さとしはまだケータイもってなかったっけ?」
「うん。でもケータイって、迷惑メールとかけっこうこわいんだよ。知ってた?博士もいっていたけど」
「博士???」
「あー、なんでもない。また明日ね。おじゃましました」
 あわてて家をとび出すと、まいちゃんがむこうからやってきました。
「あっ、まいちゃんだ。塾のかえりかな?」

まいちゃんの
お母さんが
とつぜんやってきた


「あれ、さとし君。こんなところでどうしたの?」
「ともだちの家で遊んでたんだ。まいちゃんは塾の帰りなの?」
「うん。ほんとはお母さんがむかえに来るはずなんだけど、電話しても出ないから自分で帰ってきちゃった」
「でも、まいちゃんのお母さん心配してるかもね」
「じゃあさとし君、とちゅうまでいっしょに帰ろうよ」
 さとし君はすこしきんちょうしながら、まいちゃんといっしょに帰ることにしました。
 しばらくすると、まいちゃんのお母さんがとつぜんやってきました。
「あら、さとし君、こんばんは。まい、ここにいたのね。れんらくがないからお母さん、心配してきちゃったわ」
「お母さん、よくここがわかったわね」
「GPSで、位置をかくにんしたのよ」
「まいちゃん、GPSってなに?」
「ケータイでいまいる場所がわかるのよ」
「えー、ケータイでそんなことができるの!?」

衛星が宇宙からみんなの位置をみはっている

 ケータイで自分の場所がわかるのにはおどろいたようじゃの。
「うん。ケータイについてだんだんわかってきたつもりだったけれど、おどろいたなぁ。いったいどうなっているの?」
 まいちゃんの家では、位置情報サービスをつかっているんじゃよ。このまえ話したように、ケータイは基地局に電波をいつも出していて、「わたしはいまここにいますよ」と基地局にしらせているのじゃ。このしくみを利用すれば、ケータイをもっている人がいまどこにいるかをだいたい知ることができるんじゃ。
「でも、よくまいちゃんのいる場所がちゃんとわかったね。博士はさっきだいたいっていっていたじゃない?」
 まいちゃんのお母さんがGPSという言葉をつかっていたのはおぼえているじゃろ。そこにひみつがあるのじゃ。基地局だけでは町のこのあたりにいるくらいしかわからんのじゃが、宇宙を飛んでいる衛星からだと、ケータイがどこにいるかをもっとせいかくに知ることができるんじゃ。だから有料のGPSサービスをつかうと、基地局とGPSの両方でさとし君たちのいる場所がわかるんじゃね。
「わー、宇宙からなんてすごいね! でも、いつも衛星からみられているみたいでいやだなぁ」
 そのとおりじゃね。いつもだれかにみられているというのは気持ちのよくないものじゃ。でも、しられたくないとおもったら、ケータイでそのように設定すればいいのじゃ。でも、こどもがやたらとそんなことをしてはいかんぞ。
「うん。でも、しくみはわかったけれど、どんなふうにつかわれているのかよくわからないや」
 たとえば、ちほう症のお年よりや、さとし君たち小学生にGPSがついたケータイをもたせれば、ゆくえ不明や迷子になっても安心じゃ。ケータイのもちぬしが、いまどこにいるか、お母さんたちはパソコンでわかるし、行きたいところへどういったらいいかおしえてくれるか、メールで自分のいる場所を伝えることもできるぞ。じゃが、こうしたサービスをつかわなくてすむように、暗くなったら家に電話したり、ひとりで帰ったりしないことが大切じゃね。
「そうだね。みきねぇにもおしえてあげようっと」

GPSケータイのしくみ

 GPSとは「全地球測位システム」のことで、もともとはアメリカが兵士や兵器の位置を知るために軍事目的でつくった衛星なんだ。
 上空2万キロメートルを24機の衛星が飛んでいるそうだよ。このうち4つの衛星から電波をうけとる機能をもったケータイを「GPSケータイ」といって、500万台以上が利用されている。
 ケータイは基地局に向かって電波を出しているので、それだけでもだいたいの場所はわかる。普通の携帯電話で位置を知るには約300メートル、PHSでは約100メートルの範囲内でわかる。
 そのため、PHSを持っている人が今どこにいるのか、ファクスやパソコンを使ったインターネットなどで通知するサービスもある。
 これに比べてGPSケータイでは衛星を使っているので、さらに正確な場所を知ることができるんだ。その誤差はなんと5〜50メートルという正確さだ。
 本当は数センチの正確さで位置を知ることができるのだけれど、アメリカが敵に軍事目的でつかわれるのをふせぐために、わざとノイズを入れているそうだよ。
 なにげなくつかっているケータイにも、こんな背景があるなんておもしろいね。
(M)

新聞掲載:2003年7月23日