新サイバー閑話(84)<折々メール閑話>㉜

米誌タイムの「慧眼」とれいわ新選組の「本気

A 岸田文雄首相は5月19日から地元広島で開かれるG7サミットに意欲満々なようですが、米誌タイムの5月22・29日号がその岸田首相を表紙に取り上げ、「日本の選択」というキャッチのもとに「岸田首相は数十年にわたる平和主義を放棄し、日本を真の軍事大国にしたいと望んでいる。Prime Minister  Fumiko Kishida wants to abandon decades of pacifism ‐and make his country a true military power」と紹介しました。
 記事は、「世界第3位の経済大国を、それに見合うだけの軍事的影響力のある大国に戻そうとしている」としつつ、日本の防衛力の増強が地域の安全保障状況を悪化させかねないとか、「核兵器のない世界」を目指すとする岸田氏の理念と相いれないのでは、などの意見も紹介しています。
 この記事がオンライン版で紹介されると、政府は「記事内容と見出しに乖離がある」などと反発、オンライン版は「平和主義だった日本に、国際舞台でより積極的な役割を与えようとしている。Prime minister Fumio Kishida is giving a once  pacifist Japan a more assertive role on the global stage」と変更されました。タイム本誌の表紙タイトルは変えようがないと思いますが‣‣‣。

B 日本の最近の動向をすなおに見ると「慧眼」と言うか、当然、そのように受け取られるタイトルだったと思いますね。それに政府が反発し、メディアも政府が見出しに異議を伝えた部分を強調して記事にしています。「退却」を「転進」と言い換えた戦前の発想を思い出させられるし、メディアの追随はまさに大政翼賛的でもあります。

A 「赤旗」はきちんと報道していましたね。大政翼賛的と言えば、国会がまさにそうですね。日本の針路を平和主義から軍事大国へ大きく変えようとする問題法案が次々衆院を通過、これから参院で審議入りします。健康保険法改正案は5月12日の参院で通過、すでに成立しました。防衛財源確保法案は現在、衆院財務金融委員会で審議中で、日本共産党と立憲民主党が委員長解任動議を出して抵抗していますが、いずれ委員会を通過、衆議院も通過すると見られています。
 こんな型通りの抵抗ではどうしようもないと思っていた矢先、れいわ新選組の大石あき子議員が、衆院本会議場でその野党の態度に異議を唱えました。「大量の売国棄民法案を廃案にするためにもっと本気で戦う野党の復活を」(写真)と訴えたわけです。
 れいわ新選組は同日、<「闘わない野党」への檄(げき)– 財務金融委員長解任決議案の否決を受けて>とする声明を発表、山田太郎代表と大石あき子共同代表が記者会見もしました。

・「ちょっとは闘いました」アピールの野党ではダメ

 れいわも委員長解任動議には賛成したようですが、こんな形式的な反対では法案を廃案に追い込めるとは思えない、もっと本気の抵抗が必要だという強い決意が表明されたわけですね。
 声明のさわりを採録しておきます。

 ・委員会や本会議で反対を延べる一般的な手法では、どうやっても(法案を)止められない。与党や太鼓持ちの衛星政党まで合わせれば圧倒的多数となるため、入り口に立ってしまえば(委員会の法案審査などが始まれば)、出口(委員会・本会議での採決)が見えることになる。会期延長まで視野に入れれば、全て法案は成立してしまう。
 ・現在の与野党のパワーバランスでは、正攻法では太刀打ちできない。選挙で勝って議席を増やし、与野党の議席を拮抗させてあらがえるようになるまでは、どれだけ酷い法律が作られても仕方がない、とあきらめるのか。私たちは、そのような政治家のメンタリティや永田町仕草が、日本をここまで破壊に導いたと考える。「ちょっとは闘いました」アピールの野党では、悪法の増産は止められない。話にならない。
 ・数が足りないなら身体をはって徹底的にあらがい、法案の審議入りを遅らせる。採決を阻止するための戦術を重層的に展開し、国会を不正常化させてでも、悪法の中身をメディアが世間に説明をしなければならない状態を作り出し、法案の廃案を国会の外の世論に対してうったえる。そんな、野党のゲリラ戦法が必要だ。
・1人であらがってバカだ、意味がない、と思う人もいるだろう。私たちも人の子。できればこのような行動は、やりたくないのが本音だ。けれども、与野党茶番の中、粛々と破滅に向かう状況で、最後まであきらめずにあらがう議員がたった1人でも存在することが重要であり、それが人々から託された議員の使命でもある。
・現在、日本の壊国に全力で取り組む政権のねらいを国民に提供するメディアは数少ない。一方、現在の日本が邁進する姿をシンプルに伝えているのが、海外のメディアである。

B 必死で戦おうとしているれいわには大きな拍手を送りたいし、我々としてもその危機感を共有すべきだと思います。問題法案とその審議状況を同声明から引用して表にすると以下の通りです。

A 声明の最後は悲壮感が漂っていますね。<今からでも遅くない。「闘う野党」の再生を私たちは国会の内外に向けてうったえる。れいわ新選組は、仮にそのような決意を野党第一党が新たにするのであれば、その戦線の一角に喜んで参加し、自公政権(そして維新、国民民主党)などの主導する大政翼賛会化を食い止めるために闘う>。

B それにしても現在、野党第一党の立憲民主党は何とかならないですかねえ。統一選挙で惨敗し、いま衆院を解散されて選挙になれば、日本維新の会が躍進、立憲は野党第一党の座から滑り落ちるのは火を見るよりも明らかですが、泉健太代表は何の対策も講じず、「次期衆院選で議席が150議席を割ったら辞任する」などと言っています。次期衆院選後の辞任は決まったとは言うものの、問題は今何をするかで、今こそ辞任すべき時だと思いますね。

A ユーチューブの動画「一月万冊」で佐藤章さんが岸田政権への舌鋒鋭い批判をしていますが、何よりもキツイと思ったのは、「国民が選挙で自民党を選んでいる結果なのだからしようがない」というコメントでした。

・今の政治家から消えた「ハマのドン」の男気

B 話は変わりますが、横浜の映画館、ジャック/ベティで『ハマのドン』と『妖怪の孫』を同時に見てきました。

A 2本同時に鑑賞できるとは羨ましい。文化の地域格差ですね~。「妖怪の孫」は6月20日に伊勢の新冨座でやっと観ることが出来ますが、「ハマのドン」は大阪まで出かけないと観られません。東海地区での上映館は皆無ですよ。

B なるほど。羨ましがらせるわけでは、もちろんあるが(^o^)、ちょっと紹介しましょう。『ハマのドン』は横浜へのカジノ誘致に反対して市民とも連携、最終的に本懐を遂げた横浜港湾界のボス、「ハマのドン」藤木幸夫さん(91)のドキュメントです。
 保守政界のドンでもあり、古くからの自民党員、菅義偉首相の育ての親的な存在でもあったようですが、港湾の仲間たちをカジノの犠牲にしてはいけないと反対運動に立ち上がり、推進を強行しようとした菅首相とも全面対決、2022年の横浜市長選で市民運動家たちが擁立した山中竹春横浜市大医学部教授の圧倒的勝利でついにカジノ誘致を中止させました。
 古き良き保守政治家の典型のような人で、人間的にも魅力に富み、しかも「亡き父や港湾の仲間が私にカジノ反対を叫ばせているのではないかと思うときがある」、「人生の引き際をきれいにしたいという思いもあった。これで世を去った先輩たちに顔向けができる」などと語る藤木さんの言葉は多くの人の心を打つでしょう。
 監督はテレビ朝日の報道ステーション・プロデューサーだった松原文枝さん。藤木さんの男気に共鳴してアメリカ在住のカジノ設計家、村尾武洋さんが助太刀として来浜するなど、ドラマチックな展開も描かれています。藤木さんという存在がなければ、時の最高権力、菅首相が保守候補としてカジノ反対を封印してまで押した小此木八郎候補を破ることはできなかったでしょう。同時にこの記録は、立派なリーダーを持てば市民の力を結集して時の政権に対抗、政策を覆せることができるという実例でもありますね。藤木さんは貴君にとっては早稲田の先輩ですよ。
 藤木さんは「戦前と同じような自由にものを言えない世になっている」と述べていましたが、勝利後に自民党の古い仲間から「あなたが最後は妥協してカジノ賛成に回ってくれると思っていたんだが、最後まで態度を変えないんで困ったよ。菅さんに顔向けできない」などと言われて、にこやかに笑いつつ、「今の自民党は悪すぎる」と言っていました。終焉後、観客から自然に拍手が起こったのも印象的でした。

・安倍元首相の存在のあまりの軽さ

 『妖怪の孫』は岸信介元首相の孫、安倍晋三元首相のやはりドキュメントですが、藤木さんのどっしりした存在感に比べると、安倍元首相のいかに薄っぺらなことか。彼はアベノミクスに対して、「やってる感だけだせればいいんだ」と、もはや驚くこともないけれど、これが首相の言かと思うようなことを平気で言っていました。
 番組に協力している古賀茂明さんの司会で霞が関の若手官僚が覆面インタビューに応じており、「今の霞が関は官邸に完全に支配されている」、「入省するまでに勉強した法律の知識と180度違うことが進められているので戸惑ってしまう」などと言い、メディアに関しての古賀さんの質問に、「かつてはネタを提供して記事にしてもらうということもあったが、いまはネタを提供して、たとえ記者が書こうとしても上から潰される」、「記者の方と話した内容が上司に筒抜けになったりするので、マスコミは怖くて話もできない」と語っているのは衝撃的でした。ナレーションに「野党とメディアの機能不全」という言葉がありましたが、まったく日本の重苦しい現状を告発する映画でした。

 A 映画の観客から拍手が起こるのは昨今、あまりないことでは? 健さんが全盛期には観客からかけ声が飛びましたけど(^o^)。それだけ岸、安倍、岸田現政権に対するマグマが溜まっているのかも。
 藤木さんには以前からその男気、人間的魅力に大変惹かれていました。まさに早稲田的ですね! 日本凋落の元凶、アベと比較するも愚かですよね~。タイプはちょっと違いますが、山本太郎にはその素質が充分にあると思いますね。
 松原文枝さんもテレ朝で冷遇されていても全然めげずにこういう作品を製作する。男勝りですね~。それにしても古賀さんのインタビューに答える霞が関官僚の言葉には慄然とします。志を持った、反骨の官僚はいないものですかね。平野貞夫さんの「3ジジ放談」での言葉、「政治家も悪いが官僚も悪い」を思い出しました。

 残念ながら、多くのマスコミもね。三すくみの中で頑張っているのはれいわだけです。多くの人びとがれいわの危機感を自らのものとして、ともに戦ってくれるのを期待したいです。

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