新サイバー閑話(48)<折々メール閑話>①

古典落語でござる

A 冒頭から嘆き節になりますが、日本人の劣化はここまで来たかと脱力しました。自民党議員が「ウクライナが日本に感謝していないのはけしからん」とツイッターした話です。みっともないの一言。これに対して、落語の「文七元結」を聞け!というきわめてもっともなツィートがあったのは救いでした。

 実はもう一つ、日本人の劣化を象徴する記事を先日の新聞で見つけました。どこかの地方自治体の担当者が困窮家庭向け支援金10万円、総額四千数百万をあやまってある個人の口座に振り込んでしまったのですが、その人はなんと変換を拒否していると。そもそも自治体職員の怠慢というか、無神経さに呆れるしかないのですが、この人にも志ん朝の「文七元結」を聞け!と言いたい。

 日本人は古典落語を聞かなくなってから、間違いなく馬鹿になりましたね。先程、改めて聞きましたが、ここにこそ、原日本人がいると思いました。

B この誤振込事件を聞いたとき思い出したのは、銀座で1億円だかの入った紙袋を拾って警察に届け、持ち主が半年たっても現れずに、そっくりもらえることになったタクシー運転手の話です。

 持ち主が現れた場合でも、慣行(どういう根拠かわからないけれど)によりその1割、1000万円はもらえるわけで、大金ではそうはいかないかもしれないが、とにかく、これは届けるに越したことはないわけですね。

 自分の通帳にたまたま1億円があやまって振り込まれたらどうするか、これを正直に申告した場合、送信した人は1割をくれるかどうか、ここは微妙ですね。そんなもの返すのが当たり前だと、左官の長兵衛さんなら言うだろうけれど、いまの役所の人が正直者の長兵衛さんにいたく感動して、「少ないですが、1割の謝礼を受け取ってください」、「べらぼうめ、国の大事なおかねじゃねえか、こちとら江戸っ子だい、そんなものを受け取ったら、近所の連中になんて言われるかわかっちゃもんじゃない」、「そう遠慮されても困ります。もともと私のお金でもないんで」、「じゃあ、家族会議をして‣‣‣、受け取ってもだれにも言わないでくださいよ。あっしが国のお金をくすねたなんて言われると、こまるんでねえ」‣‣‣、四千数百万円なら1割で四百数十万円だが、それを払うと役所が言えるようにも思えないし、まず何よりも、そういう素朴な道徳を失わせてしまう社会状況というのがあるのも確かですねえ。

 以前、白井聡が何かの本で「いまの若者は寅さんがおもしろいということがわからなくなっている」と書いているのを2人で話題にしたことがあったけれど、江戸っ子の啖呵の世界が懐かしいですね。ちなみに僕も「文七元結」は志ん朝ものを聞いているけれど、何度聞いても面白い。これを歌舞伎にした舞台を見たことがあるけれど、案外つまらないのでびっくりしたことがありました。

 おあとがよろしいようで。

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