『禁断の惑星』(1956年 米)

多くの人がサンドイッチを食べる前にその写真を撮ってネットにアップする時代になり、強烈なナルシシズムを持つことが異常とは言い切れないようになった。メディアを通して自我を拡大できるようになった社会において、ナルシシズムはむしろ、自分はつまらない存在だという感覚から逃れるための当たり前の要素なのかもしれない。(マイケル・ダントニオ : 『熱狂の王 ドナルド・トランプ』)

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 ども。「自分はつまらない存在だという感覚」から逃げられないkikです。サンドイッチの写真をアップしても、誰も見てくれません。ふん。

 さて、ネット上の「リア充自慢」(自我)が更に拡大していくと、人間や社会はどうなるんでしょうね。

 まあ、ふつーに考えると、「こうなりたい(こう見られたい)私」と、「現実の私」とのギャップが大きくなってくるんですかね。今でも、SNSの写真用に、友だちや恋人を代行するサービスがあるとか。…なんか哀しくなるサービスですが。 拡大するのは自我(エゴ)というより、厳密には欲動(イド)なのかもしれませんね。

 なんにせよ、現代のテクノロジーは、イドもエゴも拡大する「手段」を、日々作り続けています。そして、拡大された自我が、更にテクノロジーを進化させるという高速循環。

 それらのテクノロジーは、すごく便利なんですが、一方、人間の能力や自我(イド)を無制限に拡大し続けちゃって、本当に大丈夫なのかなあ、という不安もよぎります。

 だって、映画の中では、自我の拡大をコントロールできず、滅んじゃった種族が存在しますからね。惑星第4アルテアのクレール族がそうでした。

 クレール人は、潜在意識(欲望)を自由に具現化するという画期的テクノロジーを開発したものの、それを制御できずに怪物を生み出し、互いに殺し合って滅亡しました。

 その後、アルテアに移住した地球人も、モービアス博士とその娘以外は、謎の怪物に襲われ殺されてしまいます。映画史上最も愛されるロボット、ロビー(後に『スター・ウォーズ』でR2-D2-のモデルとなったことでも有名)ですら、その怪物には太刀打ちできませんでした。

 サイバーリテラシー三原則の一は「サイバー空間には制約がない」ですが、それは(概念的な)空間だけとは限りません。サイバー空間を構成する高度なテクノロジーは、人の欲求を、制約なく実現していきます。

 人類の果てしない欲望を実現し続けていくと、地球には、どんな怪物が生み出されるのでしょう。

 地球人の未来は分かりませんが、クレール人は滅亡しました。そして本作の最後、惑星第4アルテアそのものも、自爆しちゃいます。

監督 フレッド・マクラウド・ウィルコックス
出演 ウォルター・ピジョン レスリー・ニールセン 他

熱狂の王 ドナルド・トランプ

“『禁断の惑星』(1956年 米)” への2件の返信

  1. kkkkkkkkkkkkeeeiiiii

    この記事で何が一番驚いたかっていうと、レスリー・ニールセンが真面目な役やってるってことでした。
    私の中では、レスリー・ニールセン=コメディの人だったので、ちょっとしたカルチャーショックです。

    ロビーも、色々派生パロディからは知っていましたが、元ネタはここにあったんですね。
    で、長年疑問に思ってたこと聞いていいですか?

    ロビーの目はどれ?

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  2. Kik 投稿者

    生物じゃないので、「目」はありませんw
    センサーはあちこちについてますが。

    返信

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